──1990年代後半より、日本でも広く普及したインターネット。現在では生活に欠かせないものとなっているネットだが、人が多く集まるところに裏社会の人間が参入してくるのも必然だ。黎明期より“裏社会のシノギの場”として使われたネットを、その犯罪の変遷と共に見ていこう。
(絵/師岡とおる)
[黎明期 2000年代前半]
「ネットで出会える」にダマされる人続出
2000年にフレッツADSL、01年にはYahoo!BBがサービスを開始したことで、インターネットのユーザーが急増し始める。それに伴い、ユーザーを狙う怪しい商売も勃興。出会い系や有料アダルトサイトなどが花盛りとなっていく。01年には、1日9億5000万件のドコモのメールトラフィックのうち、8億件が迷惑メールという状況で、サーバーをパンク寸前に追い込むほど猛威を振るった。
【この時代の主な手口】
■出会い系
「女性と出会える」をうたい文句にユーザーを誘導。大半は、女性会員にメールを送るたびに料金がかかるというシステムを採用し、サクラも横行した。業者は一般のIT企業を装い、業務内容を「簡単な情報処理」などと称してサクラを募集するケースもあった。
■架空請求
アダルトサイトなどで年齢認証を行っただけで、「会員登録を行った」とメッセージを表示し、高額な利用料金を求めるワンクリック詐欺などが急増。ユーザー側の認知度の低さもあり、04年頃まで増加の一途をたどった。
(絵/師岡とおる)
[発展期 2000年代後半]
"情報"をめぐる犯罪が花盛りに
04年にミクシィがプレオープンするなど、SNS時代に突入。ユーザーリテラシーの向上もあり、出会い系は下火となる。一方で増加し始めたのは、個人情報を狙ったサイバー犯罪。ネットショッピングなどが一般化したことを背景に、フィッシング詐欺などを含め、メールアドレスだけでなく、クレジットカードなどの情報を盗み出す手口が世界的に増加していく。また、この頃より、半グレ団体などが情報商材販売といったグレーな手口の詐欺に精力的になっていく。
【この時代の主な手口】
■情報商材販売
競馬やパチンコなどで「絶対に当たる秘密の情報」といったうたい文句で情報を高額で販売。しかし、実際には普通に販売されている競馬新聞などから適当に予想した情報を流すだけという手口だ。
■フィッシング詐欺
有名企業やサイトの名をかたってメールを送って偽サイトに誘導し、IDやパスワード、クレジットカード情報などを盗む詐欺。ネットサービスが発展期を迎えた00年代中頃から目立ち始め、現在でも増加し続けている。
(絵/師岡とおる)
[爛熟期 2010年以降~]
芸能人も巻き込んで手口は巧妙化
迷惑メールなどの古典的な手法への対策が成熟してきたため、より複雑な手口や、新しい市場を狙った詐欺が模索され始める。芸能人の“口コミ”を装い、情弱を狙ったペニーオークションなど、形態を変えながら大掛かりな運営をする詐欺も出現。また、08年に国内で販売開始されたiPhoneを皮切りに新たな市場を築き始めたスマートフォンは、開発側もユーザー側もいまだ黎明期で、犯罪への対策が成熟しておらず、詐欺などのターゲットとなることも。
【この時代の主な手口】
■ペニーオークション
人気商品を格安で購入できるとうたったオークションサイト。だが、ユーザーが入札すると、自動的にシステムが更に高額で入札する仕組みで、利用料だけをかすめ取る手法が蔓延。広告塔となった芸能人を巻き込んで騒動に。
■詐欺アプリ
端末内の情報を利用できるアンドロイドなどのスマホアプリは、個人情報を盗む業者のターゲットにも。電話番号などのユーザー情報を盗み出すほか、ワンクリック詐欺といった過去の手口を応用したアプリなども配信されている。
(文/小林 聖)