――ダンスフロアからの新たな刺客。DARUMAとJOMMYの画期的音楽探究。
(写真/岩澤高雄[The VOICE])
DJ DARUMA(以下、D)渡辺志保さんが司会を務める番組「HIP HOP DNA」にRYUZOくんがゲストで出ている回が、JOMMYと「面白い!」と話していたこともあって、今回は満を持してRYUZOくんに来てもらいました。
JOMMY(以下、J) 僕らの世代でヒップホップをしっかりビジネスにして、かつ誰にも真似できない形でブレずにやってる。ホント尊敬する。
D ストリートで培ってきたスキルを、大人になってセンス良く見せる。めちゃくちゃフレッシュだよね。
RYUZO(以下、R) ホンマこれしかできへんってのが正直なところで、音楽しなくても生き様でヒップホップ見せたるって(笑)。それがうまくいっただけっていうね。
J RYUZOくん、DABO兄、DJ GEORGE、DARUMAくんと僕で『#_O_M_G_』(以下、OMG)ってイベントを(2014年から)始めて、その頃から僕たちの感覚にはないものを作るのが上手だな、って印象が強かったもんね。
R 15(歳)からクラブに行ってるけど、この10年くらい「水商売の人や音楽にリスペクトがない人が(クラブ経営で)儲けてる」ことがなんか違うなって思ってて。カルチャーを発信する場所なのにキャバクラちゃうし、そもそも客が音楽を聴きに行ってない現状に。DJも「何年その曲かけてんねん!」って感じやし、ヒップホップが好きな人間が新しい遊び場を作らんと(カルチャーが)死んでしまうって思ったし、逆に本当にヒップホップのゲームに関わった人間がやってるクラブが少ないなら、それが俺らの強みやし。
D それでオープンしたのがジェントルマンズクラブ「MADAM WOO TOKYO」(※お客がチップを購入し、GO GOダンサーと遊ぶスタイル)と。
R 正直いちかばちかで、遊び方を知ってる人間しか遊べないかもしれないけど、日本で誰も作ったことのない空間を作る面白さはあった。アメリカのヒップホップの遊び方の基本だけど、日本でもヒップホップが根付いてきたからわかってもらえる自信もあったし。DJがかける曲にも相当こだわってるし、金儲けもしたいけど、クリエイトしていきたい気持ちも強かった。
J 音楽でいうと「BLOODY ANGLE」もそうだよね。
R ソウルやファンク、ジャズが下敷きにあって、ブラックミュージックの延長線上にあるヒップホップが好きだったんだけど、トラップが出てきて新しい形のヒップホップが増えてきて。ヒップホップはロックみたいにジャンルが分かれてないから、ある時期を境に自分の好きだったヒップホップは様変わりしちゃったわけですよ。もう俺が昔、ANARCHYをやってた頃とは違うんやなあって。もちろん、かっこいいヤツはいますし、新譜もチェックしてますよ。でも、自分の好きな音楽をかけられて、かつその感覚を共有できる知り合いと一緒にレコードバーやろうか、って話になって。
D さらに「DOMICILE TOKYO」(※ニューヨークのドメスティックブランドを集めたセレクトショップ)に「翠月 -MITSUKI-」(※若年層やファッション関係者が集う、ハウスやディスコのパーティが行われている音楽酒場)でしょ。
J OMGのときに、音楽、カルチャー、ファッションを発信できる場所を作っていきたいって構想、話してたよね。
R ただ、俺が全部ディレクションしてるわけではないんですよ。イケてるヤツを見つけて、その場所を与える。そこで3カ月くらい時間をかけて、「絶対にやってはいけない」ことを徹底的に叩き込む。それを糧に従業員とグルーヴを作って経営してほしい。自分がやるのもいいけど、仲間や現場に任せるのも大事なんで。たまに登場する怖いおっさん的な。
D ラッパーとしての活動は?
R 去年の初めくらいにライブで沖縄行って、いつもの調子で前乗りして遊んで、ライブの前はもうヘロヘロだったことがあって。その時、CHOUJIってラッパーが俺の前にライブをやったんやけど、ホンマめちゃくちゃヤバかった。人生かけてるんですよ、ヒップホップに、ラップすることに。それを見て「あかん、ヒップホップの神様に怒られるわ」って思って。今でもリリースできる曲は何曲かあるけど、音楽やるなら音楽だけに集中する年を作らないとダメだなって思わされましたもん。
J 東京でのビジネスが安定したら、大阪にもウーをオープンさせたもんね。
D それでお子さんも授かって、子育てをするパパでもある。
R かわいすぎて仕事とかよくなってしまう……一方で、それだと子どものためにもならないから、やるべきことはやる。「子どもがいたからやりたいこともできなかった」なんて言い訳はしたくないからね。東京は子育てをメインに、子どもが寝たら深夜に店に行って、大阪は仕事に集中、みたいな1週間交代で東京と大阪を行き来してます。
D 10月から『ラップスタア誕生』の新シーズンが始まったけど、今のヒップホップシーンについては?
R うらやましくてしょうがない! こうなるってわかってたら、俺もラップ続けてたよ(笑)。でも、いないほうがよかったんちゃうかなとも思う。「俺らの時代はな」とか言うだけで、何もせず“ずっといるおっさん”にはなりたくなかったし。ただ、もし俺がいま20歳だったら、頭ピンクで顔面タトゥーだらけにして一番目立ってやりたいと思う。シックでメンヘラな曲、バンバン歌ってやりたい。
J RYUZO節は聴きたいけどねー。年相応のブルースもあるわけだし。
R 今の子たちが進化してるのは肌で感じるんですよ。日本のヒップホップシーンをデカくした『高校生RAP選手権』とか『ラップスタア』もそうなんだけど、その世代とようやく話すようになってわかったというかね。YZERR(BAD HOP)から『ラップスタア』のときに言われたんですよ、「まったく絡みがなかったですね」って。BAD HOPは売れてるし、かっこええなと思ってたけど、売れてるから近づくとか、そういう媚びた態度に思われたくなかった、ってのもある。ただ彼と話したら、ものの考え方やヒップホップに対する展望とか、口だけじゃなく本当に形にしてるんですよ。YZERRはヤバい、ごめん、ちょっとナメてた(笑)。
J 今回の『ラップスタア』もすごいことになってるもんね。
R それもYZERRのおかげ。今シーズンの審査員は、俺が誘っても絶対に無理だったメンツ。YZERRが自分から話をつけてきてくれたからね。これまで『ラップスタア』は「俺の番組や!」って気持ちもあったけど、ヒップホップの未来のためになるなら、YZERRにそのまま渡していいと思ってるくらい。
J そういう若い世代へのフックアップもさすがだし、RYUZOくんの「今、何をすべきか?」って考えを、このスピード感で形にするのは、本当に素晴らしい。同じシーンにいた人たちから映る、今のRYUZOくんのB・ボーイビジネスは脅威だと思うよ。
(写真/岩澤高雄[The VOICE])
R 時々思うよね、「みんなここから何を見せてくれるんだろう、同世代」って。
D 語弊があるかもだけど、ヒップホップって若いときになまじっか売れてしまうのも危険かな、って感じることもあって。「ライブで地方に遊びに行ける!」「曲を出してサブスクで稼げる!」、でも35歳を迎えたとき、思いきり突き抜けてなく、何も準備できてなかったら危ないぞーっていう。
R その危うさや破滅感が若いときの面白さでもあり、それに心打たれることもあるけどね。
D 僕とJOMMYはダンサーから始まって、20代でいろんな仕事、遊びを楽しみながらも、裏でプランを立てていたというか、少しずつ人生の準備はしてた。だから今でもこの業界で仕事ができてるのかな、って思う部分はある。
R 大人になったら自分が身を置いていたシーンに還元する気持ちは持ってもらいたいよね。でも今の子らは大丈夫! 過去のパイセンの失敗を見て今のシーンをこれだけデカくしてるし、俺らより数倍やり手です(笑)。
J いやあ、話が尽きない。OMG時代を思い出すね。
R あの頃はイベントよりも、イベント前の夜メシがピークタイムだったからね。今は酒も飲まなくなったし、女の子とのしゃべり方も忘れた。こないだなんかクラブで女の子と話してたら、一緒にいた連れから「RYUZOさん、それ自分の経歴話してるだけで、普通にプレゼンですよ」って言われたくらいだから。
D&J (笑)。
(構成/佐藤公郎)
(写真/岩澤高雄[The VOICE])
RYUZO(りゅーぞー)
1977年、京都府生まれのラッパー/プロデューサー/実業家。ヒップホップで培ったノウハウを武器に、アーティストのプロデュースをはじめ、ジェントルマンズ・クラブ「MADAM WOO TOKYO」、レコードバー「BLOODY ANGLE」、コンセプトショップ「DOMICILE TOKYO」、音楽酒場「翠月 -MITSUKI-」などの経営も担う。
Twitter〈@ryuzorrated〉
Instagram〈@ryuzorrated〉
JOMMY(じょみー)
10代からストリートダンスを始め、東京のダンスシーン/クラブミュージックシーンを牽引する存在。〈DJ DARUMA & JOMMY〉として、2019年からスタートした新世代ハウス・パーティ『EDGE HOUSE』のレジデントも務める。Instagram〈jommytokio〉
DJ DARUMA(DJだるま)
ヒップホップの魂を持って世界各国のダンスフロアをロックするDJ/プロデューサー。DJ MAARとのユニット〈DEXPISTOLS〉として、EXILE HIROの呼びかけによって集結したユニット〈PKCZ®〉のメンバーとしても活躍。Instagram〈djdaruma〉