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『林賢一の「ライク・ア・トーキングストーン」』【30】

遠回りして見つけた言葉が響く――【元・モーニング娘。】メンバーが語る歌よりも正直なトーク

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――元放送作家で、現在は脚本家として心機一転活動する林賢一が、生のトーク現場に裸一貫突入! 事務所の大看板・古舘伊知郎を始めとした先達たちが繰り広げるトークライブをレポートする。

元モーニング娘。メンバーが語る 今だから話せるあの真実!!

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人物:福田明日香 日時場所:2017年9月30日 @せたがや がやがや館
元モーニング娘。福田明日香によるトークショー。グループ結成秘話と、人気絶頂の中、なぜ脱退したのか? そして引退後の人生について赤裸々に語る。最後には質問コーナーも。


 モーニング娘。(※以下、モー娘。)というグループがあった。無論現在も活動中だが、初期のモー娘。とは姿も形もまるで違ってしまっており、初期を知る者としては「あった」と、つい過去形にしてしまいたくなる。そんなグループの中で、もっとも在籍日数が短かったメンバー。それが福田明日香だ。彼女は12歳でテレビ東京系の番組『ASAYAN』内「女性ロックボーカリストオーディション」を受け、最終候補に残るが、惜しくも落選。その落選メンバーでモー娘。が結成されたが、福田は14歳で脱退。在籍期間は約1年7カ月だった。

 その間の想いなどが本人の口から語られるトークイベントに参加してきた。イベント名は「元モーニング娘。メンバーが語る 今だから話せるあの真実!!」と、暴露系のトークっぽく、会場は世田谷区が運営する多目的ホール。この組み合わせはかなり怪しい、と思いながら会場に入ると、とても寂しい雰囲気だった。だだっ広い空間に30ほどのパイプ椅子が置いてあり、自分を入れて12~13人しかお客さんがいないのだ。当連載史上、もっともお客さんが少なく、なんか切ない。

 福田明日香がモー娘。を脱退してから18年がたっている。彼女は現在、PEACE$TONE(ピースストーン)というポップスグループで音楽活動を続けているが、それほど話題になっていない。だからこそ、このトークショーが謎なのだ。暴露系のトークなのか、それともファンに向けたファンミーティング的な意味合い、どちらなのだろうか? かたずをのんでトークが始まるのを待っていた。

 すると彼女はトーク開始から「立って話したほうがいいですか? 座ったほうが?」と、スタッフに確認するなど、かなりぎこちない。そして、「今日はモー娘。結成時のことを詳しく話したい」と、そのディテールを掘っていくと宣言。

 彼女は立ちながら話すことを選んだが、驚くことに、背負ったホワイトボードに文字を書きながらトークを始めた。書かれたのは東京、大阪、札幌、福岡の4カ所で行われたオーディションの参加人数と通過人数だった。福田が参加したのは東京会場で、5000人が書類審査で集まったという。その中から19人が選ばれ、スタジオで好きな歌を歌うという審査に突入。福田は、その数字をボードにしっかりと書く。また、後にモー娘。となる5人が最終審査で歌った歌も、しっかりと記すのだった。

 授業じゃないんだから、ホワイトボードにメモしながらトークをするのはかなり珍しい(まるで『しくじり先生』のようだ)。その中でも福田がこだわるのは具体的な数字であり、かつての仲間が歌った曲名だった。私はこのあたりから福田のトークに好感を持ち始めていた。最初は「こういう場は初めてだし、話すの下手なんで」と言っていたが、モー娘。の結成秘話を語り始めると、まるで仲の良い友だちについて話しているかのように流暢になり、それでいて素直なのだ。そして福田はひとつの教訓を得る。「覚悟がないのに人前に出ちゃダメ」。

 デビュー直後、瞬く間にオリコン1位のアーティストとなり、レコード大賞新人賞を受賞し、紅白歌合戦に出場。だが、彼女にとってはすべてがあっという間で、何が起こっていたか自覚できなかったという。そして突然歌えなくなり、踊れなくなった。人生経験も恋愛経験もない14歳の少女は、「人に見られる」ということに耐えられなかった。だが、その「見られる」ことから逃げようとするほどに、人は見ようとしてくる。

「今思えば、あの時期にモー娘。を辞めるっていうのは、一番目立つ行為なんですよね」

 人目から逃げるように福田は脱退し、その後、高校も中退。辞めてばかりの人生だが、そんな「逃げ」を彼女は力強く語っている。なぜか? 今は逃げていないからだ。なんだか青臭いけれど、生で彼女の声を聞いているとグッときた。その気持ちを素直に、今歌にすればいいのに、とすら思った。

 福田の、その後の人生はこうだ。ある日、バイト先で従業員の送別会があり「明日香ちゃん、歌ってよ」と言われ「人前で歌うなんて絶対ヤダ」と固辞するが、ふと思う。

「売るためじゃなくて、人のためだったら歌えるかもしれない」

 そう思い直し、久しぶりに人前で歌うことによって、彼女は変わった。モー娘。時代は、真の意味で歌ってはいなかったのだ。芸能界という荒波に飛び込み、流れに流されまくった。それ自体は幸福でも不幸でもない。ただの事実だ。

 だけれども、それらの経験が今の活動につながっている。気になって彼女が今歌っている歌詞を読んでみた。とても陳腐だった。いや、それを陳腐と思う自分が陳腐なのかもしれない。でもステレオタイプなのは否定できない。今日のトークのように正直に歌えばいいのに、と思った。

 彼女の人生は平凡だろうか。映画の脚本にしたらボツだろうか。そんなことはどうだっていい。彼女が遠回りして見つけた言葉がトークによって生まれた。それだけが人生だ。

林賢一(はやし・けんいち)
1979年、五反田生まれ。脚本家、構成作家。「古舘伊知郎トーキングブルース2014」に構成で参加。現在、『トーキングフルーツ』(フジ系)を担当し、ドラマ『SR サイタマノラッパー~マイクの細道~』(テレビ東京)には脚本協力で参加。メルマガ【僕らのモテるための映画聖典】内での「映画のカット数を数える」連載は5年目に突入。

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