アップルの公式サイトをのぞいてみると……確かに毎日新聞の公式サイトが!!なぜ?
4月3日に、米アップルの新型の携帯情報端末「iPad」が米国で発売され、話題をさらっている。日本での発売は4月下旬だが、アマゾンのKindleと並ぶ電子書籍リーダーの"真打ち"登場とあって、このiPadにコンテンツを供給したい雑誌や新聞などの"熱戦"が早くもヒートアップしているという。
「日本ではまだどういう対応を取るかも決めてない段階なのに、メディアから『うちのコンテンツを扱ってくれ』という要請がひっきりなしに届いている」(アップル日本法人関係者)
実際、ある大手出版社が発行するビジネスマン向け情報誌は、同機の規格も明らかになる前から「iPad向け」と銘打ったデジタルコンテンツを作成、アップル側に売り込みをかけたという。
しかし、さらに鼻息が荒いのは新聞社だろう。先に発売され大ヒット中のiPhone向けに、記事を丸々読むことができるアプリを提供している産経新聞。同紙は、住田良能社長みずからが率先し、iPadでも優先的にコンテンツを配信することを目指している。これに対し同紙の若手記者は「経営陣は『iPadでもリードする』と意気込んでいるけど、ただでさえリストラで人が減ってる中、現場は紙に加えてデジタル媒体への対応にも追われ、ヘトヘトですよ……」と苦笑気味だ。
ところが3月下旬、そんな産経社内で、ちょっとした"事件"が起こった。
iPad狂想曲
米電子機器大手アップル社が発売した次世代型携帯情報端末をめぐる、日本メディア各社の"バトル"のこと。高さ約24センチ×幅約19センチ×厚さ約1センチというiPadのサイズが電子書籍用携帯端末として注目を集めているがゆえの現象である。
「iPadは毎日で決まったのか!?」
叫んだのは、ある産経幹部。この幹部がなにげなくアップルの公式サイトを眺めていたところ、発売間近のiPadの製品写真の画面に、毎日新聞の公式サイトが掲載されていたのだ。
「毎日新聞がiPadのコンテンツとして何かの優先権を得たなんてことじゃない。ただ便宜的に使っただけなんですが……」(前出・アップル関係者)
しかし、時すでに遅し。この事件は産経のみならず大手紙のデジタル担当者の間を駆け巡り、ちょっとした騒動となった。中には「毎日じゃなくてうちのサイトを使ってよ」などと持ちかけた新聞社もあったというから、携帯電子端末にかける新聞各社の情熱と焦燥もうかがい知れようというものだ。
「なんでうちのサイトだったのか、真相はやぶの中。だけど、産経以上に経営が苦しいうちは、デジタルに過剰な期待を寄せている。上層部は、紙で稼げない分をデジタルでなら補えるんじゃないかと夢を見てるんですよ。その結果、iPadにも前のめりの対応をしてしまう」(毎日新聞の中堅記者)
ただ、このような期待に冷や水を掛けるような動きもある。
3月4日、ネットベンチャー・頓智ドットのiPhone向け人気アプリ「セカイカメラ」が、Wi-Fi接続に問題があるとして、アプリ販売サイトApp Storeから突如として削除された(現在は復活)。アップル側からの細かい説明はなく、これと同時に、ほかにも多数のアプリが削除されている。App Storeにアプリを提供している大手ゲーム会社幹部は「App Storeはアップルの胸先三寸でアプリが削除されるなど、事業として不安定な部分がある。社内でも『あまり力を入れすぎないほうがいい』という声が大きくなっている」と明かす。さらに、例えばiモードでは通常1割とされるアプリ収入の"ショバ代"が、App Storeでは3割をアップルに徴収されるなど、収益性を疑問視する声も少なくないのだ。
メディア各社のiPadにかける情熱の雄叫びが、断末魔の叫びへといつ変わってしまうのか。誰にもわからないのである。
(編集部)