サイゾーpremium  > 連載  > 町山智浩の「映画でわかるアメリカがわかる」  > 町山智浩の「映画がわかるアメリカがわかる」第111回/『フェンス』
連載
町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第111回

『フェンス』――デンゼル・ワシントンが築いた裏庭の“壁”を人種は超えられるのか?

+お気に入りに追加

『フェンス』

1703_machiyama_200.jpg

1950年代、かつて黒人リーグの野球選手だったトロイは、ゴミ回収業者として働いていた。メジャーに行けなかったのは肌の色のせい。トロイは出自を嘆き、息子にもそう教えていた。だが時代は変わり、スポーツ界では黒人の活躍が目立ってくる。そんなある日、息子のコリイはアメフトでの大学推薦を得るが……。トニー賞4部門を獲得した同作の映画化。

監督・主演:デンゼル・ワシントン/出演:ヴィオラ・ディヴィス、ミケルティ・ウィリアムソンほか。日本公開未定。


 1957年、ピッツバーグ。54歳になるトロイ・マクソン(デンゼル・ワシントン)は南部生まれのアフリカ系。清掃局員として18年間、ゴミの回収を続けて、小さいながらも自分の家を持つことができた。その裏庭を囲む柵(フェンス)を作ろうとするのだが……。

 デンゼル・ワシントン監督作『フェンス』は2時間以上ある映画だが、この裏庭からほとんど出ない。原作が舞台劇だから。黒人作家オーガスト・ウィルソンが83年に発表した戯曲を読んだデンゼルは、まずブロードウェイでこれを上演し、その時の妻役のヴィオラ・ディヴィスと共に映画化した。そして、アカデミー賞の作品賞、脚色賞、主演男優賞、助演女優賞にノミネートされた。

 50代の中年男が、裏庭で柵を作るだけの映画が?

 いやいや、実はこの柵には、黒人の、アメリカの、いや、すべての人々の“業”が象徴されている。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2025年11月号

「異形と異端」が 動かすニッポン論

「異形と異端」が 動かすニッポン論
    • なぜ、我々は横浜流星に惹きつけられるのか?
    • なぜ、『べらぼう』は異形の大河なのか?
    • [特別対談]立花孝志×上念司
    • 参政党は叩かれて強くなる!
    • [対談]安田淳一監督×阪元裕吾監督
    • “因習村”源流としての金田一
    • 日本一早いプロ野球順位予想

NEWS SOURCE

インタビュー

    • 【かとうれいこ】27年ぶりの写真集発売、レジェンドがグラビア復帰を決断した理由
    • 【Small Circle of Friends】切なさと力強さ。正しさと優しさ。アズマとサツキの絶妙ブレンド。
    • 【日爪ノブキ】仏で国家最優秀職人章に認定された男が推し進める「人類帽子計画」
    • 俳優生活11年、木竜麻生の現在地
    • 超大物アーティストが愛用する シルバージュエリーブランド──「サーティーンデザインズ」代表インタビュー

連載

    • 【マルサの女】橘 和奈
    • 【笹 公人×江森康之】念力事報
    • 【丸屋九兵衛】バンギン・ホモ・サピエンス
    • 【ドクター苫米地】僕たちは洗脳されてるんですか?
    • 【井川意高】天上夜想曲
    • 【神保哲生×宮台真司】マル激 TALK ON DEMAND
    • 【萱野稔人】超・人間学
    • 【韮原祐介】匠たちの育成哲学
    • 【辛酸なめ子】佳子様偏愛採取録
    • GROOVE SEQUENCE──NJSとLDHの親密な関係値
    • 【特別企画3】マッチングアプリが変えた恋愛の価値観
    • 乙女たちの官能界隈
    • 【町山智浩】映画でわかるアメリカがわかる
    • 【花くまゆうさく】カストリ漫報
サイゾーパブリシティ