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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第4回──MOVIE編【3】

心をつかむ秘密はどこに? 「乙女」が評する『借りぐらしのアリエッティ』

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──今月の本連載MOVIE【1】にて、映画『借りぐらしのアリエッティ』をめぐる議論が収録されている。だが同作には、まだ語り尽くされていないひとつの見方があった。ある種の人々の心をとらえてやまない、「乙女ジブリ」の系譜とは?

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『借りぐらしのアリエッティ サウンドトラック』

 最初に惹かれたのは音楽。原作は英国児童文学。ツタに浮かぶ雫や陰影もとてもきれい。期待をこめて赴いた劇場で出会ったのは、小鳥がさえずる、荒れ果てた夏の庭だった。上品な老婦人の車に乗って、もの憂げな少年が現れる。きらきらしたハープの最初の一音を聴いたとき、私はすでに確信していた。『借りぐらしのアリエッティ』、なんて愛すべき物語!

 私の周りにはそんな仲間たちが大勢いて、この映画の評判はすこぶる良い。ジブリという巨大な看板の陰に隠れて見えづらいけれど、実は『アリエッティ』には、一部の人々の心をがっしりつかんで離さない秘密があるのだと思う。その人々の名は「乙女」。たぶん性別は、あまり重要じゃない。『アリエッティ』は「心に乙女を持っている」かどうかで、印象が大きく変化する作品なのである。

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