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「マル激 TALK ON DEMAND」【145】

【神保哲生×宮台真司】ゴーン前会長逮捕から考える社会の劣化と処方箋

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――ビデオジャーナリストと社会学者が紡ぐ、ネットの新境地

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『ゴーン・ショック! 事件の背後にある国家戦略と世界経済の行方』(徳間書店)

 東京地検特捜部によるゴーン日産前会長の逮捕、そして長きにわたる勾留は、海外から強い批判を受けている。ただ、この背景にある、フランスのマクロン大統領とアメリカのトランプ大統領との強い緊張関係も見過ごせない――。今回は特別編として、昨年暮れに行われた公開収録をベースに、日本が抱える病巣への処方箋を議論する。

神保 恒例になりました、年末マル激ライブ。手元には2018年に放送した全番組のリストがありますが、いつも最初に選んだ話題が最後まで続くので、この資料はほとんど使ったことがありません。

宮台 おそらくどの問題から入っても、切り口が同じなので、それを話すだけでほかのことについても話せてしまう、ということが大きいのではと。

神保 問題の根っこは一緒だということですね。最近のニュースで非常に関心を持ったのは、日産自動車のカルロス・ゴーン前会長が逮捕された問題です。2つの金融商品取引法違反事件で30日、特別背任で再逮捕されて10日と(身柄の拘束は)40日を超えます。(2018年末時点)

 欧米の基準では、勾留が5日を超えて得られた自白は任意性に疑問が生じるため、法廷では有効な証拠と見做されないというのが常識なので、特捜部の旧態依然たる人質司法には外国人記者も一様に驚いています。

宮台 本来は憲法違反です。自白を強要する拷問や長期勾留は許されないのですが、日本ではこれが問題にならない。5月にジュネーブで開かれた国連の拷問禁止委員会で、モーリシャスの委員に「日本は自白に頼りすぎで、これは中世の名残である」と指摘され、上田(秀明)さんという人権人道大使が「シャラップ」と叫んだことが話題になりました。

神保 ゴーンさんの事件では、逮捕直後はお約束の、被疑者を真っ黒に塗りたくるリークが盛んに行われ、メディアもそれをそのまま報じていました。ところが、長期勾留に対する外国からの批判が高まり、特捜部も事件の決定的な証拠を握っているわけではないことがわかってきたため、2週目くらいから各局ともやや保険をかけるような報道路線に変え、海外メディアらの主張や批判的な論調も報じるようになってきました。しかし、それでもまだ「国連シャラップ」の件は、ほとんど報道されていません。

 この問題が深刻なのは、日本の記者クラブメディア自体が、完全に司法制度の一部に組み込まれているということです。司法記者クラブでリークをもらっている新聞、テレビ、通信社は、通常の事件報道では、明らかにリークをもらえないメディアよりも有利な立場にいます。つまり利害関係者だから、司法に都合の悪いことは報じない。たまたまゴーンさんという超大物で、しかも国際的な存在だから、司法の問題点もようやく報道されていますが、何を今さらという話です。

宮台 ただ、僕は特捜検察の自爆を喜んでいます。つまり司法に限らず、こういう機会に外圧をうまく利用しないと、日本の制度は変わらない。

神保 18年の後半になって、海外から見ると、期せずして日本のダークシークレットが表に出てきました。しかも、2つもです。それが人質司法と呼ばれる刑事司法の問題と、日本で働く外国人の労働環境があまりにも劣悪な状態に置かれているということの2つです。

宮台 このような状況では、(外国人労働者は)もういなくなるに決まっているのに。

神保 これまで、日本のこういう面は、海外ではあまり知られていませんでした。

 さて、ゴーンさんの件ですが、よくわからない事案で逮捕してしまい、勾留が長いということで司法の問題に光が当たりました。

 しかし、僕は東京地検特捜部が、こんな大きな、しかも容疑がはっきりとしない事件で、日産を倒産から救い、今やルノーのCEOも兼ねるカルロス・ゴーンさんをいきなり引っ張るだけの力量も覚悟もないと思います。

 最近の首相官邸との力関係を考えても、検察の一存でこんなことができるわけがない。

 だとすると、安倍政権がこの逮捕に「ゴーサイン」を出したことになり、がぜん政治的な事件の色彩を帯びてくることになると見ています。

宮台 外交問題になることが必然なので、少なくともそのことについて首相官邸がどう考えるのか、という打診は必ずしていますね。

神保 原発事業の巨額の損失を隠蔽するために、はるかに大規模な粉飾を繰り返していた東芝には、証券取引等監視委員会があれだけ尻を叩いても、1ミリも動かなかった東京地検が、このようなよくわからないことで動いているのは不可思議です。

宮台 「有価証券報告書虚偽記載」といいますが、そもそもこれは日産が書いているもので、不実記載があるなら、その責任はひとえに日産にあります。しかし、ゴーンさんを勾留しているのは明らかに狙い撃ちの国策捜査だ、という批判がすでに始まっていたので、特捜検察は、いわゆる背任の容疑で起訴する以外に勝ち目がまったくなかった。この筋書きは、ずっと前から決まっていたということです。

神保 そして考えられるのは、やはりこの事件の背景にはアメリカの存在があったのではないかとの分析をする人がいます。トランプの意向、もしくは忖度があったのではないか、ということです。ヨーロッパとアメリカの対立が深まっている中で、日本がアメリカに対して忖度しているのではと。

宮台 権力構造から言うと、「アメリカのケツを舐める日本の官僚のケツを舐める首相官邸のケツを舐める下っ端官僚のケツを舐めるマスコミのケツを舐める国民」という連鎖がある。そのひとつの表れが、神保さんがこれからおっしゃることですね。

カルロス・ゴーンの逮捕は米国の利害関係に起因するのか?

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2019年6月号