サイゾーpremium  > 特集  > 裏社会学  > スパイアプリも!? ネット犯罪で進化するシノギの変遷

──いまや誰もが当たり前に利用するインターネット。しかし、そんなインターネットは、違法薬物売買や個人情報の奪取、詐欺サイトなど、裏社会の人間たちからシノギの場として活用されてきた裏面がある。ネットウォッチャーとしても知られる実業家の山本一郎氏も「(裏社会の人間は)昔からネット周りに存在していたので、特定の時期から急激に増えたという印象はない」と言うように、ネット犯罪の手口は時代に合わせて変化しているものの、いわゆるインターネット、ワールドワイドウェブの黎明期からネットや通信、ITといった世界は、裏社会と密接な関係にあった。では、裏社会の人々はどのようにITやネットを利用していったのか? ネット周りのシノギの変遷を見てみよう。

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怪しい仕事を紹介するサイトはそこかしこに存在する。

「ネット初期である1990年代後半頃に、通信を利用した手口として多かったのは、ダイヤルQ2です。偽造テレホンカードを使って、公衆電話から自分たちの運営するダイヤルQ2サービスに電話をかけっぱなしにして通信サービス料を計上するといった手口で、月に6億円以上稼いだ暴力団グループもいました」(前出・山本氏)

 ユーザーの絶対数が少なかったネット初期は、上記のようなサービスの穴を突いた手口で、企業を狙ったシノギが展開されていた。その後、99年にiモードが登場し、ネットユーザーが急速に増え始めると、ユーザーを直接狙う手法も増加。その代表が「出会い系」だ。00年代初期には、「ケータイやネットで女性と出会える」とうたい、個人相手にメッセージを有料で送れる出会い系サイトが流行した。よく知られているように、“メッセージを送れる女性”は運営企業が用意したサクラがほとんど。「こうした企業には、ヤクザがケツ持ちとしてかんでいることもあった」と、サクラ経験者は言う。また、迷惑メールに対する規制や対策が整っていなかったこの時期は、メールによる出会い系サイトへの誘導や架空請求も一般的だった。

 00年代中頃になると、SNSの隆盛で、手軽にユーザー同士が出会えるようになったこともあり、出会い系は下火に。そこで、新たなシノギとしてオンラインゲーム内のアイテムや通貨を現実のお金で取引するRMT(リアルマネートレード)の仲介や違法のオンラインカジノなどが目立ち始める。

 そして近年では、シノギの手口の複雑化と組織的運営が進行している。ジャーナリスト・溝口敦氏の著書『暴力団』(新潮新書)によれば、12年、芸能人を巻き込んで騒動を巻き起こしたペニーオークションやネットカジノも裏社会のシノギであると指摘されている。前出の山本氏は「不起訴処分になりましたが、闇金をやっていたグループがスパイウェア入りのアンドロイドアプリをばらまいて個人情報を抜く事件があったりと、確実に組織的な手口が増えています。定番の個人情報の売買も、以前は10万件単位だったのが、最近ではメールアドレスや属性データだけでなく、クレジットカード情報も込みで100万件単位で流通していたり、(被害の)桁が上がっている」と語る。ITセキュリティベンダーのマカフィーが発表したレポート「サイバー犯罪の10年間」においても、個人情報を抜き取るサイバー犯罪は00年代中期以降、増加の一途をたどっていることが報告されている。

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