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第1特集
宗教法人の投資最新事情【1】

宗教最大のタブー”マネー・グレーゾーン”仏教が手を染める財テクとM&A事情

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――今年に入って、宗教団体による土地売買や投資運用の損失が大手メディアで報じられたが、そもそも宗教法人は財テクに手を染めるべきなのだろうか?秘密裏に売買される宗教団体の最新事情などを踏まえ、宗教とお金の本質に迫る──。

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『新宗教 儲けのカラクリ』(宝島SUGOI文庫)

 3月26日、鹿児島県の真言宗の宗教法人「最福寺」が朝鮮総連本部の土地、建物を落札。その金額は約45億円──。これは、整理回収機構の申し立てにより競売にかけられていた、東京千代田区の朝鮮総連中央本部の土地とビルの入札に対して4件あった応札のうち、最福寺が最高価格を投じたことによるものだが、朝鮮総連と仏教という組み合わせもさることながら、ひとつの”お寺”がこれだけの巨額を動かせることに、驚いた人も多かったのではないだろうか。

 最福寺は元プロ野球選手の清原和博や、金本知憲なども護摩行に訪れる修行寺として名高く、かなりのお布施が集まることは想像に難くないが、それにしても寄付だけで45億円も賄えるわけではないだろう。

 最福寺の池口恵観法主はもともと北朝鮮とのパイプが深く、頻繁に訪朝し、北朝鮮政府から「親善勲章第1級」なる勲章を授与されている。記者会見で池口法主は、「北朝鮮の政府高官から総連本部を守ってほしいと依頼された」と明かしたが、問題となるのはその落札額の出どころである。総連、ひいては北朝鮮から出ているとなれば、由々しき事態だが、池口法主はこれを否定。朝鮮総連中央本部と、最福寺別院の江ノ島大師の土地建物を担保に、金融機関から借り入れたもので、「総連側には次の場所が決まるまでいてもらってもいいが、最終的には出て行っていただくつもりで考えている」とした。

 これについて、宗教法人に詳しいある経営者は、「実際には、寺院の土地建物というのは、仮に債権として入手しても更地にすることができないので、なかなか担保になりにくいはずです。宗教法人が、不動産や石屋といった業者と組んで霊園や納骨堂を経営する際、宗教法人の自己資本比率が少ないと名義貸しと取られてしまうため、事前に業者が寄付の形で宗教法人に資本を移動させることがあります。似たような形で、朝鮮総連の落札の背後に、多額の寄付をした企業がいたことも考えられます」と語る。

 そもそも、仏教とは世俗の欲から解脱することを説く宗教であるはずで、今回の最福寺の宗派である真言宗の開祖・弘法大師空海も「衆生の解脱せざるは、ただ名利を貪るによる」という言葉を残しているように、名誉や利益を求めることを戒めているはず。しかし、その真言宗の宗派のひとつである高野山真言宗で、資産運用の失敗が明らかになり、宗派の国会に当たる宗会が解散されるという事態になったことも、今年2月、大きく報じられた。

 運用損失は約6億8000万円、投資元本の評価額は12億円目減りしていたというから、ただごとではない。では、なぜこのような事態が起こってしまったのか? 仏教専門紙「週刊仏教タイムス」の記者、山崎一昭氏が解説する。

「高野山が資産運用を開始した経緯をさかのぼると、同団体が霊感商法に巻き込まれた『明覚寺グループ』の事件に行き着きます。90年代、霊視鑑定を行なっては祈祷料などの名目で金銭を要求していた詐欺グループが、休眠状態にあった和歌山県海南市の『明覚寺』を買収して代表役員に就任。正統な宗教法人の名を借りて詐欺行為を続けていましたが、99年に文化庁が『組織ぐるみの違法性がある』として、解散命令を請求。02年に和歌山地裁によって解散を命じられたというものです。この明覚寺が高野山内に拠点を構えて活動していたため、その土地を高野山が買い戻して被害者を救済するのに、10数億円のお金がかかり、そのための金融機関からの借り入れを返済するために必要になったのが、資産運用の始まりでした。同じ頃、日本財界のフィクサーこと許永中が嵯峨天皇ゆかりの塔頭を購入しようとした際、それを阻止するためにも2億円ほど使ったといいます。高野山には時折怪しげな人物が現れ、その度に金銭が絡む被害に発展するなど、「危機管理の甘さ」が宗内からも指摘されていた。そこで非常手段として始めた資産運用ですが、これがうまくいって借金を予定より早く返せてしまった。それで済めばよかったのですが、06年頃から、信仰収入と呼ばれる、寄付などの収入が減ったのをさらに資産運用で埋めようとしたのが、今回の問題の原因となっています」

 さらに高野山は、07年から三木事務所という経営コンサルタントと契約。高野山真言宗や高野山学園(大学・高校)の運営を見直すとしながら、首都圏へのPRを担うとして高野山東京事務所を赤坂に設立したが、この年間経費は3000万円、さらに三木事務所へのコンサルタント料は年間8000万円ほどかかっていたというのだ。

 高野山真言宗の森寛勝財務部長は、仏教タイムスのインタビューで運用損失について「資産運用に成功していた前内局に比べ、ハイリスクな運用をしていたわけではない。金融環境の違いが大きい」と釈明しているが、内局不信任案を受けて宗会を解散させた宗務総長に対し、前議長が抗議の緊急声明を出すなど、高野山内部では波紋が広がっている。

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