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第1特集
現役自民党政治家"下半身スキャンダリスト"7傑【2】

社会学者が語る「下半身スキャンダル報道と国益の損失の関連性」

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──政治問題にも詳しい東京工業大の有名社会学教授に、政治家の男女スキャンダル問題の"神髄"を聞く!!

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第75代内閣総理大臣、宇野宗佑

──明治~昭和の大物政治家には、「芸者の愛人がいる」というイメージがあり、また実際、吉田茂や田中角栄らに愛妾がいたことは広く知られています。「政治家=芸者」という図式は、いつ頃から、なぜ成立したのでしょう?

橋爪大三郎(以下、) 最近すたれ気味ですが、自民党の政治家は、本会議や委員会が済むと、夕方から料亭に繰り出し、打ち合わせをするのが常でした。「料亭政治」と呼ばれるこの政治スタイルの起源は、幕末維新にさかのぼります。脱藩して草莽の志士となった革命家は、藩屋敷など正式な場に出入りしにくい。いっぽう色街は、いろいろな階層の人びとが利用するため、客の素性を詮索しない、という守秘義務が徹底されていた。そこで彼らは、京の先斗町などに潜むようになったのです。自然、芸者とも親しくなる。彼女らは同志で、のちに結婚するケースもあった。そうした伝統が東京にも受け継がれ、戦後まで残っていたのです。

──当時の一般社会は、政治と色街の関係をどう見ていたのでしょう?

 当たり前だと思っていました。政治家の男女問題を「スキャンダル」と呼ぶことはなかったし、記者もそんなことは書きませんでした。そうした風潮が変わってきた背景としては、まず、世の中の結婚観や家族観の変化が挙げられます。昭和30年代、恋愛結婚が見合い結婚に取って代わり、恋愛や家族についてのモラルや考え方が大きく変化しました。それにつれて、料亭政治や、水商売の女性の影があるという自民党的な政治文化は、受け入れられなくなっていったのだと思います。

──そうした変化は、政治家の側にも見られますか?

 政治家にも、料亭政治や派閥政治と距離を置きたい、という人が増えてきました。夜の会合をすっぽかしてオペラを鑑賞しに行く小泉さんや、料亭ではなくホテルのバーでグラスを傾けるのを好む麻生さんなどがいい例です。

 また、男女スキャンダルが政治生命に大きく影響するようになったため、大臣候補は、身辺調査をしっかりやるようになりました。宇野さんのケースは、これをしくじったのだと思います。外国の諜報機関も、日本の政治家のスキャンダルを狙って調べあげ、ファイル・キャビネットにしまっています。日本の政治家が自国に都合の悪い政治行動を起こそうとしたら、うまくどこかにリークして失脚させる。直接本人に電話して、脅すかもしれない。誰にでも何かしらスキャンダルの種はあるものです。だから、バレれば有権者が袋叩きにするというやり方は、スキャンダル情報を持っている誰かの思う壺ということになる。

──国民が政治家の男女問題について騒ぎ立てると、スキャンダル情報という"負の資源"の価値を上げてしまう、と。

 そう。それだけ国益が脅かされてしまいます。そもそも、政治家にとっての本当のスキャンダルとは、税金を使って社会公共のために尽くすという、政治家の職務の根幹にかかわる問題のことです。税金の使い方や政治能力に問題がある。経歴を偽る。これらは、政治の基本ルールに違反しているので、ことの大小にかかわらず、スキャンダルと呼ばれるべきです。逆に、政治のルールにさえ反していなければ、たとえ愛人がいたとしても、プライベートな問題にすぎませんから、スキャンダルではない。

芸能人などの有名人にとっては、不倫はスキャンダルになります。芸能人は、一般人の夢や理想を体現するのが仕事で、その夢を壊してはいけないからです。でも芸能人は、税金を使っているわけではない。政治家は有名であっても、芸能人とは、スキャンダルのロジックが違うのです。

要するに、政治能力とは無関係なことをあげつらうことで、能力ある政治家の政治生命が断たれたとしたら、それは結果的に、有権者が自分の首を絞めたのと同じなのです。ましてや、有能な政治家は非常に少ないのですから、有権者は、政治家のプライバシーについては「知らないふり」をして、うまく使いこなすのが賢明なのです。

橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう)
1948年生まれ。東京大学文学部社会学科卒。東京工業大学教授。専門は理論社会学、宗教社会学など。『はじめての言語ゲーム』(講談社現代新書、09年)、『裁判員の教科書』(ミネルヴァ書房、09年)、『「炭素会計」入門』(洋泉社新書y、08年)など著書多数。


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