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第1特集
休刊絶えない音楽専門誌、生き残るのはどこだ?

部数が減り、広告も減り……ジリ貧音楽誌の断末魔!頼みの綱はアニソンとボカロ?

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──近年、老舗音楽誌の休刊・廃刊が相次いでいる。一時は「広告をもらってレコード会社の提灯記事しか書かない」などと揶揄された音楽専門誌だが、もはや事態はそこを通り越し、広告すらも減っている状況だという。このまま音楽誌カルチャーは死んでいくのだろうか?

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『PATi PATi 2013年8月号』(エムオン・エンタテインメント)

 今年4月、それぞれ80年代から続く音楽誌「WHAT’s IN?(ワッツイン)」と「PATi PATi(パチパチ)」(ともにエムオン・エンタテインメント/旧ソニー・マガジンズ)が近々の休刊を発表した。「WHAT’s IN?」は14年1月号、「PATi PATi」は13年10月号で定期刊行を停止し、基幹メディアをCS・ケーブルテレビの自社番組に移す予定だという。 そのほか有名どころでは、「フールズメイト」(フールズメイト)も昨年いっぱいで休刊。近年はビジュアル系専門誌のイメージが強かった同誌だが、創刊は77年と古い。当時はプログレやニューウェイブの牙城としてエッジの効いたカルチャー誌の顔を持ち、コアなファンを獲得していただけに、この休刊のニュースはさまざまな年代に衝撃を与えた。

 数あるジャンル誌の中でも音楽誌の売れ行きがよくないというのは今に始まったことではないが、ここにきて老舗の休刊が相次いだこともあり、「いよいよか」という雰囲気が業界には漂っている。

「プロモーションの重要度としても、紙媒体は今、優先度が下がってますね。それは広告においても同じことで、雑誌に出稿したりアーティストや新譜のニュースが載ることでCDの売れ行きが変わるという実感はまったくない。これまでの付き合いがあるので、惰性で出している部分もあります」

 こう話すのは、メジャーレーベルのプロモーターだ。ある時期、音楽誌に対しては、「評論も批評もない、レコード会社から広告をもらって提灯記事を書く媒体に成り下がった」という批判が存在した。それはもともと「ミュージック・マガジン」(ミュージック・マガジン)の中村とうようや「ロッキング・オン」(ロッキング・オン)の渋谷陽一のように、音楽評論家自身が音楽誌を立ち上げ、批評の場として活性化させてきた歴史があるからだ。雑誌の常ではあるが、それが徐々に広告収入に頼るようになり、媒体としての面白みを失ったというのが批判の趣旨であった。しかし今日では、その生命線である広告収入にも陰りが見えてきている。

「例えば『ロッキング・オン・ジャパン』なら、雑誌に出すことに意味があるというより、そうしてつながりを作っておくことで毎年8月・12月に開催される同社のフェスにアーティストを出してもらいやすくなるのがメリットかな。もちろん人気バンドなら普通に招待されるんですが、売り出し中のアーティストを併せて出してもらうには、年間通しての付き合いも軽視できませんから」(同)

 もはや同社の基幹事業は雑誌ではなくフェスだ、と出版業界でもささやかれるが、その噂もあながち間違ってはいなさそうである。

洋楽誌は完全に懐古厨向けシフト?

 一方で、邦楽誌に比べてさらにジリ貧感を漂わせているのが洋楽誌だ。

「『スヌーザー』(リトルモア)が11年に休刊した後、残っている老舗誌は、ビートルズ、メガデス、ジミ・ヘンドリックス、メタリカ、ツェッペリン……と、往年のスターたちの特集でローテーションしてるところも多い。洋楽を聴いて雑誌を真面目に買うのが、もう中高年しかいないというのが共通認識なので、そこを狙っていくしかない。元オアシス(現Noel Gallagher’s High Flying Birds)のノエル・ギャラガーが出てたら若いほうですよ(笑)。もう洋楽誌は壊滅的ですね。現在の読者と心中することを、どこの雑誌も覚悟してるでしょう。唯一内容的に頑張っているのは、少女時代などのK-POPやきゃりーぱみゅぱみゅなどを積極的に取り上げている『ミュージック・マガジン』くらいじゃないでしょうか」(音楽誌編集者)

 あるいは、これから盛り上がりを見せるであろう稀少なジャンルに特化するのも、雑誌を新たに売るひとつの手法だ。そうした選択に成功し、音楽誌不況の中で好調を保っている一群がある。アニメやボーカロイドといった二次元カルチャーをフィーチャーした専門誌だ。「WHAT’s IN?」「PATi PATi」を休刊させたエムオン・エンタテインメントは、現在季刊でアニソンを扱う「リスアニ!」を刊行中。フールズメイトも「2.5Song MATE ニコソンメイト」という、ニコニコ動画で人気の“歌い手”を特集する雑誌を季刊発行中だ。そのほかにも「UTA★ST@R」(学研)など、この手の雑誌が複数創刊されている。

「声優やアニソン、ボカロPなどを取り上げて音楽誌の体裁をとったのはとてもうまいやり方で、雑誌自体の発行部数も好調と聞きます。ただ、ニコ動系のアーティストを取り上げる雑誌は、音楽誌というよりはアイドル誌に近い作りですね(笑)」(前出・編集者)

「そんなものは音楽ではない」と目くじら立てて怒る 音楽ファン もいそうなこのジャンルだが、今やCDやライブのみならず、音楽誌の世界でも幅を利かせつつあるのは事実。新しい音楽の誕生と共に、そのジャンルに擬態して延命を図るのは利口なやり方だ、と現在のところはいえそうだ。

(取材・文/小宮 鰯)

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■WHAT’s IN?
発行/エムオン・エンタテインメント 発売日/毎月14日
旧ソニー・マガジンズを代表する音楽誌だったが来春で休刊予定。メジャーレーベルに所属するアーティストの中でもややバンドやロック寄りのものを扱う。


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■PATi PATi
発行/エムオン・エンタテインメント 発売日/毎月9日
ソニー系やエイベックス系などの、いわゆるメジャーレーベルに所属するJ-POPアーティストを中心に取り扱う。版元を同じくする「WHAT's IN?」よりはややポップス寄りか。


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■ロッキング・オン・ジャパン
発行/ロッキング・オン 発売日/毎月30日
いまのネットでは「ロキノン系(笑)」という扱いを受けることもある老舗。とはいえ今日にいたるまでの邦楽ロックの礎を築いたミュージシャンたちを手厚く取り上げてきたかつての功績は消えないであろう。


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■ミュージック・マガジン
発行/ミュージック・マガジン 発売日/毎月20日
音楽評論家・中村とうようが69年に立ち上げた老舗中の老舗。でありながら、近年では少女時代やKARA、ももいろクローバーZ、相対性理論など、最近の流行もキャッチアップしている。サイトウユウスケ氏による表紙絵が印象的。


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■リスアニ!
発行/エムオン・エンタテインメント 発売日/1・4・7・10月の25日
2010年に創刊されたアニソン専門誌。声優やアニソン歌手のみならず、作詞家や作曲家、音楽プロデューサーへの取材なども盛り込み、アニメ好きのみならず音楽面からアニソンを愛好する人にも人気。


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