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第1特集
ファッション×ウェブ戦略 最適解はどのアプリ?

コーデ共有か、イメージ共有か?ファッションSNSアプリ覇権闘争

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――スタートトゥデイが運営するコーディネート共有アプリや、写真共有SNS「インスタグラム」、あるいはモバイルオークションアプリ等、ファッション関連のアプリが花盛りだ。ウェブへの参入が遅れたファッション業界は、今その遅れを取り戻そうとしているが、果たしてこの中で勝ち上がれるのはどのアプリなのか?

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世界各地のファッションウィークの模様もニコニコ生放送で配信された。

 ファッション業界は、この時代の流れの中にあって、ウェブへの取り組みが遅かった業界のひとつだ。業界の頂点に立ち、流行を発信してきたハイブランドは、コレクションという形式で新作を発表し、そこへ参加できるのはバイヤーやファッション誌のエディター、またはセレブなど一部の限られた層。一般人との情報格差は大きく、発信側と受信側には明確な線引きがされていた。それが2010年代に入ると、さすがにネット利用が加速。コレクションのライブストリーミングや動画配信をするブランドも多くなり、ツイッターやフェイスブックなどSNSの活用も目立ち始めた。ファッションニュースサイトも増加し、ネット上で情報を入手することが可能になると同時に、「ZOZOTOWN」のようなECサイトが定着したことによって、オンライン上で購買までを完結できるようになった。

 そこからさらに進んで、現在はスマホがウェブ事業の中心となり、ファッション業界のIT戦略の中心もスマホアプリへと移っている。そのなかで今最もユーザーを集め、国内のファッション業界で大きな影響力を持っているのが「WEAR」と「インスタグラム」だ。

「WEAR」とは、「ZOZOTOWN」を擁する株式会社スタートトゥデイが13年10月に始めたファッションコーディネートアプリ。登録は無料で、ユーザーが自分のコーディネート写真をアップすることで、次々とアプリ上にスタイルサンプルが蓄積される。また、タグの機能によって"ジーンズ""赤い靴"などアイテムや色を指定した検索もでき、"ビジネススタイル"から"ちょっとそこまで"といったシチュエーション、あるいは"前髪みじか"という前髪が短い人に特化した絞り込みまで、多様かつ細分化されたタグが用意されている。14年7月末時点でダウンロード数は300万を突破、コーディネート投稿数も100万件を超えた。雑誌の定番企画であるストリートスナップや「着回し一週間コーデ」とコンセプトは同じながら、比べものにならない情報量が積み重ねられている。

 もうひとつ面白いのは、「WEAR」が「影響力の大きいユーザー」を「WEARISTA」と認定している点だ。最も多いフォロワー数を誇るのは、ファッション誌でも活躍する元モーニング娘。の高橋愛で、その数は82万人以上。本職のモデルである鈴木えみや田中里奈も、共にフォロワー数70万人を超えている。ほかにも、安田美沙子のフォロワー数は11万人以上、男性では人気読者モデルのこんどうようぢが6万人程度であるのに対し、浅野忠信が29万人を超える人気を集めている。また今年5月には、人気のある一般ユーザー20人が初めて「WEARISTA」に認定された。赤文字系雑誌「PINKY」(集英社)の専属モデルだった鈴木えみと、きゃりーぱみゅぱみゅと同じ事務所アソビシステムに所属する青文字系の田中里奈が並び、さらに芸能界のオシャレ番長から人気ショップ定員、一般ユーザーまでが、「コーディネートを共有」というコンセプトのもと一堂に会する「WEAR」の巨大化は、当分止まりそうにない。

「WEAR」を通じた商品購入額(ZOZOTOWNあるいは他社サイト含む)も、サービス開始から半年で月商2億円を突破した。当面は利用拡大を優先し、マネタイズモデルは不確定とスタートトゥデイ側はしているが、いずれ他社サイトでの購入に対してアフィリエイトなども設けるようになれば、アプリを通じてファッションECサイトのプラットフォームになることも可能だろう。

 なお「WEAR」にはもともと、店頭で商品のバーコードをスキャンすると、そのアイテムを使用したコーディネートを検索できたり、後日ECサイトで購入できる仕組みもあった。これに対し、各ブランドからのテナント料で売り上げを立てているルミネなどは反発したが、PARCOや一部の路面店では試験的に導入を実施。しかし利用できるブランドが少なかったり、ブランドの中でも対応していない商品があるなどサービスとしての不足もあり、今年4月末をもってこの機能は中止している。

水原、ローラ、梨花……フォロワー数トップ3

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あるアイテムに絞ったコーディネートのサンプルを探すことができるWEAR(左)。一方、インスタグラム(右)では個別のアイテムをレコメンドするのとは違うタイプのアカウントが人気を誇っている。

 一方「インスタグラム」は写真に特化したアメリカ発のSNSで、撮影した画像をユーザー同士で共有するサービス。10年に登場し、12年にフェイスブックが買収、現在のユーザー数は世界で2億人を突破している。ファッション業界では海外ブランドが積極的に活用しており、例えばルイ・ヴィトンのフォロワー数は250万人以上、マーク・ジェイコブスは140万人を超える。ブランドの公式アカウントでは、コレクションの様子をはじめ、ファッション誌と比べても劣らぬクオリティでモデルのグラビアや新作の物撮りがアップされているほか、ブランドイメージに似合う風景や街の写真などをアップしていることも多い。これまでファッションブランドの公式アプリといえば、真っ白な背景に商品が置かれ、素材やサイズの表示があり、クリックひとつで購入できるという通販サイトの延長線上にあったことを考えると、画一的な情報ではなく、より奥行きのあるビジュアルイメージをさりげなく共有する方向に来ていると言える。また個人アカウント(国内)でも、フォロワー数1位が水原希子(145万人)、2位がローラ(78万人)、3位が梨花(約59万人)と、女性モデルがトップ3を占める。「WEAR」とは異なり、もともと「インスタグラム」はファッション業界へ向けたサービスではなく、ブランドでも個人でも、ビジュアルによってイメージを向上させたい人たちとの相性が抜群に良かったことで広まったといえる。

 このほかにも、流行のコーディネートやアイテムをチェックできるファッション・コーディネートアプリ「iQON」、欲しいアイテムやすでに持っているアイテムを共有する「Sumally」、スマホで物を撮影して即出品できるフリマアプリ「メルカリ」など、ユーザー主導のアプリやサービスは国内でも次々と生まれている。

 こうした一連のサービスに共通しているのは、いずれも言語=テキストがほとんど介在しないこと。ツイッターやフェイスブック、ブログとは違い、よりスピーディかつ簡易に写真1枚、ビジュアル一発で勝負できるこれらの仕組みは、ファッション業界とは非常に相性がいい。また、これまでのように業界主導で売りたい商品を雑誌に掲載したり、広告やタイアップでPRする一方通行なコミュニケーションより、実際に街でその服がどう着られているかのリアリティのほうが、今の時代には消費者に訴求力を持つ流れもある。この流れは、色でも柄でも形でも、一通り街で流行した後に同じようなアイテムを量産して安価で売りさばくファストファッションのやり方とも一致し、より購買に結びついている。しかし、そもそもファッションとは、コーディネートだけで価値を生むのではなく、その服を着る人の生き様や考え方、いわばアイデンティティを表明する手段であったはずだ。その意味でも、今後は「WEAR」のような直接的かつ即購買へ繋がる商業ベースのサービスと、「インスタグラム」のようにイメージによってコミュニティをより強化し、服だけではない価値観を共有するタイプに二分化されていくように思われる。

(文/おぐらりゅうじ)

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