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「国民的女優」原節子の誕生

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アーノルド・ファンク監督作『新しき土』のプレス記事などを集めた解説本『Die Tochter des Samurai(サムライの娘)』(Steiniger/38年/写真:木村伊兵衛/国際交流基金蔵)

 昨年11月、原節子の訃報が流れた。42歳という若さで引退し、半世紀以上もの間、公の場から遠ざかっていたが、キャリアの始まりも特異な女優だった。

 原節子が一躍スターの座に就いたのは、山中貞雄監督作『河内山宗俊』の撮影の見学に来たドイツ人監督、アーノルド・ファンクの目に留まり、1937年の日独合作映画『新しき土(独タイトル:サムライの娘)』(日本側共同監督は伊丹万作)のヒロイン役に抜擢されてからだった【108ページ写真】。原節子が演じたのは、花嫁修業の一環で茶道、華道、琴、弓道、剣道、薙刀などをたしなむ大和撫子でありながら、ドイツ語も話すモダンな女性だった。ドイツ帰りの婚約者がドイツ人女性と懇意になってしまったことから自殺を試みるが、郷土愛を取り戻した男性に助けられて結婚し、満洲(=新しき土)を開拓するために共に入植するというラストになっている。

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