サイゾーpremium  > 連載  > 友清哲のビールの怪人【3】/映画の世界からビール道へ

――すべてのビール党に捧ぐ、読むほどに酩酊する個性豊かな紳士録。

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江東運転免許試験場からほど近いガハハビールの営業時間は11:00~22:00。月曜、第1・3・5木曜定休。馬場哲生さん(42)がダイナミックな笑顔で迎えてくれる。

 地下鉄・東陽町の駅からほど近い団地の中。帰宅途中の主婦や子どもたちとすれ違いながら、目指す店舗へ歩いて行くと、早くも店内から快活な笑い声が聞こえてきた。江東区で初めてビールの醸造免許を取得したガハハビールは、そんな変わった場所にある。

 オーナーの馬場哲生さんは、長らく映画監督を目指して映像の世界に身を置いた後、数年前に調理師に転身した変わり種。居酒屋やマイクロブルワリーで経験を積み、このガハハビールのオープンにこぎ着けたのは約1年前のことだ。

 それにしても、団地の中にすっぽり収まるブルワリーというのは珍しいのではないか。

「とにかく坪単価が安かったし、なにより(テナントの)更新料がかからないのが魅力で、すぐにこの場所に決めました。自分で商売を始めるなら、ランニングコストを抑えることが重要だと思っていたので」

 実際問題として、こうしたコストは価格に跳ね返る。クラフトビールがさらに多くの人に飲まれるようになるには、「1パイント=1000円で売ってるようではダメ」と語る馬場さんの哲学通り、ガハハビールではすっきりした味わいで人気の「ウチらのペール」が550円から、立地を名に冠する「Danchiエール」が600円からと、リーズナブルな価格帯に抑えられている。酒場に付き物のチャージ料もなし。こうしたスタンスは、実は、映画製作を手がけていた頃の経験に基づいているのだという。

「僕が映画の世界で成功できなかったのは、どこかとがった、こまっしゃくれた作品ばかり撮っていたから。どんなに斬新なものを創ったところで、観てもらえなければ自己満足にすぎません。ビールもまったく同じですよね」

 つまり、クラフトビールで勝負するなら、誰もが気軽に手を伸ばせるところまで敷居を下げることが不可欠。ただでさえ、ラガービールに慣れた日本人にとって、エールビールを中心とするクラフトビールは、“こまっしゃくれた”存在なのだ。

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