サイゾーpremium  > 連載  > 更科修一郎の「批評なんてやめときな?」  > 更科修一郎の「批評なんてやめときな?」【31】/幽霊、文化の墓泥棒が集う映画館で。
連載
更科修一郎の「批評なんてやめときな?」【31】

大型シネコンとミニシアターの共存――幽霊、文化の墓泥棒が集う映画館で。

+お気に入りに追加

――ゼロ年代とジェノサイズの後に残ったのは、不愉快な荒野だった?生きながら葬られた〈元〉批評家が、墓の下から現代文化と批評界隈を覗き込む〈時代観察記〉

1712_sarashina_200.jpg
映画興行を効率化したシネコンだが、人の欲望は多種多彩なので、非効率な選択肢も効率化していく必要がある。

 今回の本誌特集は映画だが、気がつけば大型シネコンも飽和状態で、4DXやらIMAXやら、新しい視覚効果技術を競っている。もっとも、技術の進歩も考えもので、専用の高価な映写システムを導入しなくてはならないから、大型シネコンはチキンレース状態になっている。だからこそ特権性が生じるのだろうが、個人的にはそこまで必要かと思う。3Dのように何度導入しても定着しない技術もあるのだから。正直、映画に於ける3Dは、ディズニーランドのアトラクション扱いだった短編映画『キャプテンEO』くらいが限界で、より個人的な娯楽――ゲームでのVR技術に回収されていくような気がする。

 立川にシネマシティという中規模独立系のシネコンがあるが、このシネコンの売りは極上爆音上映&極上音響上映だ。もともと、吉祥寺にあったバウスシアターという独立系映画館が始めた爆音上映だが、その効果は『マッドマックス 怒りのデスロード』のようなロックなバイオレンス映画や、『プリンス/サイン・オブ・ザ・タイムズ』のような音楽ライブ映画で最大限に発揮される。もともと、シネマシティはTHXという厳しい映画音響規格で認定されていることを売りにしていたが、その方向性をさらに推し進め、専門家によるウーファー増設などで音響効果を最大限に高めている。もっとも、規格自体は厳密だが、専用の機器は必要ないため、ドルビーステレオ導入後――『時計じかけのオレンジ』以降の著名な作品なら、過去のアーカイブを生かせる利点もある。言い換えると、特権性のある名画座になり、視覚効果技術よりは疲労感も少ないので、気に入った映画を何度も観るリピート客も多くなる。さすがに『ガールズ&パンツァー 劇場版』の異様なロングラン上映は『怒りのデスロード』の「V8を讃えよ」以上に宗教めいていて怖いが。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2025年11月号

「異形と異端」が 動かすニッポン論

「異形と異端」が 動かすニッポン論
    • なぜ、我々は横浜流星に惹きつけられるのか?
    • なぜ、『べらぼう』は異形の大河なのか?
    • [特別対談]立花孝志×上念司
    • 参政党は叩かれて強くなる!
    • [対談]安田淳一監督×阪元裕吾監督
    • “因習村”源流としての金田一
    • 日本一早いプロ野球順位予想

NEWS SOURCE

インタビュー

    • 【かとうれいこ】27年ぶりの写真集発売、レジェンドがグラビア復帰を決断した理由
    • 【Small Circle of Friends】切なさと力強さ。正しさと優しさ。アズマとサツキの絶妙ブレンド。
    • 【日爪ノブキ】仏で国家最優秀職人章に認定された男が推し進める「人類帽子計画」
    • 俳優生活11年、木竜麻生の現在地
    • 超大物アーティストが愛用する シルバージュエリーブランド──「サーティーンデザインズ」代表インタビュー

連載

    • 【マルサの女】橘 和奈
    • 【笹 公人×江森康之】念力事報
    • 【丸屋九兵衛】バンギン・ホモ・サピエンス
    • 【ドクター苫米地】僕たちは洗脳されてるんですか?
    • 【井川意高】天上夜想曲
    • 【神保哲生×宮台真司】マル激 TALK ON DEMAND
    • 【萱野稔人】超・人間学
    • 【韮原祐介】匠たちの育成哲学
    • 【辛酸なめ子】佳子様偏愛採取録
    • GROOVE SEQUENCE──NJSとLDHの親密な関係値
    • 【特別企画3】マッチングアプリが変えた恋愛の価値観
    • 乙女たちの官能界隈
    • 【町山智浩】映画でわかるアメリカがわかる
    • 【花くまゆうさく】カストリ漫報
サイゾーパブリシティ