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第2特集
絶好調!の嵐はホントにスゴいのか?【5】

美術感想家・工藤キキが語る"嵐"批評 「ステージ上終身雇用」を望む ゼロ年代のリアル・ピープル

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──村上隆の元弟子であり、キュレーター、ライター、美術感想家として、これまで数多くのカオスな創作現場に立ち会ってきた工藤キキ氏。一般的な嵐ファン(女性)の目線を超越した批評眼を持つ彼女に、その真なるアイドル像を探ってもらった。

 そもそも、芸能界という場所は裸一貫でノシ上がっていく立身出世物語の世界ですよね。中でもアイドルの背後には常に光と影がチラついていて、華やかさの裏にある世知辛さを知って涙……みたいな(笑)。ジャニーさんは世代的にもそういった涙系が好きで、それはソープランド密集地で幼少期を過ごし「父の名前も顔も知らない」というヒガシから、シングルマザーに育てられ経済的に恵まれない家庭環境だったタッキーらまでを貫く「大きな物語」といえるもの。そういう意味でタッキーは完璧な涙系だと思いますけど、嵐はその立身出世物語とは無縁な存在でいるところが新鮮ですね。

 例えば、櫻井くんは港区生まれで慶應義塾幼稚舎に入学といった、裕福な環境で育った人物。「社会からドロップアウトして芸能界入り」という進み方ではなくて、「株式会社ジャニーズ・エンタテイメントに就職しました」みたいな精神性。最近のお笑い界でも高学歴芸人が話題になっているけど、それはネタが面白いわけじゃなくて、高学歴というキャラの影響です。それに対して嵐は履歴ウンヌンはさておき、ちゃんとアイドル業でサクセスしているのが偉い。その点に関して、吉本興業は企業努力が見られないわけですが、ジャニーズの場合は未来の子供たちの雇用まで視野に入れているということです。

 またジャニーズ内で比較してみると、アイドルとしての嵐の立ち位置が、よりわかりやすくなると思う。まず、嵐と対極にいるのが堂本剛君ですね(笑)。あの人は長いこと自分探しをやっていて、パブリック・イメージと実像のズレに葛藤するなんて、結構古いタイプのアイドル像ともいえる。ところが嵐は「ダメだったらダメでいい」という"ダメ前提"から出発しているような印象があるし、賞味期限がある仕事から滲み出る「儚さ」や「悲しみ」から、初めて解放された新たなアイドル像を提示しているように思えます。それは、櫻井くんが書いたラップのリリックに顕著です。

「大卒のアイドルがタイトルを奪い取る/マイク持ちペン持ちタイトルを奪い取る/hip-pop beat yo/ステージ上終身雇用」(「Hip Pop Boogie」)

 やはり、自分たちはゼロ年代アイドルとしての存在感を自覚しているんですよね。「大卒のアイドル」とか「ステージ上終身雇用」という言葉が完全にいまの世相を反映しているように思えます。このほかにもメンバーに対するビッグシャウトがあったりして、櫻井くんは間違いなくYOU THE ROCK★からの影響が大きい(笑)。それに、ただ消費されるのを待つだけではなく、リリックを書いて後々の印税収入に備えているともとれるし、「キャリア」というものを間違いなく彼らは考えて活動しています。

 そして嵐には、いまどきの"ホスト系イケメン"がひとりもいない。ライヴ映像を観ていると、みんな健康的で巨大な文化祭のように感じます。彼らは等身大というかリアル・ピープルなんですよ。

 でも、アイドルに疎い(笑)ワタシがいちばん気になるのは、なんで白髪も生えていないのに、みんな髪を染めているんだっていうことですね。(談)(構成/前田毅)

工藤キキ(くどう・きき)
1972年生まれ。カルト・ライターとして各メディアで活躍。著書に『Post No Future──未分化のアートピア』『姉妹7センセイション』『よのなかのパロディ』(河出書房新社)、『あすなろさん』(アスペクト)がある。


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