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【特別企画】「若者は、なぜ恋愛をしないのか?」[後編]

草食系ではない20代女性が期待する"男性性"の本質とは?

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──本誌7月号に掲載した前編では、「性の解放」が唱えられた60年代後半、「乙女ちっく」と呼ばれる70年代から始まった一連の少女マンガブーム、さらには80年代に始まったナンパ文化から90年代の援交文化への変遷など、恋愛の歴史を紐解きながら、「なぜ、若者は恋愛をしなくなったのか」という現状を分析した。では、こうした若者の恋愛離れにおいて、SNSはどのような役割を担うことができるのだろうか? 社会学者・宮台真司氏、東京大学大学院で現代社会意識論を研究する大尾侑子氏、そして出会い系サイト「ワクワクメール」のプロデューサーとして辣腕を振るった中園秀樹氏と共に、多角的な視点から考えてみたい。

宮台真司氏(写真/佃 太平)。

大尾 (ワクワクメールが主催した)グループインタビューで、「一般層」にあたる女性たちに「良い恋愛をするための努力をしていますか?」とたずねたとき、ポカンとしていましたね。自分磨きをしている、合コンや飲み会に行く……といったような、積極的な努力の話は聞かれませんでした。

宮台 「ポカンとしている」のは、性愛よりも〈精神の平穏〉が優先されるからでしょう。19世紀を通じて小説を模倣して実践されたロマンチック・ラブ(ロマン主義的恋愛)では、ロマン主義的芸術と同じく、それに触れると善悪や美醜の観念が入れ替わり、かつての日常に戻れなくなるような、平穏を揺さぶる〈情熱的な愛〉が求められました。そこでは苦しみこそが愛の証し。艱難辛苦の道ゆきこそが入れ替え不能性の証しでした。平穏無事の選択が後悔をもたらし、波瀾万丈の選択が「いい人生だった」との振り返えりをもたらします。

 それと比べて昨今の若い人は〈精神の平穏〉を求め過ぎです。そのほうが心も痛まず、周囲に叩かれずに済むけど、ロマンチック・ラブの最も美味しい果実は味わえません。どんなに非現実的だろうと、すべてを捨てても後悔しない性愛を願望しない限り、無理です。昔はそうした願望の共有があったので、ホモソーシャリティ(同性コミュニティ)では「あいつ最近付き合い悪くない?」「惚れた男ができたからだよ」「ならしょうがないね」という具合でした。ところが今は友人らに自分がハマっていないことを自己提示せざるを得ない〈非性愛規範による性愛規範の囲繞〉があります。

大尾 ドロドロの恋愛を経てロマンチックな恋愛をしている人がいたとしても、それを許容する地盤が同性の間にないように思います。「自分たちとは違う世界」と距離をとられてしまうから、相談できなかったりネタ的にしか話せなかったりするのでしょう。すごくいい体験をしていることをシェアしようと思うと、同じような経験をしている1人か2人の親友にしか言えない。大学で表面的な話をしがちなのは、過激なドロドロの体験談をすると友達に引かれる原因になってしまうから。どこまで話して良いかの線引きが難しく、裏で何を言われるかわからない状況では、極端な話題を避ける傾向があるように見えます。

宮台 〈精神の平穏〉問題は絆一般に拡張できます。〈精神の平穏〉を重視する限り、互いに道具化する関係が専らになりがちで、絆は得られません。SNSの浸透を背景にカリスマナンパ師の下で修業をするナンパ塾がブームで、3名の出身者が僕の私塾に出入りしてます。最近のナンパ塾には、自在にナンパできるけど、何かツマラナイ、血湧き肉躍るが如き高まりがないと悩む連中が訪れるようになりました。〈精神の平穏〉自体を壁だと感じる新しい男子。講師のナンパ師もそれを意識し始めています。ナンパが自由にできても〈出会いの先〉の不全を意識する男子が出てきているのですが、女子はどうですか?

大尾 あくまで私の周りでの話ですが、自己啓発的なナンパ道場的なものに頼るほど「恋愛に関して貪欲・積極的な女子」の話は聞いたことがありません。恋愛体験において今より上の次元にステップアップする、あるいはつまらない日常を打開するためにお金や時間を費やすのは、そもそも女子の発想にあまりないのかもしれません。なので、「寄ってきた男の中からうまく選べるように自分磨きをしておく」といった発想のほうが強いかなと思います。ある意味女の子のほうが現実主義的な感じがして、その自分磨き自体が目的化して満足してしまう場合も多そうです。

中園 もともと「男性は積極的で女性は受け身」という構造になっているから、男性に対して、積極的にアプローチしてほしいと期待はしていなくても、「来るのであればそっちからだ」と思っているのかもしれませんね。

宮台 昔の女性は、恋愛向きか結婚向きかを意識して男を選びました。結婚は〈精神の平穏〉が大切だけど、恋愛は〈情熱的な愛〉が大切だと。人も羨む美男子と恋愛していた女が、驚くような醜男と結婚し、楽しげに子どもを産み育てる……というのはよくある話で、それが理想とされました。「結婚は日常で、恋愛は非日常」は消えたのでしょうか?

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