一騎当千の人材を生む教育―― 医療経済学者と考える「再現可能な先人からの教え」

[今回のゲスト]
高久玲音
一橋大学経済学研究科教授

パーソナリティ心理学を生かして組織と人材の成長を支援するコンサル企業「HRD株式会社」代表取締役・韮原祐介氏が、“人を育てる立場”にある、各界のリーダーやトップをゲストに迎え、人材育成と自己成長をテーマに語り合う新連載。今回は医療経済学の専門家である高久玲音氏と「日本の医療の課題」について本音で語り合う――。

(写真/増永彩子)

韮原祐介(以下、韮原) 今回のゲスト・高久玲音教授は、政府の社会保障関連の審議会や検討会で委員を務めた慶應義塾大学商学部の権丈善一教授のゼミで先輩後輩の関係です。文字通り机を並べて勉強していました。

高久玲音(以下、高久) 権丈先生は「ニラ(韮原氏)は頭がいいところがあるからな」と言っていましたね。あまり人を褒めない先生だったので、その言葉が印象に残っています。

韮原 まったく記憶にないですね(笑)。さて、高久教授の専門は医療経済学です。まず初めにどのようなことを研究しているのか、教えてもらえますか?

高久 医療経済学というとビジネスに近い話だと思われがちですが、私の専門は政策評価です。医療には年間45兆円もの国家予算がかかっています。これは非常に大きな規模ですが、これまでの政策決定は、医師会や保険者でもある企業の代表など利害関係者のネゴシエーションによって決められてきた面があり、必ずしもデータやエビデンスに基づいた意思決定がされてきたわけではありません。本来、医療全体がどうなっているのか国民にも伝わるように、データを提示しながら政策を決める必要があります。そうでなければ、政策に対するアカウンタビリティ(説明責任)を保つことができません。アカウンタビリティは政府に対する信頼に大きく影響しますし、これが保てないとある種の陰謀論が幅を利かせてしまいます。そうならないように、微力ながら取り組んでいるのが私の専門です。

韮原 高久教授は「コロナ禍の休校が子どもたちに与えた影響」を測定するなど、「健康に関わることなら何でもやる」ということで、とにかくデータをしっかり集めて分析するのが特徴ですよね。

高久 緊急事態宣言発令以降、1回目の休校が終わった3カ月後に、子どもたちへの調査を実施しました。感染症対策は健康を守るために行われますが、その対策自体が非常に不健康である場合もあります。「コロナ」を特別視するのではなく、「健康」全体でさまざまな対策を評価できないかという問題意識から研究を始めました。

韮原 コロナ禍の休校で、子どもたちの健康にはどのような影響がありましたか?

高久 体重の増加や、母親のメンタルヘルスの悪化といった影響が見られました。3年ほど経過した時点では、「修学旅行に行けなかった」といったケースが多く見られたため、そうした経験が子どものメンタルヘルスにどのような影響を与えるかも調べました。大人の旅行はGoToトラベルで補助されたのに、めちゃくちゃです。

韮原 メンタルヘルスはどのように測るのですか?

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