――現在、ADHDなど発達障害の治療では薬物療法が行われることも。ただ、当然、そこで使われる薬には、長所もあれば短所もある。
■リタリンと同じ成分だが……
【1】コンサータ
ヤンセンファーマが製造・販売。一般名はメチルフェニデート徐放剤。ADHDの不注意や多動を抑える精神刺激薬で、脳内の神経伝達物質の濃度を上げる。即効性があり、毎朝1回服用すれば夕方・夜間まで効果が続くため、児童には学校生活の妨げになりにくい。ただ、不眠の副作用がある。かつて依存者を出したリタリンと同じ成分だが、臨床的な投与量では依存や乱用はほぼ見られない。
■依存のリスクはほぼナシ
【2】ストラテラ
日本イーライリリーが製造・販売。一般名はアトモキセチン。ADHDの治療薬で、不注意と多動、衝動性の抑制に有効。脳内のノルアドレナリン濃度を上げるが、ドーパミン系にも影響する。作用時間が約24時間と長く、依存や乱用のリスクがほぼない。ただ、効果発現まで時間がかかる。また、初期に吐き気など消化器系の副作用が出る場合があるため、時間をかけて増量する必要アリ。
■少量の投与で有効
【3】リスパダール
ヤンセンファーマが製造・販売。一般名はリスペリドン。主に統合失調症治療に使われる抗精神病薬だが、知的障害を伴う自閉症スペクトラム障害の人の攻撃性、自傷行為、激しいこだわり、チック症の治療に用いられることも多い。神経伝達物質の受容体に作用する。従来型抗精神病薬の重大な副作用である震えや筋肉の固縮などは生じにくい。少量投与で有効で、症状が改善すれば中止も可。
■急な服用中止は危険
【4】SSRI
選択的セロトニン再取り込み阻害薬の略称。抗不安作用や抗うつ作用があり、比較的安全性が高い。日本ではフルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、エスシタロプラムが販売。自閉症スペクトラム障害のこだわりの症状のほか、二次的な症状である不安や抑うつにも使用。飲み始めに強い副作用、急な服薬中止で体調悪化を招くことがあるため、投与開始時期や減量時には特に留意が必要。
参考:岩波明著『大人のADHD』(ちくま新書)、古荘純一著『発達障害とはなにか』(朝日新聞出版)