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宇野常寛の「現代用語の『応用』知識」第7回

09年最後を締めくくる!"『応用』知識"特別版「ゼロ年代」

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 ゼロ年代、と呼ばれた10年が終わる。国内カルチャーにとってこの10年は、古いものがどんどん無効化され、新しいものが次々と勃興していった時代だった。たとえば、90年代のサブカルチャーは某出版社が象徴するように、もう少しアングラ感のあるものだった。『完全自殺マニュアル』「クイック・ジャパン」『スキゾ/パラノ・エヴァンゲリオン』。どれも当時私が夢中になって読みふけった本だ。氷川竜介『20年目のザンボット3』は、永遠のバイブルのひとつだ。ところが私見では、こうしたカルチャーの存在感はゼロ年代に入ってガタ落ちする。


 某社についても、出版物で国内カルチャーシーンに一石を投じたのは『バトル・ロワイアル』(99年発売)が最後で、以降はただ近過去へのノスタルジーが目立つ結構イタい企画が目につくようになっていった。その証拠に、ゼロ年代のカルチャー史的に重要な本は一冊たりとてこの文化圏からは出ていない。東浩紀『存在論的、郵便的』(新潮社)、『動物化するポストモダン』(講談社)、伊藤剛『テヅカ・イズ・デッド』、濱野智史『アーキテクチャの生態系』(ともにNTT出版)、そして拙著で恐縮だが『ゼロ年代の想像力』(早川書房)……いずれも、宮台真司以降の「新しい批評」の潮流から生まれた本だ。

 ゼロ年代のカルチャーシーンを牽引したのは、前回取り上げた「サブカル守旧派」の流れを汲む自意識系ロックの文脈、つまり自意識系サブカルチャーをカウンターカルチャーとして、ある種の反体制的文脈を読み込む「古い想像力」ではなく、インターネット以降の新しい知、工学や社会学の成果を導入したハイブリッドな感性が生むポップカルチャーを支持する「新しい想像力」のほうなのだ。そして、「反抗したくても反抗するものがない時代に生まれた自分」みたいな自意識しか表現の根拠を持たない前者はこの10年、何もできなかったのだ。そりゃあそうだろう。人並みの繊細さと知性があれば、このポストモダンにおいて「ロック的なもの」が原理的に不成立であることも、自意識への拘泥がつまらない自己憐憫しか生まないことも、すぐにわかるはずだからだ。同じ「モノはあっても物語のない」郊外的な空間を、前者は「砂漠」や「廃墟」として描き、後者(つまり私たち)はそこを価値中立的なアーキテクチャが生成するフラットな空間として、むしろ明るく、心地よい空間として描くことが多い。

 今、サブカル守旧派やセゾン系残党などを中心に「ゼロ年代」批判が始まっている。いずれもこの10年、何もできなかった自分たちの無能を棚に上げ、「貧しい時代だった」「若い奴らはダメだ」と責任転嫁を繰り返している。だが、ゼロ年代は果たして本当に貧しい時代だったのだろうか?

『DEATH NOTE』や『コードギアス』、クドカンドラマや平成仮面ライダーシリーズは駄作なんだろうか? ニコニコ動画やPerfumeは空虚なのか? アルタミラピクチャーズや『アメトーーク!』(テレビ朝日)はジャンルの衰退なのか? そんな言説はすべて、時代に追い抜かれた人々の逆恨みにすぎない。

 年末、僕は「PLANETS」の別冊として、この10年を総括する一冊を発売する。その名も「ゼロ年代のすべて」。宮台真司、東浩紀、大森美香、谷口悟朗、東村アキコ、藤村龍至、荻上チキ、濱野智史……各界を代表するクリエイターと論客が、この10年間はなんだったのかを考える一冊だ。僕たちは「失われた〜」なんて語り口は絶対にしない。この冷たくて自由な、フラットな「ゼロ年代」という時代を祝福しつつ乗り越えるための一冊になるはずだ。大晦日はぜひ、コミケへ!

<使用例>

(某「守旧派」出版社で)
「もうすぐゼロ年代も終わるよなー」
「しっ。ウチの上の人が聞いたら俺がクビになるぞ! 2000年代って言わないと!」
「そうか、宇野に批判されたのを逆恨みして、彼を出入り禁止にしたんだったよね。おたくの会社」

<関連キーワード>

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『ゼロ年代の想像力』 拙著。表紙は絶対に白一色だろうと、担当の塩澤氏と一発で意見は一致した。「荒野に少女が佇むようなセカイ系は絶対NGで」

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『平成仮面ライダーシリーズ』 「ライダー同士が戦うなんてけしからん!」とか「守旧派」に叩かれまくった同シリーズ。頭悪い自己憐憫とかマジどうでもいい。

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『思想地図』 コミケももちろん来てほしいけど、発売中の「思想地図vol.4」もよろしく。『批評のジェノサイズ』と一緒に購入すると吉!

宇野常寛(うの・つねひろ)
1978年生まれ。企画ユニット「第二次惑星開発委員会」主宰。ミニコミ誌「PLANETS」の発行と、雑誌媒体でのサブ・カルチャー批評を主軸に幅広い評論活動を展開する。著書に、『ゼロ年代の想像力』(早川書房)がある。絶賛発売中の『批評のジェノサイズ』も並ぶ、ジュンク堂書店新宿店〈ミニコミ2.0〉フェア開催中! 12月21日には同店にてトークショー出演予定。

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