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第1特集
"松本人志批判"というタブー【2】

最新作『R100』は最低点!気鋭の映画ライターが 「松本映画」全作品メッタ斬り!

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――なぜ松本映画はつまらないのか?(もちろん松本映画を面白いと感じる人もいることはいるが……)ここでは、「映画秘宝」(洋泉社)、「キネマ旬報」(キネマ旬報社)、「映画芸術」(編集プロダクション映芸)などで映画評を執筆しているモルモット吉田氏が、これまで松本が監督してきた4作品にメスを入れる!

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■松本カラーが出た唯一の作品
『大日本人』(07年)…60点
出演/松本人志、竹内力ほか
脚本/松本人志、高須光聖
企画協力/高須光聖、倉本美津留、長谷川朝二
[あらすじ]
主人公・大佐藤大が「6代目大日本人」の名のもとに巨大な「獣(ジュウ)」を退治する物語。彼の戦いや日常をドキュメンタリー風に描く。
[推定興行収入]
11億6千万円

[レビュー]
取材カメラを通して映画が進展する「フェイク・ドキュメンタリー」形式をとったことで、映画の約束事から解放されて松本らしい色が出た唯一の作品。だが、松本演じる大日本人の存在感だけで映画を支えているので巨大化すると薄っぺらなCGに切り替わって寒々とした光景になってしまう。終盤でそれまでのCGから実写の着ぐるみに変わるメタ的な展開はコントのオチにはなっても、2時間の映画の結末にするには、それまで積み重ねてきた描写を粉砕するだけの破壊力はない。アメリカへの揶揄も表層的すぎて風刺にもなっていないので困惑させられる。巨大ヒーローものへの松本らしい批評眼はうまく発揮されているだけに「映画を壊す」ことよりも、ジャンル映画に対するアレンジ力のみで勝負すべきだった。個人的には本作よりも『VISUALBUM』(松本が企画・構成した映像作品集)収録の巨大人間の横暴に耐えかねて仲間たちが殺害を企てる『巨人殺人』が傑作なので浜田らを起用して長編映画としてリメイクしてはどうかと思うのだが。

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■ナルシシズムの発露でしかない
『しんぼる』(09年)…50点
出演/松本人志ほか
脚本/松本人志、高須光聖
企画協力/高須光聖、倉本美津留、長谷川朝二
[あらすじ]
白い壁に囲まれた部屋にパジャマ姿で閉じこめられた男とメキシコのプロレスラーの様子がパラレルで描き出される。
[推定興行収入]
5億円

[レビュー]
かつて著書『シネマ坊主』(日経BP社)で『ソウ』を取り上げた松本は、この程度の話ならすぐに思いつくと、閉じこめられた部屋には無数のボタンがあり、それらを押していくと奇妙なものが次々現れるという本作の原型となるアイディアを記している。ゲーム好きの松本はこうしたアイテムで、お題をクリアしていく内容が『CUBE』などとは異なる独自の映画になると判断したようだ。そこまでは正しい。パジャマ姿の松本が「ボケましょう」的なノリで見せる一人芝居は、コントの呼吸を熟知しているだけに飽きさせない。ところが、密室劇のアレンジのみに徹すればよかったのに、部屋から脱出した松本が創造主となって世界を構築する神になるという終盤に広げた大風呂敷が映画を一気に失速させる。『2001年宇宙の旅』などを踏まえてこのオチを選択したならまだしも、真剣に考えて誰も観たことがない映画にしようとして辿り着いた結末に見えてしまうのがつらい。これでは「俺は神だ!」というナルシシズムしか残らない。

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■すべてが野暮ったくダサい!
『さや侍』(11年)…30点
出演/野見隆明、熊田聖亜ほか
脚本/松本人志
脚本協力/高須光聖、倉本美津留、江間浩司、板尾創路、長谷川朝二
[あらすじ]
さやしか持たない侍が主人公。その侍の親子の葛藤や絆を描きつつ、「奇想天外な展開」が待ち受ける時代劇。
[推定興行収入]
6億円

[レビュー]
これまでは主役も兼ねることで映画の体裁を保っていたが、演出に専念した本作は、松本が出ない松本映画に商品価値がないことを証明する結果に。深夜の20分番組『働くおっさん劇場』(フジ)では気軽に見ることができた野見隆明も、1本の映画を主役として背負うだけの重量感は素人だけに当然ながら皆無。とんねるずが自分たちのマネージャーを主役にゴリ押しした『ウルトラマンゼアス』以来の観客をナメた映画である。野見の一発ギャグを延々と映すだけの「三十日の業」に付き合わされる観客のほうが拷問されている気分になる。ラストの僧侶が読む父から娘への手紙が歌になるという趣向も、クサい歌詞(作詞は松本)で泣かせようという意図も、すべてが野暮ったくダサい。野見が披露するネタに町人たちは爆笑するが、殿様たちは笑わないという設定に芸人としては人気を得ながら映画監督として一向に評価されないことへの苦悩を滲ませるあたりは『しんぼる』と同じく自己陶酔の極みである。

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■メタ構造で批判から逃げている
『R100』(13年)…20点
出演/大森南朋、大地真央ほか
脚本/松本人志
脚本協力/高須光聖、倉本美津留、長谷川朝二、江間浩司
[あらすじ]
謎のクラブ「ボンデージ」へ入会してしまった男の前に、謎の美女たちが次々と現れて、未知の世界に誘い込む。
[推定興行収入]
??億円

[レビュー]
MとSは紙一重で、SはMの一部であるという松本のSM論を映画にするなら、自身の性癖やフェティシズムを盛りこんだ「パンツを脱いだ松本」を表現に昇華して見せるべきだろう。だが、鉄のパンツで厳重にガードして心の奥底をスクリーンに映し出そうとはしない。『VISUALBUM』収録の「寿司」と同じネタを使い回し、『笑ってはいけないシリーズ』(日テレ)を思わせる設定が繰り返されるだけの痛みも快楽も描かれない物語の中で主人公が責められても、女優たちがボンデージで登場しようとも、興奮も美しさもない無感覚な映画にしかならない。劇中で本作の試写を観ている関係者が矛盾点を突いて頭を抱えるシーンを用意して、映画がつまらないのは松本の責任ではなく劇中の別の監督のせいというメタ構造を用意してまで批判から耳を塞ごうとしていることには驚かされる。つまらない映画をあえて撮って非難されることに快楽を覚えているのなら松本は映画史に残るSM映画監督になるのだが。

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