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哲学者・萱野稔人の"超"哲学入門 第22回

法の名のもとで強制力を発揮する国家は資本主義にとってなくてはならないものである

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(写真/永峰拓也)

『千のプラトー  資本主義と分裂症』

ジル・ドゥルーズ、フェリックス・ガタリ(宇野邦一、豊崎光一ほか訳)/河出書房新社/7500円+税
フランスの哲学者ジル・ドゥルーズと、精神分析家フェリックス・ガタリが、複雑に入り組んだ高度資本主義社会における人類の営みを新たなコンセプトで読み解く、フランスのポストモダン思想を代表する大著。

『千のプラトー 資本主義と分裂症』より引用
だから資本主義とともに国家が廃絶されるわけではなく、国家は形態を買え、新しい意味を担うようになる。
それは国家を超える世界的公理系の実現モデルにほかならない。だが超えるとは、国家なしですませるという意味では決してない。

 前回から引き続き、今回もドゥルーズとガタリの議論を援用しながら国家と資本主義の関係について考えていきましょう。

 まず、あらためて確認しておきたいのは、引用文にある「資本主義とともに国家が廃絶されるわけではない」という点です。ドゥルーズとガタリは、国家と資本主義は対立するという考えを明確に否定します。たとえ資本主義がグローバリゼーションなどによって国家を超えて発展していくようにみえたとしても、それは資本主義が「国家なしですませるという意味では決してない」。資本主義と国家は密接に結びついており、資本主義はどこまでいっても国家を必要とする、ということです。

 なぜでしょうか。引用文では、「世界公理系の実現モデル」を国家が担うからだと述べられています。「世界公理系」というのは前回説明したとおり資本主義のことですね。その資本主義が現実になりたつときのモデル(実現モデル)を国家は担っている。だからこそ資本主義にとって国家はどこまでいっても必要不可欠なものである、ということです。

 では、国家が資本主義の「実現モデル」である、とはどういうことでしょうか。

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