サイゾーpremium  > 特集  > 経済界が注目する日銀と財務省の動向──金...

──歴史的円高については、多くのエコノミストやシンクタンクが分析し、その解決策を発表しているが、現実的な施策はあるのだろうか? ここまでに登場いただいた田中秀臣氏、阿部重夫氏、須田慎一郎氏らの言葉からさぐってみたい。

1111_nichigin_02.jpg
田中秀臣氏の著書『デフレ不況 日本銀行の大罪』(朝日新聞出版)。

 現在、自動車を始めとする輸出関連企業を直撃している円高問題。10月5日現在も1ドル=76円台で推移しており、円安に転じる気配はまるで見えない。エコノミストの一部からは「1ドル=60円台突入もあり得る」との声も出始めた。果たして、この円高問題を解決する手段はあるのだろうか。

 ここでは金融政策による主だった解決プランを見ていこう。

 まずは上武大学教授の田中秀臣氏。円高のメカニズムを次のように説明した上で、日銀が解決に向けて果たすべき役割は大きいと話す。

「通貨高は、他国の通貨に比べて自国の貨幣の量が足りないことから起きます。つまり円高は、ドルやユーロに比べて、円の流通量が少ないために、価値が上がりすぎていることが原因です。それを解決するためには、政府は日銀と協調して大幅な金融緩和を行わなければいけません。具体的にはインフレ目標を設定して国債などを買い入れ、円の流通量を増やす。インフレ目標という名称が嫌であれば、名目成長率(成長率+インフレ率)目標を明確に設定すべきです。日本の潜在成長率を1・5%とすると、そこにインフレ率を2・5%足して4%程度の名目成長率を目指し、国債などの資産を買い足せばいいのです」

「FACTA」編集主幹の阿部重夫氏は、円高やデフレ下で復興増税を強行するという政府の愚策を避けるために、日銀は国債の直接引き受けを行い、大胆な追加金融緩和に踏み切るべき、との立場だ。

「野田佳彦首相や財務省は『日銀引き受けは禁じ手』とかたくなに否定していますが、財務省OBの高橋洋一嘉悦大学教授が指摘するように、日銀は国債償還時の調整弁として毎年国債の直接引き受けを行っています。今年度は引き受け予算枠30兆円のうち18兆円分も残っており、これを活用すれば、法律を改正することなく、円高にも復興財源対策にも活用できます」

 経済ジャーナリストの須田慎一郎氏は、日銀引き受けについては「国債暴落の引き金を引きかねない」と懐疑的な立場を取るが、日銀は量的金融緩和の議論をためらうべきではないと話す。

「日銀が量的金融緩和に及び腰なのは、国債の直接引き受けという議論が出てくることを恐れているからです。そのために、あれこれと防波堤を張っているのですが、その防波堤にはかなりのウソが含まれています。例えば『実質実効為替レートで見れば、現在は20年前に比べて円高とはいえない』との主張がその典型で、30年前と比べたら明らかに円高なのだから話にならない。そうしたゴマカシの議論をやめて、リスク資産の買い増しを含めた量的金融緩和の議論を正面切って行うべきです」

 このまま円高が続けば、輸出関連企業のダメージは一層大きくなる。為替差損の増大にたまりかねた企業が生産拠点の海外移転を加速させており、今後は雇用減などの形で、我々の生活にも影響が出てくるはずだ。もっとも、円高でメリットを受ける業界も少なくない。資源産業などの輸入関連企業はもちろん、資金余力のある企業が円高を利用し、海外の有力企業に買収攻勢をかける動きが広がることも予想される。

 いずれにしても、過度の為替変動は日本経済にとって混乱の種となる。マスメディアは、円高の動向と解決策、そして日銀の金融政策を注意深く報じるべきであろう。
(取材・文/神谷弘一 blueprint)

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2022年6・7月号

目指すはK-POP? ジャニーズ進化論

目指すはK-POP? ジャニーズ進化論
    • 音楽業界からの【賛辞と批判】
    • 【芸能プロ】的戦略が抱える2つの“矛盾”
    • 令和の【ジャニーズ・シングル】20選
    • 20年代のジャニーズ【ミュージックビデオ】

移ろいゆくウクライナ避難者

移ろいゆくウクライナ避難者
    • 移ろいゆく【ウクライナ】避難者

NEWS SOURCE

インタビュー

連載

サイゾーパブリシティ