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「ファンキー・ホモ・サピエンス」【64】

【スティーヴ・アオキ】EDM教祖は極左活動家! 越境しまくるアオキさん

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『Neon Future Ⅲ』

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スティーヴ・アオキ(販売元:ソニー・ミュージック)

EDMの定型を離れない曲もあるが、フィルインの手数が異様に多いドラムパターンで特徴づけられたメロディアスな佳曲が多い。件のBTS参加以外では、リル・ヨッティ参加の「Pretender」が光る。しかし、なんといってもダディ・ヤンキーとプレイ・ン・スキルズが参加したラテンEDM「Azukita」が強力!

 究極のブサかわ!――〈デヴォン青木〉を検索したら、ひどい表現が目に飛び込んできた。だが、かつてアオキといえば間違いなくデヴォンだった。今は亡き「我が姉」中尊寺ゆつこが取り上げたのもデヴォンだし、我々の世代(とは?)はジョン・シングルトンが監督した映画『ワイルド・スピードX2』で、ラッパーのリュダクリスのガールフレンド役で出演したことも忘れられないはずだ。

 そんなデヴォンの名を検索したのは、彼女の兄であるスティーヴ・アオキの曲ゆえ。つまり、「Waste It On Me」by Steve Aoki feat. BTSである。正確には防弾少年団のメンバー7人中3人しか参加していない――ジョングク、RM、ジミン――が、それをあっさり「feat. BTS」と表記してしまうアメリカンな潔さがバンタンらしい。だが、今や「K-POP界でもっとも人気があるグループ」ではなく「世界でもっとも人気があるグループ」となったBTSは、さすがに忙しい。「Waste It On Me」を共に作っても、ビデオ撮影に参加する余裕はなかったようだ。

 そのマイナスを華麗にもプラスに転じてしまったのが、同曲のビデオである。ストーリー上の主人公はセレブリティたちが集うバーのウェイター。韓国系アメリカ人コメディアンのケン・チョンが演じている時点で最高だ。中年芸人の彼が、BTSの美青年ジョングクの歌を口パク! そのケン・チョンが密かに想いを寄せる相手がデヴォン青木、彼女のデート相手が『13の理由』のロス・バトラー。ウェイター仲間には『シリコンバレー』のジミー・O・ヤンがいる。RZAの映画『アイアン・フィスト』のヒロイン、ジェイミー・チャンも出てるし、監督はリンキン・パークの頭脳、ジョゼフ・ハーン。これはもうひとつの『クレイジー・リッチ!』なのである。アジア系が集う祭典という意味で。こんな祭典を主催したEDMプロデューサー/DJ、スティーヴ・アオキとは何者だろう?

 Steven Hiroyuki Aoki(スティーヴン・ヒロユキ・エィオゥキー)。1977年11月30日、フロリダ州マイアミ生まれだが、育ちはカリフォルニア州南部のオレンジ郡ニューポートビーチ市。父はもちろんロッキー青木だ。アマチュアレスリング選手から転じて実業家となり、和食レストラン「BENIHANA」を全米で大成功させた青木廣彰。『ロッキーのニューヨーク商法 こうして俺は100億稼いだ』(徳間書店)などの絶対に読みたくない本を書いた男でもある。

 その第3子スティーヴは、地元の高校でバドミントンの選手だったという。その優れた身体能力はトレードマーク的なガニ股ムーブ「アオキ・ジャンプ」からも窺えるが、ここではむしろ内面に注目したい。UCSB(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)に進んだ彼が専攻したのは社会学とフェミニズム・スタディーズ。さらには革命的・反帝国主義同盟(Revolutionary Anti-Imperialist League)のサンタバーバラ支部を設立し、南アフリカの革命家ビコの名前を冠した学生寮で音楽活動……予想外の左翼ぶりである。

 尊敬するブルース・リーにインスパイアされたカンフー/武侠用語である點脈(経脈を遮断し、気の循環を止めること)を冠した〈Dim Mak Records〉を設立したのは96年……19歳かい! 別レーベルでハードコア系バンドのメンバーだったこともあるが、自らのディム・マック・レコーズではEDMやエレクトロ・ハウスをリリースしていく。ミックス・アルバムを出し、リミックスを手がけ……。

 そんな彼がブレイクしたのは2010年代。年間250カ所ほど回るツアーで披露するエナジー溢れるステージングが評価され、全米の大学生に強く支持されるようになったのだ。満を持して自己名義のオリジナル・アルバムを出したのは12年。以来、コンスタントに作品をリリースし、件の「Waste It On Me」が入った最新作『Neon Future III』が5枚目のアルバムとなる。

 個人的には、ミーゴスやリル・ウージー・ヴァートやグッチ・メインやアイラヴマコーネンをフィーチャーした前作のほうが好みだが、それでも、EDMとヒップホップをつなぎ、黒人YouTuberたちに「My n***a」と呼ばれるほどに親しまれているアジア系アメリカ人は……スティーヴ・アオキ以外、そうそういないのではなかろうか。

まるや・きゅうべえ
サイト『bmr』編集長。12月29日(土)の統計学イベント【Rethink World:マイノリティ・リポート】第4回も「アジアエディション」! ツイッター〈@QB_MARUYA

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