サイゾーpremium  > 特集2  > 新型"地下アイドル系"ライブハウス「ディ...
第2特集
萌え系女社長の下、47人のアイドルたちが舞い踊る!?

新型"地下アイドル系"ライブハウス「ディア ステージ」の カオスな魅力

+お気に入りに追加

──盛り下がってると思ってたアキバで、やたら話題の萌え系ライブハウス発見!! そのライブハウス「ディアステージ」のやり手女社長"喪服ちゃん"、そして、彼女を支持する2人の男、音楽プロデューサー・サエキけんぞう氏と、大手レコード会社ジェネオン・ユニバーサル社員・中西秀樹氏の3人による、アキバ鼎談、開催!!

0907_chika.jpg
↑画像をクリックすると拡大します

 アキバブームはすでに過去のもの」──そんな世の流れに逆行するかのごとく、今秋葉原で熱い注目を集めているのが、アイドルたちが歌い、ヲタ芸を打ち、そして給仕もしてくれるという、謎のカフェバー兼ライブハウス「ディアステージ」(以下、ディアステ)だ。場所は、アキバのメインストリート・中央通りから1本入った道路沿いにある「DEMPAビル」の中、2階にカフェ、3階がカウンターバーとなっており、1階のステージで夜ごと行われる熱狂的なパフォーマンスは、アキババブル終焉を囁くメディアのネガティブな声を吹き飛ばしそうな勢いである。

 今このディアステを舞台に、何が起こっているのか? 女だてらにこのディアステの代表取締役社長を務める喪服ちゃん、同所にアキバを、そしてアイドル文化を変えてゆく可能性を感じているという音楽プロデューサーのサエキけんぞう氏、さらには、そこに新たな音楽ビジネスの可能性を見ているという、レコード会社ジェネオン・ユニバーサル社員の中西秀樹氏の3人に集まってもらい、そんなディアステの魅力を熱く語ってもらった。

中西(以下、) 僕は、ハロプロの現場を見ていて、ヲタ芸そのものには非常に慣れ親しんでいたんですが(笑)、今ハロプロの現場では、いわゆるヲタ芸はそれほど盛り上がっていない。ところが、ステージ上で全然知らない女の子がパフォーマンスしてて、それを見ながら大勢のお客さんたちがヲタ芸をやっているという光景をディアステで目にしたとき、「まだヲタ芸をやりたい人がいるんだ!」という驚きがあったんですよね。そもそもディアステは、どのように始まったんですか?

喪服ちゃん(以下、) 起こりは同人的なもので、2年前の12月に路上で知り合った5人から始まったんです。当時は、土日のアキバのホコ天が、地下アイドルやそこに群がるカメコを中心に、なんだかよくわからないカオスな盛り上がりを見せていた頃で。そんな路上の魅力にハマってしまったオタク有志の間で、飲み食いしながら騒いでも怒られない場所がアキバに欲しいね、という話が盛り上がって。で、なぜか勢いでビルの地下を実際に借りてしまって、フリースペースのような形態のお店を始め、あれよあれよという間に今に至る、という感じです(笑)。

サエキ(以下、) 喪服ちゃんはもともと、そこではバイトの立場だったんだよね。それを周りの人が面白がって社長にしちゃったっていう。

 そうですね。

 僕が最初に行ったのもそこで、アニメ系の音楽がかかっていて、普通に飲み食いしてる人が、自分の好きな曲がかかると突然立ち上がってヲタ芸を打ち始め、終わるとまた普通に席に戻るという、カオスな世界だったんですよ。めまいがするような衝撃を受けましたね(笑)。

 初期のメンバーは、ホントにどこからともなく現れてたんですよ。オタク男性に交じって、突然かわいい子が来店したりしてたので、「ウチに入りなよ」ってスカウトをして(笑)。今のDEMPAビルのお店は2号店で、営業形態は昨年9月のオープンからずっと変わってません。1階がステージで、2〜3階が飲食店。観光客の方も多いので、地下時代ほどカオスな空間ではなく(笑)、接客もちゃんとやってます。ビジネスとしても、売り上げは伸びてきていますし、そこまでアキバが下降している印象は受けてないんですよね。

アキバの"外部"にこそ今後の展開の鍵がある

 現在のディアステで働いている女の子たちのライブもたくさん拝見してるんですが、そこらへんの地下アイドルよりも、よっぽど歌もダンスもクオリティが高いんですよね。

 やっぱりディアステは、喪服ちゃんが社長になったことが運命的なんですよ。どこかの「アキバ発アイドルグループ」と違って(笑)、"ザ・芸能界"なオヤジが2〜3人で密談をしてすべてを決めている......というのではないことが、新しい文化を生む原動力になっている。僕は、ここから今の音楽業界を変えてしまうような何かが生まれてくるかも、なんてあえて大げさに言ってるんですが、例えばあのビートルズだって、最初からどこぞのオヤジがジョンとポールの首根っこをつかまえて「さあやれ」って言ってたって、絶対にああいう形にはならなかったでしょう。規模は小さいし、今はまだなんだかよくわからないカオスだけど、とにもかくにも自主的な運営がなされている、というのが素晴らしいな。

 それと喪服ちゃんは、東京芸大で学んだ、言ってみれば音楽的エリートなわけじゃないですか。だから、音楽に対して貪欲なんですよね。在野の新しい同人音楽クリエイターを日々探してきて、ディアステの女の子のプロデュースを任せたりとか。

 サエキさんにも曲をご提供いただいてますが、音楽がいいと、女の子がすごい勢いで伸びるんですよ。いい楽曲を聴かせてあげないと、本人たちが頭打ちになってしまうので、そこにはこだわってますね。

 女の子自身が発想し、そこにヲタ芸という新しい文化的要素が合わさることで、アイドルの歴史が新局面を迎えつつある。ただ僕も、ずっとこのままの限定的なノリでやっていけばいいとは思ってなくて、今後の展開としては、やっぱりジェネオンさんみたいな大企業についてもらったほうがいいとは思うんです。

 ディアステ内の2人組ユニット「ピヨラビ」がオリコンインディーズチャートで1位を取ったとき、本当に驚いたんです。あれだけのパフォーマンスができる女の子たちが、メジャーの力にまったく頼らず、しかしこれだけの数字を叩き出す。これはすごいな、と。で、ジェネオンという会社はアニメーションと相性がいいので、アキバでやっているディアステとも親和性が高い。だから、全国流通やタイアップというような僕たちができることと、彼女たちのペースや思いがリンクできるのであれば、すぐにでもお手伝いしたいんですよね。毎日の通常公演は通常公演でこなしつつ、正月の武道館なんかでそのときだけ大集結してドカンとイベントやったり、なんてことも夢のひとつではありますね。私たちのお手伝いの下、ディアステの女の子たちの存在を広く見て知ってもらって、でも、お店に行ったら相変わらずビール運んでくれる、みたいな。

 そう。儲かりそうだからって、行くとストレスたまりそうな800人収容の新しいハコを新宿に作りました、というような形では大きくならないでほしいな。今の家族的な形態を核として、しかしもっと大きな展開にしていくことが可能だと思う。というか、そうなってこそ、真に日本のアイドル業界とか音楽業界を変えることにもつながると思うし。

 私として、ライバルはブルーノートやブロードウェイのミュージカルなんです。アキバには、ちゃんと本当にクリエイティブな意味で考えながらものを作っている人がまだまだ少ないと思うんですよ。だから、違う場所にいる違うジャンルの人たちを引っぱり込んで、世界に誇る日本オリジナルのアキバ文化を一緒に盛り上げようよと啓蒙している感覚ですね。だからお店でも、毎日いちばん最初のライブは無料にして、必ずヲタ芸講座をやってるんです。ヲタ芸のやり方を説明して、「じゃあライブ始めます」みたいな。そういうふうに、「外部」をちゃんと意識してるお店や会社は、アキバにはまだあまりないと思うんですよね。

 普通は、限定的なお客さんに向けて"萌え"を提供してお金を取る、というビジネスですからね。

 一般のお客さんが増えてきている一方で、逆にアキバ的なものが、形を変えながら薄く広まっている感覚もあるんですよね。最近、アニソン系のクラブイベントがすごくはやっていて、今まで渋谷のお洒落なクラブでハウスとか聴いてた人たちが、なぜかアニソンに流れてきてるんです。そうやって、客層はこれからも確実に変わっていくと思う。それは、濃いオタクの人からすればマイナスかもしれないけど、渋谷の人から見れば、「アキバ盛り上がってるじゃん!」となるだろうし。私は、街は日々変わっていくものだと思うので、どんどん受け入れてやっていきたい。ただ、どんなに人種が変わろうとも、コミュニケーションの取り方や距離の近さ、参加型、自主運営という基本部分は、変わらずやっていきたいですね。

◉ディアステージ
東京・秋葉原にて昨年9月に誕生した、アキバ系ライブハウス兼カフェバー。現在47人の女性が勤務しており、彼女たちがアイドルとして毎日18時半、20時、21時半の3回、アニソンを中心としたステージパフォーマンスを繰り広げつつ、カフェバーの店員としても勤務している。 住所/東京都千代田区外神田3-10-9 DEMPAビル 営業/18〜23時(日~木)、18~翌5時(金・土) tel.03-5207-9181 公式サイト

0907_chika_sub.jpg

喪服ちゃん(中央)
東京都生まれ。3歳からピアノを始め、東京芸術大学音楽学部で音楽について学んだ結果、なぜかアニソンに目覚め、秋葉原に漂着。現在は、秋葉原で萌え系ライブ&バー「ディアステージ」を運営する、株式会社モエ・ジャパンの代表取締役社長。

サエキけんぞう(左)
1958年、千葉県生まれ。80年に「ハルメンズの近代体操」でデビュー後、パール兄弟を結成。モーニング娘。の「愛の種」(97年)など多くの作詞を手がけ、テレビ、ラジオ出演のほか、エッセイスト、音楽プロデューサーとして活動中。今年2月にパールネットレコードを創設し、その第1弾として、ディアステージ所属のアイドル・古川未鈴のCDをリリース。

中西秀樹(右)
1980年、神奈川県生まれ。明治学院大学卒業後、レコードメーカーへ入社。06年、ジェネオン・エンタテインメント(現ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント)に入社。アニメや音楽の宣伝担当社員として勤務する傍ら、従来のオタク体質を生かし、さまざまなメディアにも登場している。


Recommended by logly
サイゾープレミアム

2024年5月号

NEWS SOURCE

サイゾーパブリシティ