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佐々木俊尚の「ITインサイド・レポート」 第94回

あの頃観たSF映画の未来がやってこない理由──テクノロジー発展の流れ

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進化の歩みを止めないIT業界。日々新しい情報が世間を賑わしてはいても、そのニュースの裏にある真の状況まで見通すのは、なかなか難しいものである――。業界を知り尽くしたジャーナリストの目から、最先端IT事情を深読み・裏読み!

 CDが100万枚売れていた時代、誰もストリーミングサービスという未来は描けなかった──。テクノロジーは必ずしも直線的に発展するわけではない。デバイスの進化は、人類をどのように変えてゆくのだろうか?

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VRは今、ゲーム業界の目玉となっている(画像はSCEのHPより)。

 未来のことを具体的にイメージするというのは、とても難しい。例えば、古いSF映画はどれだけ傑作であろうとも、未来のテクノロジーは想像できていない。名作の誉れ高い1982年の米映画『ブレードランナー』では、ハリソン・フォード演じるデッカード刑事が、公衆電話で通話するシーンがある。携帯電話が存在していないのだ。その頃のSF映画でよく見かけたシーンに、登場人物が音楽を聴く時、指先ほどのチップを機器に差し込んで再生するというのもある。レコードやCDの延長線上で音楽再生の未来を捉えると、媒体が小さくなるというぐらいしか予測できない。しかし実際には音楽はCDの形を離れ、ハードディスクやフラッシュメモリでの音源の集中管理へと進み、さらにインターネット上のクラウドで集中管理するようになり、今や音源管理などせずにストリーミングで好きなだけ聴く方向に進んできている。「クラウドに接続してストリーミングで定額料金で再生して……」なんていう話を80年代の人に熱っぽく語っても、多分ほとんど理解されないのではないだろうか。

 まったく新しいテクノロジーや機器が登場してくると、人々はそれらを従来からあるものの延長としてしか認識できない。19世紀の終わりに自動車が登場した時、それはあくまでも馬車の代替物だった。「馬のない馬車」と捉えられたのである。しかし自動車は独自の進化を遂げて「馬のない馬車」から脱皮し、新しい「自動車」という乗り物に変化していく。その結果、馬車の時代には考えられなかったような新しいビジョンが生まれてくる。装備品でいえば、エアコンやカーオーディオ、飲み物を置くカップホルダー。さらには自動運転、プラグイン・ハイブリッド。そして馬よりもずっと速く走ることができるため、高速道路というインフラも登場し、その高速道路への進入を迅速にするために非接触の決済であるETCのようなシステムが普及した。馬車の時代の人にETCを説明しても、それが馬車の延長上にあるものだとは誰も理解できないだろう。

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