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第1特集
『月曜日のたわわ』騒動や吉野家失言はなぜ起きた?

ジェンダー教育研修も倍速視聴!? 炎上ばかりの広告業界(裏)座談会

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――近年ジェンダー表現を中心とした炎上事例が頻発する中で、広告表現をめぐっては正解も見つからないまま、さまざまな意見だけが飛び交っている。そんな炎上の背景にあるとおぼしき男性中心主義の構造を探るため、広告プロジェクト関係者による“業界のリアル”を語る座談会を開催した。

[座談会参加者]

A …大手広告代理店α社勤務(30代・男性)
B …大手広告代理店β社勤務(20代・女性)
C …広告関連の映像ディレクター(30代・男性)

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『月曜日のたわわ』1巻(講談社/著:比村奇石)

2022年4月、マンガ『月曜日のたわわ』(講談社)の広告として日本経済新聞に巨乳の女子高生のイラストが掲載されて炎上騒ぎ【CASE:1】となったことは記憶に新しい。また、同月には吉野家の常務取締役(当時)が大学の社会人向けマーケティング講座で「生娘をシャブ漬け戦略」と発言して問題【CASE:2】となったように、近年は主にジェンダー表現をめぐって広告・マーケティング関連の炎上が後を絶たない。この背景には、広告・マーケティング業界に依然として男性中心主義の風土や構造があるといった指摘も上がっている。果たして、広告炎上の原因は、同主義の象徴的存在ともいえるおじさんにあるのか? 大手広告代理店など広告業界に身を置く若手3人に、“広告業界のリアル”を聞いた。


【炎上事件簿 CASE1】
『月曜日のたわわ』騒動

2022年4月4日月曜日、日本経済新聞の朝刊に講談社のマンガ『月曜日のたわわ』の全面広告が掲載。その内容は、セーラー服を着た巨乳の女子高生が描かれているものだった。これを受けて、ネット上を中心に議論が噴出。大手新聞への掲載だったことや未成年少女に対する性的な視線の肯定だとして強い非難の声が上がった。またその後、国連女性機関が日経新聞の経営幹部に対して抗議書面を送っていたことが報じられ、その是非をめぐっても紛糾した。

A 「炎上案件を含めて、広告業界の“おじさん事情”について語ってくれ」ということで集められたわけだけど、うちはやはり男女比でいうと男性が多くて、その分おじさんも多い印象です。というのも、若い世代はすぐに辞めてしまうけど上の世代はなかなか辞めないので、どうしても社内にはおじさんが多くなってしまう。

B 新卒の時点では男女比も半々くらいですが、30〜40代くらいになると仕事量や時間の面でハードなこともあって、「この働き方をずっと続けられない」と辞めていく女性社員は多いですね。結果として、上層部はほぼ男性で構成されています。先輩の話を聞くと、管理職以上になると現場とは見える景色が違っていて、重役会議などは出席者のほぼ9割が中年男性。そこでは仲良しボーイズクラブの感覚で話が進んでいくこともあるようです。

A そもそも昔は採用比率的に男性が多かったので、年配女性の絶対数も少ない。もちろん優秀な女性社員の役員登用も行っているけど、「うちは女性役員を起用しました!」って対外的な打ち出し方をしてる上層部のおじさんたちを見るとセンスないなって思う。

【炎上事件簿 CASE2】
吉野家「生娘シャブ漬け」発言

2022年4月に、早稲田大学の社会人向け講座「デジタル時代のマーケティング総合講座」の講師をしていた吉野家ホールディングスの伊東正明常務取締役(当時)が、若年女性を対象としたマーケティング施策について「生娘をシャブ漬け戦略」と表現。後に受講者によってこの発言を批判するSNS投稿がなされ、女性蔑視発言として広くメディアで取り沙汰された。その後、伊東氏は講座担当を降ろされ、同社の執行役員及び取締役からも解任された。

B 女性の役員にしても、“女だてら”というか男性性を内面化してしまっている人も少なくないと思います。

C クリエイティブの制作現場でいうと、やはり女性の絶対数は少ないですね。プロジェクトを取り仕切るクリエイティブ・ディレクターの多くは40代以上の男性ですし、少なくとも僕は女性のクリエイティブ・ディレクターとお会いしたことはありません。ただ、代理店のチームやクライアントの広告担当含めて、現場には必ず何人かの女性はいる印象です。女性がまったくいないということはないかな。

B 実際に仕事をするチームの男女比率は半々だったり、広告業界自体がリベラルな雰囲気もあって、あからさまな女性やジェンダー差別というのはない。実際にオープンリー・ゲイとして働いている代理店の社員もいますし。

A 一緒に仕事をするメイクさんやコレオグラファーなど、クリエイターの中にはLGBTQの方も多くいらっしゃいますからね。ただ、老若男女にかかわらずジェンダーやLGBTQへの認識が古くて、無知から来るマイクロアグレッションのようなものはちょこちょこある。そういう一昔前の感覚が残っているから、東京オリンピック開会式の演出を指揮していたクリエイティブ・ディレクターの佐々木宏さんがタレントを豚に例えたアイデアを出して炎上するようなこと【CASE:3】も起こったんだと思います。

C 正直、クリエイティブの人間としては、攻めた表現を考える中でクローズドな場所で不謹慎なアイデアを冗談交じりに話すこともあるんですよ。佐々木さんの事案はグループLINEの内容が週刊誌に告発されたわけですけど……。

【炎上事件簿 CASE3】
東京五輪クリエイティブ・ディレクター佐々木宏 失言騒動

2021年3月、東京オリンピック・パラリンピックの開閉会式の演出を統括していた電通出身のクリエイティブ・ディレクター佐々木宏氏がタレント渡辺直美氏の容姿を侮辱するような演出案を演出チームのグループLINEに送っていたことが、「文春オンライン」で報じられた。その結果、佐々木氏は大会組織委員会を通じて謝罪文を発表し、同職を辞任。謝罪文の中には、謝罪の言葉とともに「内輪でのやり取りのつもりでした」といった言葉も並んだ。

A うちの場合、問題を起こした人に対して以前に比べてしっかりと懲罰が与えられるようになっていたり、SOGI(性的指向/性自認)に取り組む社内組織が立ち上がって定期的に情報発信をしたりと、ジェンダーに関する対応や啓蒙活動といった面は重視されるようになっていると思います。

B Netflixドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』の第1話で、斎藤工演じる広告代理店勤務の主人公が、打ち合わせ中に出席者の男性が女性の容姿に関する発言をして、ひとりだけ出席している女性社員が困惑する中、たしなめつつもなんとなく笑ってその場をやり過ごすシーンがあります。あのシーンは、広告代理店の打ち合わせ風景としてすごくリアリティがありました。

最近でも、半年くらい前に某大手広告代理店の社内で大きなセクハラ騒ぎがあったって話を聞きましたね。

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