サイゾーpremium  > 連載  > 宇野常寛の批評のブルーオーシャン  > 【宇野常寛】参議院選挙とインターネット
連載
宇野常寛の批評のブルーオーシャン 第40回

参議院選挙とインターネット

+お気に入りに追加

──既得権益がはびこり、レッドオーシャンが広がる批評界よ、さようなら!ジェノサイズの後にひらける、新世界がここにある!

1309_az_uno.jpg
『完全解説 インターネット選挙』(国政情報センター)

 さる7月21日に行われた参議院選挙は、大方の予測通り自民党の大勝に終わった。この結果をもたらした原因については当然、さまざまなものが考えられる。アベノミクスへの率直な期待と評価、政党ごとの支持率が充分に反映されない現行の選挙制度の問題など、論者によってさまざまな視点から分析がなされているが、ここではインターネット選挙運動解禁との関係で考えてみたい。

 このたびの参議院選挙から解禁されたインターネット選挙運動についてはいま、ゆるやかな失望が広がっていると言えるだろう。期待された投票率の上昇はなく、それどころかふたをあけてみれば自民党・共産党という20世紀的な保守・革新政党が議席を伸ばした。ソーシャルメディア上では、いわゆるネット右翼や山本太郎陣営によるネガティブキャンペーンが跋扈し、新経団連やネットに足場を置く若手ジャーナリスト・知識人の支持を広く集めた鈴木寛は落選した。

 その結果、インターネット選挙運動を解禁したところで、現時点では政界にネット右翼(の動員)と放射脳(山本太郎)がはびこるだけだ、ということが証明されてしまった、という失望が広がっているように思える。

 しかし、個人的に重要なのは「これから」だと考えている。インターネット選挙運動はまだ始まったばかりだ。現時点でインターネットはネット右翼や山本太郎支持者など、まあ言ってみればアレな人たちの武器でしかないかもしれない。政治文化の未熟なこの社会においては、新しい武器が生まれてもこのような使われ方しかしないのだ。

 しかし彼らの思想はともかく、手法についてはしっかり分析し、踏襲すべきところは踏襲し、今回の選挙を教訓に何が有効で、何が有効ではないのか。どうすれば効果的な運動が行えるのかを研究し、彼らに対抗していかなければならない。

 先月もこの連載で主張したことだが、やはり今もっとも必要なのは20世紀的な左翼と完全に分離した新しいリベラル勢力の育成だ。民主党の過ちとは一言で言えば、旧来の左派勢力の血をゼロにすることができず、説得力のある新しい日本社会の青写真を示すことができなかったところにある。その結果、民主党は自民党と同じ呉越同舟の寄り合い所帯であることが明白になり、国民は、とりあえず柄杓の底に穴が空いていない政党は自民党だけ、という身も蓋もない判断を下したのだ。そう、国民ははっきり言って思想や政策で政権を選んではいない。単に水を汲むに際して、底に穴が開いていない柄杓を選んだだけのことだと思う。ならば我々がやるべきは、穴の開いていない柄杓をリベラル側に用意することでしかない。インターネットは、こうした作業のためにこそ機能しなければならない。

 そして今、僕がネット右翼や山本太郎を例に出したのは、今回の選挙結果は今の国内のネット社会の現状を象徴しているように思えたからだ。ソーシャルメディア黎明期、たとえばツイッターでフォロワーを集めやすかったのは定期的に「目立つ」「問題発言」をして「炎上」する人物だった。彼らはそうすることで社会的信用を落としていったが、その反面、野次馬根性的なギャラリーを集めることに成功し、さらにそのうち何割かは信者として洗脳することに成功していった。つまりこの時期には、1万人の敵を作るかわりに1000人の信者を獲得するタイプのプレイヤーが勝っていったといえるだろう。しかしこうしたプレイヤーたちが跋扈した結果、ネット右翼や山本太郎が強力なプレイヤーとして駆けまわる、見るも無残な荒野になったのが現在のネット社会なのだと思う。つまり、これからネット社会に実りある政治文化を築こうと考えるのならば、こうした「炎上」マーケティングが支配戦略になりがちなソーシャルメディア文化を改善する必要があるように思える。そして実際、僕が今指摘したようなツイッターブーム初期のプレイヤーはだんだんと読者の脳内の「そういう人」フォルダに放りこまれてしまい、影響力を失い始めているように思える。

 インターネットで世の中を本気で変えようと思うのなら、まずは僕たち一人ひとりが、この種の「炎上芸人」をフォローから外す/相手にしないことから始めるべきなのかもしれない。

〈近況〉
新刊『原子爆弾とジョーカーなき世界』発売中です。さらにこの秋はPLANETS別冊「あまちゃん」特集号の発売が決定! 続報をお待ちください。

うの・つねひろ
1978年生まれ。企画ユニット「第二次惑星開発委員会」主宰。批評誌「PLANETS」の発行と、文化・社会・メディアを主軸に幅広い評論活動を展開する。著書に、『ゼロ年代の想像力』(早川書房)、『リトル・ピープルの時代』(幻冬舎)、『こんな日本をつくりたい』(共著/太田出版)など。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2022年6・7月号

移ろいゆくウクライナ避難者

移ろいゆくウクライナ避難者

NEWS SOURCE

サイゾーパブリシティ