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連載
宇野常寛の「現代用語の『応用』知識」第10回

ヌルいちょうちん記事を書いて、糊口をしのぐ物書き「御用ライター」

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 突然だが、この連載は今回で最終回だ。でも安心してほしい。単に、キーワードを考えるのが面倒になったので、フリーお題のコラムに切り替えるだけだ。今までこの連載に腹を立ててきた皆さんの自意識にとって、これからもどんどん都合の悪いことを書いていく予定だ。そもそも、カルチャー関係のメディア業界というのは非常に市場規模が小さく、かかわっている人間も少ない。そのためすぐにムラ社会化し、派閥争いも激しい。そこでは、特定の人脈の開く飲み会やイベントに顔を出して、実力者のゴキゲンを取った人間がかわいがられて「出世」する。サークルの「エラい人」の批判はせず、彼らの褒めている作品も褒める。そしてファンダムの最大公約数的な見解を示して、そのメンタリティを肯定してあげる。そうやって「空気を読む」人間が生き残っていくのが、この世界なのだ。僕もよく「もっと空気を読め」と言われる。数年前に先輩ライターから「お前は●●●●(有名なアニメ系御用ライター氏)みたいになりたくないのか」と説教されたこともある。もちろん「なりたくない」と答えたが。

 先達にならって僕もたまには「ゼロ年代」という言葉をネガティブに使ってみよう。ゼロ年代とは、そんなどうしようもない連中ばかりがはびこり、サブカルチャーの世界を貧しくしていった時代だった。「自分より弱い女の子に『萌え』ている自分たちは正しい」とか、「ボンクラな自分たちは正しい」とか、そんな自己肯定の言葉ばかりが支持されてきた時代だった。そう思うのは結構。でも考えてみてほしい。どんな傾向の作品を支持するかと、自分たちの自意識を肯定/否定するかなんてまったくの別問題だ。「~が好きな自分」に肯定も否定もない。むしろ、作品批評を自己肯定の言葉にすり替える行為こそ否定されるべきだろう。僕らが行うべきは、ある作品を語ることによってそのファンコミュニティの逆差別的ナルシシズムを肯定し、肥大したプライドに承認を与えることではない。作品の面白さを語り、その魅力の源泉と作品構造の分析を経て、より広い問題意識に「開く」ことじゃないだろうか。そんなに肯定してほしければ、某学会にでも入ればいい。「~が好きな自分」を肯定するための批評なんて『人●革命』と変わらない。もっとも、ご多分に漏れず、その手の連中は自分たちの正当性を確認するためにサークルの中ボス(笑)の政敵に石を投げて、信仰心をアピールするのだが。彼らの憧れるヒーローたちは、「被害者意識で凝り固まったセクトを作り、政敵に集団で石を投げろ」と教えたのだろうか。そんな連中が、自分たちではカウンターカルチャーの担い手だと思っているのだから呆れる。そんな、絶対に自分には牙をむかない権威を叩き反権威を気取る「ギョーカイの中ボス」は百害あって一利ない。

 なんて正直に書くので、その手のギョーカイジン&ワナビーから僕は執拗な攻撃を受けている。が、ここで僕が潰されたら連中のほうが正しかったことになる。ファンダムに出入りして空気を読んで媚を売り、中ボスの政敵に石を投げる功績を上げて認められることが、サブカルチャーの世界でのし上がっていく方法だということが証明されてしまう。なので、ポケットマネーで発行している同人誌から出てきた僕が潰されるとよくないな、なんてことも思ったりするのだ。このコラムを読んでいる若い人で、これからこの世界に入ってこようと思う人は、こうした旧い世界のルールが通用しない新しい世界を作るという意味で僕に加担してほしいと思う。それは、ファンダムの中ボスに媚びずにやっていく、彼らに逆らっても仕事を失わない世界を作るということだ。たったそれだけのことだが、これが意外と難しい。だが、やるしかないのだ。

(某喫茶店で)
「お前は●●●●さんみたいになりたくないのか! もっと、読んだ人が肯定された気になるような文章を書け」
「御用ライターとして提灯記事を書くんですね。その一方で敵対勢力には延々と中傷を続ける取り巻きをつくる、と。素晴らしい」

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『某新聞』
毎回某正宗への罵詈雑言が載っているあたり、体質が某映画雑誌にソックリ。


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『書評王の島』
気が付けば、媚びたい作家にはその着物まで褒めるようになってしまった自称「書評王」。昔の痛快さは今やどこに?


『批評のジェノサイズ サブカルチャー最終審判』
最後なので宣伝。そんな陰湿なギョーカイに敢然と「NO」を突きつけた、更科修一郎さんとの対談集です。買ってね!


宇野常寛(うの・つねひろ)
1978年生まれ。企画ユニット「第二次惑星開発委員会」主宰。ミニコミ誌「PLANETS」の発行と、雑誌媒体でのサブ・カルチャー批評を主軸に幅広い評論活動を展開する。著書に、『ゼロ年代の想像力』(早川書房)がある。本誌連載中から各所で自爆・誤爆を引き起こした「サブ・カルチャー最終審判」が、書籍『批評のジェノサイズ―サブカルチャー最終審判』となって絶賛発売中!

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