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ジャニーズゴシップ、ヤクザと警察の関係…社会学者・宮台真司が推す日本の構造的問題に迫った記事

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社会学者の宮台真司氏。(写真=早船ケン)

――1999年の創刊以来、芸能界から政財界、ヤクザにIT業界まで、各業界のウラ側を見てきた「サイゾー」。巷間騒がれる小誌の魅力をもっと多くの人に知ってもらいたい! そんな思いから、「サイゾー」を愛読している物好きな(失敬!)有名人からおなじみの識者の方々に、「サイゾー」でしか読めないオススメ記事を選んでもらいました!! 今回の選者は、ジャーナリスト・神保哲生氏と共にゲストを招いて社会問題を議論する連載マル激トーク・オン・ディマンドをはじめ、多くの企画にもご登場いただいている社会学者の宮台真司氏。カルチャー、政治、、性愛論、社会問題など、多岐にわたって世相を斬る宮台氏がオススメする記事に注目!

『宮崎 学×萱野稔人対談──『近代ヤクザ肯定論』のススメ』
(2009年10月号「ニッポンの<裏社会>学」より)

 秩父困民党事件や1946年の渋谷事件など、暴力とカネに踏み込んだ宮崎学氏と萱野稔人氏の対談は、元々ヤクザと警察は切っても切れない関係だったことを指摘しています。本文では、色街についての言及はありませんでしたが、戦後の混乱期、58年に売春防止法が制定されながら、色街の中に警察は入れなかった。そんな中で、周りの差し金によって暴力団が警察に代わって色街の統治権力として機能していたという構造がありました。

 もともとはホッブスが言っていたことですが、私的ゲバルト(暴力)の強弱の差があることによって、強者と弱者間の契約は信用できないものとなってしまう。私的ゲバルトの強い者が弱者との契約を反故にすることも考えられるからです。そのため、弱者は強者と契約することを萎縮してしまう。しかし、強者にとっても契約はたくさんできたほうが、取引コストが少なくなって便利なわけです。そこで、強者と弱者の間の私的ゲバルトの差が意味を持たないくらい(=中和するほど)のゲバルトが必要であると万人が納得した上で、本来誰もが行使できる自然権としてのゲバルトを統治権力に委託することによってできたのが国家なのです。

 暴力やヤクザについては、歴史の中で蓄積されてきた理論が存在します。しかし、この記事のような対談やインタビュー企画であれば、こうした理論的背景に対して身構えることもなく、若い人たちを読む気にさせてくれる。なので、こういった対談やインタビュー企画はどんどんやってもらいたいですね。

『NHN Japan急成長の裏側』
(2012年10月号第2特集より)

「LINE」が世間を席巻する中で、「LINEって一体なんなんだ?」という、今みんなが気になっている謎に切り込んだところを評価しています。僕も、韓国系企業のNHNがLINEを作ったものだと思っていたのですが、この記事を読んで、LINEがNHNの日本側(NHN Japan)が作ったものと知り、びっくりしました。

 この企画内の濱野智史くんのインタビューでも触れているように、インフラが作り出す未来に注目する一方で、競合他社のフェイスブックなどに対抗するために業態を広げていくことが逆に独自性を失っていく可能性があるということを指摘しており、これはNHNだけに限らず、IT業界全般に対する希望と困難といえます。こうした実情を、一般に広がる「韓国バッシング」という俗情に媚びずに、中立的な視点で書かれているところも良いですね。

『バーニングプロってなんだ?』
(2009年5月号第2特集より)

「サイゾー」はジャニーズやバーニングといった、ほかのメディアでは大人の事情で書けないところに繰り返し踏み込んでいるのがすごいところ。特に性的スキャンダルは一番強力な力を持っています。 『昼夜問わない性奴隷、不気味な注射......合宿所の内部を明かした問題作『Smapへ』』といったエグい記事が「サイゾーウーマン」にもありますが、ジャニーズの性的スキャンダルを扱ったこれらの記事を見る限り、ジャニーズは児童福祉法に違反していることになる。しかし、警察の手入れがないのはどういうことなのか? これだけ話題になりながら誰も証言者が出てこないという背景には、想像するに多くのことがあるのでしょう。メディア周りには多くの人間がいて、メディア関係者が言論を封殺することは容易に想像できます。こうしたメディア支配力の強さを明確に指摘している部分は、やはり白眉といえます。

『タブーなマンガ』
(2012年12月号第1特集より)

 最近、これだけ総合的に(マンガを)特集するというのは珍しいですね。ただ、僕はこうした総合的な「マンガ特集」というのはこれで最後になるのではないかと思っています。現在、音楽の世界ではアーカイブス化が進んで、新曲や新しいチューンに見るものがなく、膨大な過去のアーカイブスから一定の強度があるものをピックアップして消費するようになっている。かつてのマンガ好き、例えば僕らや僕等以上の世代は、マンガ喫茶に行って、膨大なアーカイブスの中から、かつて面白いと思ったマンガや漏れていたものを埋めるようになってきている。最近は腐女子界隈で色々と動きがありますが、こうした日本発の文化というのは「腐女子文化」が最後になるんじゃないでしょうか。

 すでに若い人たちは、新しいマンガを探さなくてもよくなってきています。過去のアーカイブスから面白いマンガを探してくるようになる。だから、新しい動きが注目されるようになるのは現在が最後で、マンガシーン全体に興味を持つ人自体がいなくなってしまう。この流れは映画などでも同じで、消費者がタコツボ化していった。映画雑誌もこういった特集は少数の映画誌を除いてほとんどなくなっています。なぜならば、読者のニーズがないから。しかし、こうして読者のニーズがどんどん劣化して、読者のニーズに合わせたものを作っていけば、歴史的にタコツボ化が起こるのは必然です。しかし、僕は今の若者はつまらないものが好きなんだなぁという印象を持つ。

 コンテンツの作り手は、「消費者のニーズが間違っているぜ」と宣言し、まったくなかったニーズを作り出すことが必要です。こうした価値観を作り手たちから発見していくのが批評家の役割。しかし、現在では出版不況などもあり、こういった企画をやれる力がなくなっている。今後は、読者が教育するような雑誌を作っていければと考えています。

 現在、雑誌が低迷しているのは新書と食い合っている部分が大きいでしょう。雑誌がムック化していき、(ピンポイントなテーマを取り上げた)目的指向の作りをしている雑誌は今後苦しくなっていくはずです。新書ではその一貫性を利用して、ピンポイントで多種多様な試みが行われているので、雑誌と新書を比べたときに、どうしても新書に流れてしまう。

 こうした状況を踏まえた上で、僕は再三述べていますが、「サイゾー」には今はなき「噂の眞相」の機能を引き継いでほしいと考えています。僕も「噂の眞相」には何回もゴシップを書かれましたが(笑)、こうしたゴシップや裏ネタを取り扱っていながら、「噂の眞相」に扱われていると栄誉な感じがしたものです。

 ゴシップや裏ネタには2種類あって、ネットなどにはびこる根拠不明な意味のない噂と、裏とりやリサーチをし、噂を超えてその先にある構造の問題に言及しているもの。後者は、展開性を持ち社会的に意味のあるゴシップといえます。ゴシップを個別に扱うのでなく、まとめて提示することで、ゴシップが構造上の問題に還元できる部分があります。ゴシップから構造的問題があることをわかるようにするのは難しいけど、そういった点に留意しながらゴシップを扱っていってもらいたいですね。まぁ、こうした日本の構造的問題の大半は、結局"電通"問題だったりするんですが(笑)。

(構成/編集部)

宮台真司
1959年生まれ。首都大学東京教授。社会学者。権力論、性愛論、文化論など、多岐にわたる評論を発表している。代表作に『日本の難点』(幻冬舎新書)、『14歳からの社会学』(世界文化社)など。

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