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更科修一郎の「批評なんてやめときな?」【66】

高まる老害世代への不満を見て考える……幽霊、テレビで蠱毒となる芸人たち。

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――ゼロ年代とジェノサイズの後に残ったのは、不愉快な荒野だった?生きながら葬られた〈元〉批評家が、墓の下から現代文化と批評界隈を覗き込む〈時代観察記〉

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自己啓発本として期待するとブチ切れ、そうでなければ肩の荷が軽くなる本。あのキンコン西野ですら頭が上がらない遊撃の思想。

 今回の特集はNetflixとのことで、『ベスト・キッド』続編の『コブラ会』は絶賛されているが、80年代B級洋画のチープな記憶を掘り起こしながら連続ドラマを観るのは、「映画秘宝」系のボンクラ以外には案外、敷居が高いよな、と思っていたら、その「映画秘宝」現・編集長が炎上していた。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」での発言内容をTwitterで批判した一般人に公式アカウントから恫喝DMを送りつけたのだ。以前、「映画秘宝」編集部のアニメ嫌いから「オトナアニメ」が枝分かれした経緯を書いたが、映画マニアの排他的でホモソーシャルな体質が剥き出しな雑誌としては「映画芸術」と双璧なので、さもありなんとは思う。サブカル系の文化人がエゴサーチから一般人を攻撃するケースは、2018年に新宿の喫茶店・ベルクの炎上事件があったし、映画サブカル界隈のパワハラ事案は松江哲明の『童貞。をプロデュース』事件や、アップリンクやラピュタ阿佐ヶ谷の雇用問題で日常茶飯事だが、彼らの倫理観はそうそう変わらない。正しいかどうかはさておき、杉作J太郎や宮本浩次のように、時代意識のアップデートに意欲的な中年男性は成功による安定を信じていないのだろうが、普通は執着する。

 Netflixへの食い足りなさもそこにある。マニアな中年男性文化圏を意識しすぎているのか、最初に話題となった日本オリジナル作品が『DEVILMAN crybaby』で、次は『全裸監督』。オリジナルアニメ部門のプロデューサーが『攻殻機動隊』シリーズの元・脚本家だからか、どうにも古臭いセンスのSF系企画が多く、これもかなり辛い。知人のSF系編集者は「アニメ化のチャンスですよ!」と息巻いていたが、勘弁してくれ。

 結局、仕事も忙しいから、年末年始は地上波を流し見するだけだった。NHKのスペシャルドラマ『ノースライト』は、横山秀夫原作の前作『64』と同じく、抑制が効いていて良かったし、色物ホラー枠の『岸辺露伴は動かない』も『怪奇大作戦』リメイクやリブートと比べればよくできている。あとはTBSの『タイガー&ドラゴン』『MIU404』『アンナチュラル』の一挙再放送をダラダラと。『俺の家の話』は若干詰め込み過ぎの序盤だが『うぬぼれ刑事』よりは面白い。地上波ドラマはストリーミング配信という対立軸が生まれたことで、ネジを巻き直した印象がある。

 バラエティで面白かったのは、『あちこちオードリー』(テレ東)の実質新春特番『笑うラストフレーズ!』だった。『さんまのお笑い向上委員会』(フジ)や『有田Pおもてなす』(NHK)のように大御所芸人やゲストを接待する体裁の若手ネタ見せ番組だが、「オードリー向上委員会」と称して、司会の若林が苦手なタイプの架空芸能人をインパルス板倉やアンガールズ田中が演じ、無理難題をふっかけられる偽トーク番組パートが入ることで、視聴者が「若林はさんまや有田にはなれないな」と安心する、佐久間宣行Pらしい仕掛けだった。本来の『あちこちオードリー』も「若手芸人たちの業界処世術」の答え合わせ的なトーク番組だが、その方向性で先行番組を批評する面白い実験だった。

 稀に若いひとたちと話すと、テレビの若手芸人たちの人間関係がそのまま彼らのロールモデルになっていて、そのため、別に興味もないのに観ている者もいる。知人の小説家は「同時代的に正しい物語表現の答え合わせのため、観たくもない野木亜紀子作品を渋々観ている」と言っていたが、確かに旧世代の野島伸司や北川悦吏子は意識の高いドラマ好きから鼻で笑われ、『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(日テレ)はオタク描写を「正しくない」と執拗にdisられている。時代意識のアップデートが強迫観念となるのは、どちらもご愁傷さまとしか言いようがない。

 元は色物だったはずのカズレーザーやEXIT兼近の優等生発言がネットニュースで持ち上げられる半面、たけしやさんま、石橋貴明や松本人志、太田光などテレビの大御所たちを老害と貶す記事が多くなった。『M-1グランプリ』での「マヂカルラブリーは漫才なのか?」論争といい、「お笑い第7世代」ブームと大御所たちへの反感がいよいよ極まっているのだろう。もっとも、老害世代でもテレビに出ない/出られない芸人である、オール巨人や中田カウスはあっけらかんとマヂラブに理解を示していた。彼らは「舞台で笑わせるための技術」でしか見ないから、テレビの中の人間関係なんて勘定に入れる必要がないのだ。

更科修一郎(さらしな・しゅういちろう)
コラムニスト & 〈 元 〉批評家。90年代から批評家として活動。2009年、『批評のジェノサイズ』(共著/弊社)刊行後、休業。15年に活動再開。個人サイトが自然消滅してからウェブ上の窓口がないと文句を言われているが、特に記事を書かなくても名刺代わりに使えるサービスはないものか。

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