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第2特集
人はなぜ、代替医療に魅せられるのか?【7】

"カルト"を知る、紀藤正樹弁護士が語る宗教への信仰と代替医療の精神構造の類似性

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山口貴士弁護士との共著『カルト宗教―性的虐待と児童虐待はなぜ起きるのか』

──ここまで見てきたように、ホメオパシーをはじめ各種代替医療は、多かれ少なかれその効能に疑問符が付く。だが、信じてしまった人には絶対で、その強固な"信頼"が原因で人死にが出ているのが現状。そのさまはまるでカルト。ハマってしまった人に、周囲は何ができるのか?

 ホメオパシー問題にはもう15年以上も前から注目しています。きっかけは、1994年にスイスとカナダの太陽寺院というカルト教団の施設内で、幼児を含む53人が集団無理心中を起こした事件。その広告塔だった医師がホメオパシーを推奨していたことで著名だったこともあり、ヨーロッパでは非科学的医療に関する見方が非常に厳しくなりました。

 ホメオパシーの法的規制に関しては、まずは現行法を運用していくことです。薬でないものを「効き目がある」と説明したら薬事法違反、医者でもないのに治療を行っていたら医師法違反。本来なら即座に対応できる問題ですが、日本は非科学的医療に甘く、取り締まる発想がなかったので対応が遅れています。ただ、現在の厚生労働省は、医師が非科学的治療を行うことは許されていると誤って運用している。この点については、医師法や薬事法に、きちんと解釈規定を盛り込んだほうがいい。

 ホメオパシーについての一番の問題は、推進団体が科学的根拠を主張していることです。最初から「宗教です」と名乗っていればまだいいのかもしれない。病気治しをうたう宗教はいくつもあります。宗教にはそもそも科学的根拠がないのが大前提です。ところがホメオパシーは科学性をうたう。説明に嘘があるという部分でカルトに似ています。多くのカルトは自分たちのことを「宗教でも科学でも解決できなかった新しい真理だ」と説明する。

 なぜ信じてしまうのか? 代替医療全般に言えますが、信仰と考えれば、これは非常に宗教に似通った精神構造だとわかります。ひとつには「経験」の問題があります。人は自分の経験から物事を判断する。その意味で、経験は偏見が生じる原因にもなります。レメディを飲んで病気が治ったと感じた人は、ほかの人がどうかではなく、その経験を基準に判断してしまう。

 もうひとつは「無知」の問題。少しでも科学の知識がある人は、自分の体験はあくまでもひとつの体験であってすべての人にあてはまるわけではないと知っています。ダブルブラインドテスト(当特集【1】参照)がどのように行われ、なぜ必要なのかを知らないというような無知は大問題です。

 さらに言えば、自分自身の経験への「傲慢」な考え方ですね。熱が出るのは好転反応だといっても、子どもやお年寄りは死ぬかもしれない。薬を処方しないと死ぬ人がいるということに理解がなく、治らない人がいることにも理解がなく、自分の経験知を絶対視する人は往々にして傲慢です。

 西洋医学の治療を尽くしても治らないから代替医療へ、という人もいます。代替医療でも治らないのに、すがりついてしまう。人間は生への執着を捨てられませんから。

 20世紀は科学の時代でした。逆に言うと、宗教が力を失っていった時代です。でも、人間の苦しみである生老病死はいつの世も変わりません。科学でも宗教でも解決できない苦しみがあるから、そこに市場が成立します。21世紀になって、気功や霊能、占い、自己啓発セミナー、そんな非科学的なものが増えましたね。

 いったん非科学的なものにのめり込んでしまった人の目を覚まさせるのは、大変なことです。一種のマインドコントロールですから。その人に子どもがいたら、周囲が相当注意しないといけない。私の推計では、医療ネグレクトで子どもが死亡する事件の3分の1程度は、非科学的な医療など宗教ないし宗教類似行為が原因です。

 一番危険なのは、推進側の人がホメオパシーへの依存心を高める説明を行うこと。これは誤導というほかありません。先日、消費者庁の「健康食品の表示に関する検討会」が出した「論点整理」に対し、この依存心についての議論が不十分だという指摘がありました。好転反応という言葉で一時的な症状の悪化を説明するのは、患者に依存心を植え付けることにつながります。病気が悪化してもホメオパシーを使い続け、最悪の場合は死につながりかねない。

 著名人や芸能人が「ホメオパシーをやっている」というような発言をするのも、立場への自覚を持っていただきたい。オウム事件のときも、ニューエイジ的なものをはやらせた人たちが、行きすぎた宗教であるオウムについて早い段階で批判をしなかった。宗教だから変わっていてもいいという感覚の鈍さがオウムを暴走させたのでしょう。ホメオパシーも同様です。ここまで日本にはやらせてしまった責任を自覚すべき。厚労省同様、責任は重いと思います。(談)
(取材・文/小川たまか プレスラボ)

紀藤正樹(きとう・まさき)
リンク総合法律事務所所長。現在弁護団活動として、神世界被害対策弁護団団長、近未来通信被害対策弁護団団長、ホームオブハート被害対策弁護団団長などを務めている。著書に『カルト宗教ー性的虐待と児童虐待はなぜ起きるのか』(山口貴士弁護士との共著・アスコム)など。

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