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第1特集
やっぱり韓国人は日本が嫌い!?【1】

安重根が安倍晋三を暗殺する歴史フィクションが大ウケ!? 韓国で読まれている“反日”本の中身を検証する!

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――日本に反韓、反中国本があふれているように、韓国にだって反日の本があふれている!? 伊藤博文を暗殺した安重根が現代によみがえって安倍晋三を射殺する!?日本が太平洋に沈んで跡形もなくなる!? 知られざる、韓国国内で読まれている“反日”本を、彼の地の出版事情と共にお届けいたします!

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『日本はない』の邦訳版である『悲しい日本人』。1994年にたま出版より発売され、翌年、翌々年には続編も発売されている。

 韓国で出版されている「“反日”本」の実態に触れる前に、まず韓国出版業界の現状を俯瞰したい。結論からまず書くのであれば、韓国の出版業界もまた、世界各国の趨勢に漏れず不況に襲われている。

 韓国出版文化協会が毎年公表している資料によると、1998年に約1億9000万部あった総発行部数は、14年には約9416万部まで激減。98年の半数を割り込んだ。初版の平均発行部数も右肩下がりで、05年の5550冊から、14年には1979冊まで落ち込んでいる。

 それだけではない。95年に5449店舗あった書店は、13年の統計では1625店舗まで減少。教保文庫(日本の紀伊國屋書店などに相当)など大型テナントに居を構える有名チェーン店は残る一方で、街の小規模な書店は徐々に姿を消し始めている。この書店の店舗減少については、日本と似たような状況にあるといえるのではないだろうか。当然、各出版社が商品を卸す書店の数も年々減少している。10年にはひとつの出版社あたり平均32・5店舗だったのが、14年には21・5店舗となった。

「韓国の出版業界に大きな打撃を与えたのは、98年のアジア通貨危機(IMF危機)と08年のリーマンショック。特に98年のIMF危機の際には、廃業に追い込まれる中小出版社が多かった。加えて韓国では、IMF危機以降にIT革命が起き、急速にデジタル化、オンライン化が進みました。そのような背景から、紙の出版文化や書店を取り巻く環境が一気に悪化しました」(韓国某出版社・社長)

 興味深いデータをもうひとつ。

 韓国出版産業実態調査などの資料によると、12年の段階で、韓国全出版社4万2157社のうち94%に当たる3万9620社の出版社が、1年に1冊の書籍も出版していないという実態が報告されている。もともと、韓国の出版社は登録制で認可も比較的容易に下りるそうなのだが、株式会社として登録されているのはそのうちの15%ほど。残りのすべては個人事業の範疇にあり、資金繰りに苦しんでいる状況にあるという。ちなみに14年の統計では、国の図書館に新刊を納品した2895社のうち、年間5冊以下しか発刊していない出版社は約51%を占めた。

 そんな、不況真っただなかにある韓国出版業界には、“売れ線=金脈”として重宝されているジャンルがある。その最たるもののひとつが、日本作品とその翻訳本である。

「韓国市場では日本作品がよく売れる。マンガが多いですが、小説や自己啓発本も人気。毎年、年間売上ランキングには必ずといっていいほど日本の作品がランクインしている。大型書店に行くと、日本作品の原書や翻訳本が置かれている広い専門スペースがあるほどです」(同前)

 14年度に韓国語に翻訳出版された日本作品の数は3725点。これは、米国の作品3031点を超えて堂々の1位である。同年の新刊数が約4万7500点なので、韓国に流通している新刊のうち、約13冊に1冊が日本作品ということになる。大韓出版文化協会の関係者によると「マンガまで含めると、約18%が日本の本」になるそうだ。

 ちなみに、05年から15年2月の10年間で、韓国でもっとも売れた作家は村上春樹だった。これは韓国人や他国の作家を合わせてナンバーワンという意味である。村上作品は、10年間で推定350万冊以上売れたとの試算がある。ちなみに4位は、東野圭吾だ。

「村上春樹の新刊本の版権は法外な金額で取引されています。『1Q84』は韓国でもベストセラーになりましたが、その後の作品には1億円ほどの値がついた。ただ、最新の短編集はまったく売れず、そこそこ伝統のある出版社の経営が、春樹作品ひとつの不発で傾いたとも聞いています。大幅な赤字が問題というよりも、日本作品に頼りっぱなしの状況を象徴した出来事だっただけに、韓国出版業界関係者にとっては非常に衝撃的でした」(韓国新聞社記者)

反日本で吹き出した韓国人のルサンチマン

 そんな日本作品とその翻訳本に並び、韓国の書店でよく見かけるジャンルの本がある。韓国人が書いた日本関連本である。歴史、文化、政治、経済、語学、観光名所などの側面から日本を解説した読み物だ。いわゆる「反日本」も、この日本関連本のひとつのジャンルに属する。

 残念なことに、その日本関連本に特化した詳細な統計は韓国にはない。そのため、韓国出版関係者の証言をもとに、日本関連本と「反日本」の実態に迫ってみることにしたい。

「現在、外国を扱ったものの中では相対的に中国関連本が増えています」

 そう話すのは、前出の韓国某出版社社長だ。

「逆に、日本関連の本は徐々に減ってきている。その中でも、反日的な内容のものは少数。ただ過去には反日本がベストセラーになった時代もありました」

 韓国で発売された反日本の歴史の中で、マイルストーンとなった作品がいくつかある。93年に発売された『日本はない』(邦題『悲しい日本人』/たま出版)は、その代表格だ。同作は元KBS特派員で国会議員も務めたチョン・ヨオク氏が書いた作品。韓国では100万部以上を売り上げるベストセラーとなった。

 チョン・ヨオク氏は、韓国初となる女性海外特派員という華麗な肩書を持つ人物。その彼女が2年8カ月にわたる日本特派員生活を通じて感じたことを綴ったのが、『日本はない』である。

 発刊当時、韓国では月に10冊程度の日本関連本が発売されていた。そのほとんどの作品は「日本から学ぶべきことが多い」「すべては認められなくても、学ぶべき点がある」というスタンスのものが多かった。これは、現在でも同じような傾向にある。しかし、『日本はない』は徹頭徹尾それらを否定。「日本は異常な国だ。日本のようになってはいけない」で始まるその本は、日本に学ぶべきことは何ひとつないとばっさり切り捨てるだけではなく、惨めで醜い国であると徹底的にこき下ろした。

 日韓文化や作家作品に詳しい韓国人作家・柳舜夏は、ため息交じりに指摘する。

「チョン氏は同書の中で、嫌韓論者で知られる呉善花氏の作品を激しく批判しています。ですが、チョン氏の作品も似たようなもの。嫉妬心や言いがかりの集大成のような作品でした。そのため、『日本はない』に批判的な韓国人も少なくありません。ただ、当時はベストセラーになった。理性に乏しい作品に、数百万の韓国人が熱狂したのです」

 なぜ韓国人は当時、『日本はない』という反日本に熱狂したのか? 94年12月21日付のハンギョレ新聞が、ベストセラーとなった同作について興味深い指摘をしている。

「解放後、日本の残滓の清算という未完の課題を前に、心理的プレッシャーを抱えていた韓国人に対して、ひとりのエリート女性が『日本なんてたいしたことがない』という問題提起をしたことで、国民に一種のカタルシスを付与した。(中略)先進国を凌駕するほどに高度成長を遂げ、民族的な自信を回復した韓国社会の雰囲気が、そのような本の出現を待っていたのかもしれない」

 この指摘は、少し補足して説明する必要がありそうだ。

 当時、韓国は民主化を成し遂げて間もない頃だったが、それ以前の軍事政権下では親日派が既得権益層として振る舞っていた。日本との歴史問題は、65年の段階で朴正煕大統領ら親日派勢力によって表面的には解決された。朴大統領は、過去の歴史問題にフタをする代わりに戦後補償を引き出し、経済発展の原資とした。その後、韓国は漢江の奇跡と呼ばれる高度経済成長期に突入。88年のソウル五輪を経て、先進国への道を一気に駆け上がろうとしていた。

 一方で、韓国国民の感情は複雑だった。政治レベルでは解決された歴史問題も、国民感情レベルでは解決していなかったのだ。日本に憎しみやコンプレックスを抱き続ける一方で、日本の協力なしでは経済的、政治的に立ちゆかないという矛盾が、韓国国民の精神を縛っていた。

 柳舜夏によると、「80年代まで、昼は反日デモを行い、夜は日本人ビジネスマンと肩を並べて『ブルー・ライト・ヨコハマ』を歌うような状況が、韓国のありふれた光景だった」という。つまり、「昼は反日、夜は親日」といういびつな性向が韓国社会に深く根づいていたのだ。 

『日本はない』は、民主化を達成した韓国が国家としての力を蓄え、そのような二律背反面的な状況から脱し、屈折したナショナルアイデンティティを回復しつつあった、まさにそのタイミングで登場した作品だった。韓国を代表するエリート女性が「日本に学ぶことはない」と言い切ったことで、韓国人の心の中に抱えていた矛盾を解消する役割を果たし、戦後50年間たまっていたカタルシスを吐き出すのに寄与したのだ。

反日本よりも人気の日本人作家の小説

「ただ、『日本はない』は、断片的な現象をあまりにも過大に取り上げ、“日本叩き”一辺倒だったという批判も絶えない」(同上、ハンギョレ新聞)

 今から約20年前にはベストセラーとなった反日本だが、では現在の状況は?

 最近、もっとも売れた反日本に、歴史フィクション小説『安重根、安倍を撃つ』というタイトルがある。版元に販売部数を確認したところ、約1万部が販売されたという。前述した通り低迷する韓国出版業界にとって、1万部という数は決して少ない数ではない。ただし、『日本はない』に比べると、ベストセラーというほど売れているわけでもなさそうである。韓国では今でも、年間ランキングに入れば年間30万部程度は売れる市場がある。

「韓国では歴史小説の読者層が広い。『安重根、安倍を撃つ』も、歴史小説という体裁だったので売上部数が伸びたのではないか。私どもが把握している限り、ここ数年間で、日本を批判した本で、同作より売れた本というのは聞いたことがありません」(同書編集担当者)

 日本では嫌韓本が売れているが、韓国では反日本はそれほど売れないというのが最近の実態らしい。『安重根、安倍を撃つ』の編集担当者同様に、前出の出版社社長も口を揃える。 

「日本の嫌韓本のように、反日本が書店に山積みになっているなんてことは、韓国ではまずありえません。ただでさえ本が売れない時代。名のある韓国人作家が内容の薄い扇動的な反日本を書くということはまずないし、出版社も書かせないでしょう。ビジネス的に成立しませんから。韓国人読者に、反日本と、日本の小説家の作品どちらを買うかと問えば、圧倒的に後者と答える人が多いのではないでしょうか。実際、売り上げの統計で見ればその結果は明らかです。きれいごとを抜きにして、反日本が売れるのであれば、もっと多くのタイトルが出てきているはず。一言で、需要がないのです」

 内容いかんを問わず、本には何かしらの共感を感じたり、疑似体験を得るために読むという嗜み方がある。また、ある社会で特定の本が売れる現象からは、その社会がその対象に対して抱いている関心の高さをうかがい知ることができる。

 内容面での評価は分かれるものの、『日本はない』というベストセラー作品は、当時の韓国人の内面世界を映し、共感を呼んだ。翻って現在、反日本が売れないということは何を意味するのか? 少なくとも、『日本はない』がベストセラーになった時代に比べて、日本人に対するコンプレックスや関心が薄まりつつあるということだけは確かなようである。

 日本では、韓国の反日活動が日夜報じられているが、一般の韓国人は日本に対して、それほどルサンチマンや“恨”を抱えていないのかもしれない。併せて、中国関連本が増え始めたという事実は興味深い。韓国人の関心は徐々に中国人を知ろうという方向に傾きつつある。

 ふと、産経新聞の黒田勝弘氏をソウルで取材した際の出来事を思い出した。韓国に長らく在住しながら、韓国ウォッチャーとして、韓国人の間でも名高い黒田氏は、最近の反日事情について次のように指摘する。

「韓国の反日感情はここ数十年で変遷してきた。昔は日本人に対するコンプレックスが含まれていたかもしれないが、最近は少し違うような気がする。韓国という国が”大きくなった”からこそ、国際社会に向け日本を批判する声を高めることができるのではないだろうか」

 反日本があまり売れない韓国と、嫌韓本が売れる日本。

 その現象から、両国のどのような変化を感じ取るべきか? 韓国の反日本について取材して気がついたのは、日本で嫌韓本が売れるという現象の背景には何があるのかということを、改めて考えてみる必要があるということだ。きっとそこには、日本人も気づいていない日本という国の変化、日本人の欲望が隠れているはずである。

(文/河 鐘基、慎 虎俊)

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