サイゾーpremium  > 特集  > 日本経済は【占い】に支配されている!? 霊能力ビジネスの今
第1特集
経営者と占い師の危険な関係【1】

“洗脳用”ドラッグ使用も横行中! 日本経済を占いで支配するタブーなき霊能力ビジネス

+お気に入りに追加

──中島知子、持田香織と、占い師・霊能力者による芸能人の洗脳が話題となった。時に財産をむさぼり、社会的な生活を送ることすら不可能にしてしまう、そんな恐怖が、この“非科学的”な力には見え隠れする。しかし時すでに遅し──大手車メーカー、クレジット会社にデパート、出版……実は日本を支える大手企業たちも、占いに左右されていたようで……。

1210_uranai.jpg
『細木数子の「六星占術」あなたの運命 開運の箱 平成25年版』(ワニ文庫)

 最近、東京の繁華街にある育毛サロン大手の店舗で6人もの従業員が次々に体調不良を訴え、休業状態に陥る出来事があった。関係者が言う。

「下血、吐血、倦怠感など、症状は皆共通していました。さらに、口を揃えて『何か得体の知れないものが見えるような気がする』と言うんです」

 医師の診察を受けても、体調不良の原因は判然としない。彼らが見たという「得体の知れない何か」の正体など、もとより会社には突き止めるすべもなかった。

 とはいっても、なんらかの措置を講じなければ業務に影響し、損失は拡大する一方だ。会社はまず、経営コンサルタントに依頼して、再開に要するコスト計算を行った。病欠中の6人の手当、店舗の移転費用……。

 軽く1000万円単位の金額がはじき出されたとき、ひとつのアイデアが浮上した。

「いっそ、霊媒師に頼んでみてはどうか」

 いわゆる“除霊”を試してみることにしたのである。

 経営コンサルタントの人脈で依頼したのは、30代の若い男性。本人は霊媒師とは名乗らなかったが、“霊的な力”を使って、1部上場企業や官公庁の施設建設場所についても助言しているとの触れ込みだった。

「会社としては、お祓いだろうが除霊だろうがヒーリングだろうが、方法にはこだわっていなかったんです。ただ、極力安い金額で6人を復帰させ、事業を正常化したかった。調べてみると、『除霊は1000万円ではきかない。それだけ払ってもニセモノに当たることが多い』などという話も耳にしましたが、この男性は数十万円と安かった」(前出・関係者)

 結局、男性はおよそ2週間で6人を復帰させた。取り組みの内容は、食事の改善や栄養サプリメントの摂取など健康面の指導と、気功による癒し、店舗内の除霊に、“結界”を張るというところまで。

 もちろん、男性は医師ではなく、彼の取り組みが医療の埒外であることは明らかだった。また男性は、自身に霊的な能力が備わっていることも明言しており、結果として、この事例は“霊障(霊的な原因で起きる災いの事)”だった、と関係者は口を揃える。

 全国に数十店を展開する有名企業が、社会的には「非科学的」とされている分野の専門家に金銭を支払い、営業に関わる重要な問題の解決を委ねた事実が、ここにあるのだ……!

あの松下幸之助までも助けを求めた占いの力

 企業、あるいはその経営者が、占い師や風水師、霊媒師の助言に頼っている例は、実は少なくない。

 有名なところでは、松下電器の創業者・松下幸之助氏(故人)がいる。彼が信じたのは、1949年、11歳の時に「千里眼少女」と新聞で取り上げられた藤田小女姫氏(同)だ。日米安保条約の成立と岸信介首相の退陣、今上天皇の結婚、韓国大統領の朴正煕暗殺事件、周恩来中国首相の死などの予言で知られ、政財界の大物を多数顧客として抱えた。

「あの経営の神様が!?」と、彼のありがたいビジネス本の信者諸氏は思うかもしれないが、松下氏は彼女に、新製品の発売時期や事業の先行きなども尋ねていたという。

 また、日本占術協会の会長で、手相占いが専門の浅野八郎氏は、牛尾治朗ウシオ電機会長、高原慶一朗ユニ・チャーム会長、李秉喆サムスン電子元会長(同)らの手相を見ている。

 とはいえ、これらの経営者は占いに依存しきっていたわけではなく、経営判断のひとつの“きっかけ”、参考程度に考えていたようだ(と、信じたい)。何より、企業が順調に発展してさえいれば、経営者が占いを信じていようがいまいが、問題になることはない。

 しかし一方で、占いや、いわゆる「スピリチュアル」に強く傾倒した経営者が、会社に重大な損失を与える事件が起きたのも事実だ。

 98年に退任したヤクルトの元副社長は、宗教団体「泰道」に傾倒。金の棒でコップを叩き、中に注いであったジュースの味が「甘ければイエス、苦ければノー」とする占いをもとにしたデリバティブ取引で、会社に1000億円もの損失を与えた。いやはや社員としては、そんな役員のもとで汗水たらして働いていた空しさたるや。元副社長はこの件で役職を辞しただけでなく、特別背任で実刑判決を受けている。

 また、06年には、セイコーインスツルにおける会長解任劇が話題となった。

 服部セイコー創業家の御曹司であるこの元会長は、女性占い師を“経営コンサルタント”と称して経営の中枢にまで引き入れ、彼女の進言を受けて社名を変更したばかりか、中国・大連からタイへの主力工場移転まで計画。当然ながら仰天した経営陣が、取締役会で会長の解任を緊急動議し、本人以外の全員の賛成で議決したのだ。ちなみに余談だが、この事件、小誌ともなじみの深~い某認知科学者が元会長の洗脳を解いたとか解かなかったとか……。

 と例を挙げれば、大物の名前も並ぶネガティブな出来事がたびたび報じられているにもかかわらず、占いを信じる企業経営者は、意外なほど多い。

「日経ベンチャー」誌(日経BP社)は05年、中小企業経営者112人を対象にアンケート調査を行い、71・4%から占いを「信じる」とする回答を得ている。そのうち7・1%は、実際に対面鑑定を受けたことがある”実践派”だったのだ。

 ここでひとつ断っておくと、本稿の目的は、企業経営者が占いを信じること自体を「問題だ」と批判することにはない。

 指摘しておきたいのはむしろ、多くの人々が占いを信じている事実があるにもかかわらず、腫れ物に触るようにして、それがどうしてなのかを考えようとしない風潮のほうだ。そんな中で、一部の不心得者、つまりは詐欺目的の「ニセモノ」の跋扈を許しているのが現実なのである。

同じ生年月日の人たちが同日自己破産の不思議

 しかし、そもそも、本当に占いは「当たる」のか?

 それを検証するのは、極めて難しい。占いを「非科学的である」と断じる人々であっても、占いが「絶対に当たらない」とする客観的な証拠を提示することは、ほとんど不可能だろう。

 一方、中国の六十干支や陰陽五行説に基づく各種の易学について、データの裏付けを取り、「統計心理学」として整理している人物がいる。誕生日をもとにした“占い的”データベースを管理する株式会社ピーアイディ代表取締役の田中久雄氏だ。

 同社は、延べ数千万人分の誕生日の過去データを収集。仮説、立証を繰り返して「人間傾向分析エンジン」を構築したという。同社の運営するクラブ、その名も“経営者クラブ”に入会すると、スマートフォンなどにソフトをインストールし、相手の誕生日を入力すれば、即座にタイプ診断ができるようになる。

 田中氏が言う。

「よく『易学は統計学』だといわれますが、実際に統計による裏付けが取られてきたワケではないんです。そこで、さまざまな業界の企業から顧客の誕生日データの提供を受けて、独自に検証してみた。結果、易学の理論には使えるものが相当あるとわかったのです!」

 気になるのはどのように“使える”かだが、同社は、あるクレジットカード会社がキャッシングの利用促進DM(ダイレクトメール)を送る際に、誕生日分析に基づく「利用しそうな顧客」と「利用しなさそうな顧客」のデータを提供したことがある。

「誕生日の分析で知ることができるのは、その人の素質(タイプ)と、その人がある行動に出そうなタイミング、それぞれのタイプが反応しそうなキーワードです。

 それらのデータに基づいてDMを送り分けてみたところ、利用しそうだと思われた顧客はDM発送後に7・59%がキャッシングでお金を借りた一方で、利用しなさそうだと思われた顧客の利用率は0・48%にすぎませんでした」(田中氏)

 同社には、同様のマーケティング実績がほかにいくつもあるという。今回は残念ながらそのすべてをお見せすることはできないが、その中のひとつとして、田中氏が見せてくれた「“圧巻の”誕生日データ」も紹介しておこう。

 そのデータは、某金融会社が調べた自己破産者40万人分のリストを誕生日順に並べ替えたもの。よく見ると驚いたことに、同じ日に生まれた人々が、非常に近い年月日に自己破産しているのだ。

 例えば1938年7月22日に生まれた3人(男1女2)は、それぞれ00年7月12、18、30日に自己破産している。また、38年7月31日生まれの女性2人が自己破産したのは、01年4月の2日と27日だ。

 そして、38年8月19日生まれの女性2人に至っては、同じ00年10月2日に自己破産している。そんな例がいくつも見られた。

「私はこのリストを、いろんな角度から分析してみました。長男長女が多いのか、あるいは末っ子が多いのか。血液型は何が多くて、学歴はどうか等々です。しかし誕生日を除いては、有意な傾向が見て取れなかった。つまり、人間には『自己破産しやすいタイプ』というものはおらず、『自己破産しやすいタイミング』があるのではないかと考えられるのです」(同)

 田中氏はこれらの“研究結果”を利用し、“マーケティング”のひとつとして、多数の大手企業のコンサルティングも行っている。その顧客リストには、日本有数の企業名がずらり。あの某大手車メーカーですら、同社の発行するカタログに、田中氏の理論を用いているという。

 ただ、占い師や霊媒師の下に集まる人々の大部分は、こうした検証結果を踏まえて彼らを信頼しているわけではない。単に直感によって行動しているだけなのだが、「それはむしろ、人間として当然のこと」だと、日本精神神経学会専門医の西脇俊二氏(ハタイクリニック院長)は言う。

「私たちが日常的に下している判断というのは、実は必ずしも合理的ではないんです。たとえば仕事を選ぶ際に、自分のこだわりが前面に出て、あえてリスクの高い選択をする人は少なくありません。最後には自分のカンがものを言う。占いには、そうした”直感”を鋭くしたりする働きがあるといえます」

 確かに、経営者には判断力が問われる。そのカンを鋭くする意味では、占いも有効なのか。一方で、一部の経営者が占い師や霊媒師に過剰に傾倒し、会社に悪影響を与えてしまうのはなぜなのだろう?

「占いに頼りすぎるのは、自分で考えて決断する習慣が弱いからだといえます。実は、日本人はその傾向が強い。暗記主体の教育を受けてきたために、言われたことを鵜呑みにするクセがある。洗脳されやすいんです!」(西脇氏)

 占い師や霊媒師を名乗る人間の中には、経営者たちのこうした弱点につけ込んで、利益を吸い上げようと狙う手合いも少なくない。

 証拠調査士として、占い師・霊媒師詐欺の相談もよく受けるという経営コンサルタントの平塚俊樹氏が話す。

「自称占い師の中には、ほとんど『乗っ取り屋』みたいな連中もいます。彼らの手口は巧みですよ。占い師として経営に入り込みながら、興信所を使って社長の家庭環境などを調べ上げて、より深く取り込んでいくんです。同時に、経営者を洗脳する際に薬物を使うのも当たり前。お香だと言って脱法ドラッグの類を四六時中たいたり、サプリメントだと偽って服用させる。そこまでやられたら、思考が停止して、一種の洗脳状態に陥ることは目に見えています。そうなれば簡単、財産を根こそぎ持っていかれてしまいますよ。

 そうそう、複数の探偵事務所の人間から聞いた話ですが、テレビにも出て一躍時の人となっていた占い師のHですら、合法ながら、薬物使用の形跡が見られたそうです。また、最近“K”という、違法薬物を使用する占い詐欺師の存在も聞こえてきています」

 しかしそれにしても、日本はどうして、そんな悪徳占い師の天国になってしまったのか?

「原因の一端は、やはり法制度にあります。日本には、中国のように、易学などのノウハウを知的財産権として保護する仕組みがない。そのため正当な“伝承”制度も生まれず、マジメに研究開発された知識を“守っていく”という文化も生まれないんです。つまり、誰だって”占い師”を名乗れてしまう。ピーアイディの田中さんが開発した誕生日の統計学データだって、セミナーの受講生らは盗み放題でしょう。カネ目当てのそんなにわか占い師が、日々増産されているのが現状です」(平塚氏)

 確かに筆者ですら、少しのロジックを勉強すれば明日から“占い師”になれてしまう。信じる、信じないは別としても、法規制はなく、学問としての伝承にも規制なき占い業界。占いの持つ機能や役割について研究がなされなければ、悪徳占い師たちによる被害は今後も止められそうもない。

(文/サイゾー取材班)

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2022年6・7月号

目指すはK-POP? ジャニーズ進化論

目指すはK-POP? ジャニーズ進化論
    • 音楽業界からの【賛辞と批判】
    • 【芸能プロ】的戦略が抱える2つの“矛盾”
    • 令和の【ジャニーズ・シングル】20選
    • 20年代のジャニーズ【ミュージックビデオ】

移ろいゆくウクライナ避難者

移ろいゆくウクライナ避難者
    • 移ろいゆく【ウクライナ】避難者

NEWS SOURCE

インタビュー

サイゾーパブリシティ