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連載
CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第4回──MUSIC編

母性を抑えて日本進出!? 男子も必聴の少女時代『GENIE』!

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──今、本当に注目すべき音楽とはなんなのか? 「ROCKIN'ON」では読めない、新世代による新世代のためのミュージック批評。

2010年10月号 MUSICクロスレビュー

■ノリにのってる嵐の新アルバム

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『僕の見ている風景』

発売/ジェイ・ストーム
発売日/8月4日
価格/3800円


今、最もアツいジャニーズアイドルといって間違いない嵐の、9枚目のオリジナルアルバム。昨年はベスト盤のみだったので、オリジナルは約2年ぶり。「Monster」などのシングル4曲や5人それぞれのソロ曲など、計20曲収録の大盤振る舞い。今号の第三特集にも登場してくれたインディーズアーティスト→Pia-no-jaC←が楽曲を提供するなど、新たな領域への挑戦も。

【音楽ライター・田口評】
★★★★★★★☆☆☆
非"あるある"系、その可能性の中心
"いい曲"の基準は数多あれど、「誰がトレースしてもサマになる」のはそのひとつ。オモテ拍の強調が気持ちいい「Troublemaker」は10年代の「六本木心中」候補(俺の中では)。架空設定によって直球の愛に説得力を持たせる「Monster」は、Jポップ詞が突き当たる"ラブソングの困難"を見事に打ち破る。EXILE「Ti Amo」に並び、"あるある系"以外のラブソングの可能性を実践する重要曲だ。ほか、同音連打で安室に負けんぞ的な「マダ上ヲ」など佳曲多し。

【音楽誌副編集長・川上評】
★★★★★★★☆☆☆
最上のポップアーティストとしての嵐
音楽不況と言われる時代、売り上げでひとり勝ちするアイドルが、最上のポップ・アーティストであるという事実。5人のハーモニーのすばらしさは言わずもがな、パート分けとその組み合わせ(歌詞とキャラの相性ふくむ)の絶妙さにほれぼれする。どこか影のある、押し付けがましくない爽やかで前向きな歌詞はチャーミングそのものだし、直球のラブ・ソングがひとつもないのも巧妙なしかけ。いろんな意味でとてもスマート。

【音楽ライター・藤井評】
★★★★★★☆☆☆☆
能天気さとポンコツさで魅せる
どんだけ「anan」でチョメチョメしても、嵐にエロイ曲は似合いません。いつまでたっても甘えん坊なポンコツさが愛嬌であり、その点「Monster」は傑作。ゴシック・ホラーの不穏でキッチュな世界観が、嵐の脳天気なタフネスでもって、キラー・チューンのユニゾンへと昇華されるカタルシスに戦慄が走る。嵐にダーティな攻めは不要。腹くくってポップネスに殉職せよ! とはいえ個人的には、欧陽菲菲にも歌わせたい哀愁のサクラップがドツボですが。


■韓国女子アイドルブームの大本命

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『GENIE』
少女時代
発売/Nayutawave Record
発売日/9月8日
価格/1100円(通常盤)


今年初頭からブームの兆しがあった、韓国女子アイドルグループ。大本命としてデビューが待たれていた少女時代は、8月に初ライブを敢行。その盛り上がりとともに、観客の大半が女性であったこともメディアで報じられた。日本デビュー曲となる本作は、韓国で大ヒットし、彼女たちの人気を不動のものにした同タイトルの日本語詞バージョン。

【音楽ライター・田口評】
★★★★★★★☆☆☆
「女は海」を避けて日本向けに
この曲とイントロSEが激似の石井明美「CHA-CHA-CHA」は、「俺のキャデラックに乗りなよ」という誘いを「私は踊りたいの」と断る女性の主体性を描いた。それから24年、「GENIE」の原曲は「私の助手席に座りなさい、すべてを委ねなさい」(大意)とまで歌う──のだが、日本語詞はマイルド。まあ直訳したら"強い女"を超えてむしろ(ジュディ・オング的な)母性感が出ちゃうからかなと。ってわざわざ調整してくれてんだから、我々男子も聴きましょうぞ。

【音楽誌副編集長・川上評】
★★★★★★★☆☆☆
庶民派日本アイドルにはない高級感
韓国アイドル大本命なのは美脚ダンスを見れば納得。しかし音の響きに重きを置いた日本語詞の出来が、先行するKARA同様、残念すぎる。R&Bというフォーマットに日本語を乗せるには技術が必要なんです。c/wの韓国語ヴァージョンとの差に唖然。曲はいいのになー。まじで康珍化先生を起用してほしい。ソロ活動を視野に入れたキャラ設定や、センター不在の民主制、なにより庶民派な日本産アイドルと一線を画す高級感が新鮮。

【音楽ライター・藤井評】
★★★☆☆☆☆☆☆☆
匿名的で愛着のわかぬキャッチーさ
単調に脈打つユーロビートが、達者な歌唱力と相まって清々しく脳内を素通り。響き重視の日本語も、ノドごし爽やかに胃もたれしない。これぞキャッチーの極み。ゆえに匿名的で愛着もわかず。しかし彼女たちほどの職人芸があれば「哀号〜!」と土着的な激情を発露しても、粘着質すぎずに魅力的なアクとして加味されるはず。過酷なレッスンに耐えた苦労人たちだからこそ、日本の素人娘にはないドス黒い混沌をスタイリッシュに聴かせてほしい。


■10年代日本語ラップ期待の星

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『Swes Swes Cheap』
S.L.A.C.K.
発売/DOGEAR RECORDS
発売日/8月4日
価格/2000円


板橋区出身で、実兄らとヒップホップユニットPSGを組むラッパー&トラックメーカーS.L.A.C.K.によるソロアルバム。ヒップホップ好きのみならず広く音楽好きから注目を集める彼は、6月にもミックスアルバム『Buda Space』を1000枚限定で発売したが、同作が即完売となったことから本作は1500枚限定生産。

【音楽ライター・田口評】
★★★★★★★☆☆☆
怠けないポリリズムを聴け!
いい意味で、怠け(=slack)からほど遠い。PSG『DAVID』より前作『WHALABOUT?』より、フックや、トラックのメロディックな要素を抑えつつ、ビートとラップの訛りは一層先鋭化。前作よりビートの打点の外し幅が小さいのは、周期反復の可能性を、前作を経た上で厳密に再検討しているゆえか。(非整数分割の)5拍子のフレーズをはじめ、全要素が揺れまくりの「この道はどこへ」は、ゼロ年代に菊地成孔/DCPRGにハマったリスナー全員必聴。

【音楽誌副編集長・川上評】
★★★★★★★★☆☆
"間"がもたらす域外への訴求
S.L.A.C.K.が曽我部恵一をはじめ、コアなヒップホップ・ファン以外にもアピールするのは、歌心あふれるラップや、トラックの面白さもさることながら、その独特なタイム感をもった「間」だろう。ビートにしろラップにしろ、レイドバックした空気感を伴って耳に響くのだ。Budamunkyとのリミックス盤から矢継ぎ早に発表されたこの限定EPも、飄々としながらディープな世界を展開。10年代オルタナ・ヒーローの風格が十分。

【音楽ライター・藤井評】
★★★★★★★★☆☆
notゆるさ、butしなやかさが魅力
たゆたうトラックにはポップなメロウさとチープなくぐもりが同居し、けだるいフロウには「納豆? それとも卵かけ?」的な日常のしょーもない逡巡がのぞく。そんな飄々とした彼だが、「この道はどこへ」では、"俺はこの先どうする?""面倒くせ、スネかじってたい"と青臭い無責任ぶりを吐露する一方で、それを紡ぐフロウが熟練フォーク歌手のように滋味深い。心地よいゆるさというより、その達観したしなやかさこそが彼の魅力なのだろう。

川上健太(かわかみ・けんた)
1974年生まれ。音楽雑誌「CDジャーナル」副編集長。担当はJ-POPと映画。編集したムックに『ロックンロールストーブリーグ』(安田謙一&辻井タカヒロ/音楽出版社)など。

田口寛之(たぐち・ひろゆき)
1979年生まれ。ライター、編集者。編集を担当した書籍に『M/D マイルス・デューイ・デイヴィス3世研究』(菊地成孔、大谷能生)、『武満徹 Visions in Time』(武満徹/共にエスクァイア)など。

藤井聡子(ふじい・さとこ)
1979年生まれ。DVD誌編集としてアイドルDVDとVシネマを見続けた後、洋楽誌に移り、変拍子三昧のプログレ漬けで悶絶死。普通の女の子に戻るべく、地元裏日本で細々とライター稼業。

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