サイゾーpremium  > 特集  > エンタメ  > 【元サンミュージック社員】が語るタブー破りの「アイドル歌謡」
第1特集
ディープに聴く!ジャンル別タブー破りの楽曲はコレだ!【5】

【リチャード・ノースコット】『自殺した岡田有希子以降“アイドルスター”は今も不在!』

+お気に入りに追加

──いまだにアイドル界ではタブー視されている岡田由希子。彼女の自殺にショックを受け、日本に移り住み、サンミュージックに入った外国人から見たアイドル歌謡とは?

リチャード・ノースコット[元サンミュージック社員]
1966年、オーストラリア生まれ。86年、岡田有希子の自殺にショックを受け来日。89年、サンミュージックに入社。酒井法子などの新人プロジェクトやグッズや番組制作を手伝う。90年、独立。

1308_wide_04.jpg

 私が日本のアイドルソングにハマったのは、オーストラリアにいた10代の頃に、日本人留学生から教えてもらったのがきっかけです。80年代前半から半ばですね。それまで、ただうるさいだけのロックしか周囲になかったから、フルオーケストラの楽曲で作られたアイドルソングには衝撃を受けました。一番最初のショックは、松田聖子の「ピンクのモーツァルト」が収録されていたアルバム『SEIKO・TOWN』。音源の質、全体の完成度ともに非常にクオリティ高く感じたんです。

 岡田有希子ならシングル「哀しい予感」が好きでしたね。『十月の人魚』【1】というアルバムに収録されています。その時の趣味は、読めない漢字のライナーノートを写しながら名前を暗記すること。そうして松任谷正隆が編曲者として『Seiko Town』「哀しい予感」どちらも参加していることを知り、どんどん日本の歌謡曲にのめりこんでいったんです。

 あと、あんまり売れなかったけど中森明菜のアルバム『不思議』【2】が好きですね。アイドルのアルバムとしては間違いなくタブー破り。ほとんど明菜の歌声はなくて、当時イギリスの最先端だったアンチポップなCocteau Twinsと同じ路線のような音楽で……最初に買って流した時は「レコードが壊れてるんじゃないのか!?」と思ったくらい。自分のキャラを壊してでもやりたいことをやっている。アイドルというよりアーティストっぽくなっているのがすごくショックでした。せっかくだから、このまま海外に売り出せばいいのに、と思いましたね。ニューミュージックと、それらを支えていた80年代前半のアイドル音楽は、海外から見てひとつの大きなブランドとなっても、おかしくなかったかもしれません。

 そんな時、留学生から「岡田有希子が自殺した!」と聞かされたんです。地元の新聞でも、日本での若者の後追い自殺が取り上げられていて……。それまでは「アイドル世界というピュアなものが日本にある」と信じ込んでいたのに、自分が間違っていたような気がしたんですね。その日から不登校になり、自殺まで考えたりもしました。これはもう、とりあえず日本に行ってみよう、そうすればアイドル熱がさめるのではないかと思い、来日したんです。

 そんな折、サンミュージックの相澤秀禎社長(※当時/13年5月に逝去)が英語のできる人を探していたので、同社で働くようになりましたが、会社の中でも、岡田有希子についてタブーにしたい人も大勢いました。予定していたシングル(「花のイマージュ」)が発売中止になったり、メモリアルBOXが出るまで10年以上経ったのは、そういう事情があったんです。僕もサンミュージックにいた当時は、同じことが繰り返されないよう「君たちは、若者に影響力のある存在なんだよ」ということを、自分なりにアイドルの卵たちに伝えようとしました。今でも毎年、岡田有希子の亡くなった現場にはお参りしてますよ。ただ自分にとっては、いくら新しいアイドルがデビューしても、岡田有希子が亡くなった86年以来、“アイドルスター”はいないと思っています。

(構成/吉田悠軌)

<MUSIC REVIEW>

1308_wide_05.jpg

【1】『十月の人魚』
岡田有希子/発売:ポニーキャニオン(1985年)/廃盤
自殺の約1年前に発表されたサード・アルバム。作曲には竹内まりや、小室哲哉、財津和夫など多彩なミュージシャンが参加している。編曲はすべて松任谷正隆。


1308_wide_06.jpg

【2】『不思議』
中森明菜/発売:ワーナー・パイオニア(1986年)/廃盤
「明菜最大の問題作」。ノイジーすぎて、購入者から「ヴォーカルがよく聞き取れない。不良品ではないのか?」との問い合わせがレコード会社に絶えなかったという。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2022年6・7月号

移ろいゆくウクライナ避難者

移ろいゆくウクライナ避難者

NEWS SOURCE

サイゾーパブリシティ