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第1特集
最強外食産業マクドナルドの功罪【2】

スタッフのモチベーションに注力......経営陣による業績回復を高く評価

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 最近では、不況下の「勝ち組企業」として取り上げられることの多い、日本マクドナルド。「100円マック」などの新商品のヒットや、24時間営業店の増加もあり、昨年12月期の決算では過去最高の売上高5183億円を計上。今期も前期を超える126億円の純利益を見込むなど、業績面での好調ぶりが目立つ。

 一方、従業員の雇用問題などで、日本マクドナルドが批判の矢面に立つことも少なくない。2005年に現役店長の高野廣志氏が提訴した「名ばかり管理職」訴訟では、今年3月に東京高裁で、会社側が未払い残業代を含む1000万円の解決金を高野氏に支払うことで和解が成立。激務とされる店長の職務内容について、同社は全面的に見直しを迫られる結果となった。また、新商品「クォーターパウンダー」の発売日には、人材派遣会社から派遣されたアルバイト1000名が、「サクラ」として行列を作っていたことも発覚。「あくまでもマーケティング手法のひとつだった」と主張する同社に対し、各方面から「やりすぎではないか」と批判の声が高まった──。

 テレビなどのマスメディアに強い影響力を持つ日本マクドナルド。その業績好調の秘密とは何か。そこに死角はないのか。今回の特集では、日本マクドナルドを長年取材してきた2人の著者に、それぞれの立場から同社の「現状」について語ってもらった。

──日本マクドナルドは2002年に赤字決算を出しましたが、ここ数年、業績が急回復しています。山口さんの著書では、経営陣による回復への取り組みを評価されていますね。

山口 一番の要因は24時間営業のスタイルでしょう。全国的に小売業の営業時間短縮が進んでおり、長時間営業でコストを吸収して利益が残るようなノウハウは、どこにもなかった。マクドナルドが培ってきた、ローコスト経営の管理ノウハウがうまく生かされた例です。これは、現CEOである原田泳幸氏の力というよりも、118カ国に展開するマクドナルド本社の、根本的な世界戦略によるところが大きいですね。

──本社主導による日本マクドナルド改革の中身とは?

山口 創業者である藤田田氏が03年に退任して以降、本社副社長とカナダのマクドナルド社長を兼任していたパット・ドナヒューがCEOになり、世界戦略に合わせた原点回帰が行われました。ここでは、店舗をリニューアルするとともに、世界戦略のスローガンである"I'm lovin' it"を打ち出した。また現場では、アルバイト(クルー)改革が進みました。具体的には、4段階あったクルーが1段階になり、その上に各店舗の接客を統括する「スター」、クルーの教育を行う「トレーナー」という形になった。店舗にいるのは、店長含む正社員が2~3人で、そのほかはアルバイトです。以前の4段階ではクルーにも昇給が認められていましたが、これが人件費の高止まりを招き赤字の大きな原因にもなっていたんです。

──段階がなくなったことで、モチベーションを失ったアルバイトもいたのでは?

山口 確かに、以前は昇格・昇給が大きなモチベーションになっていましたが、豊かになった今の働き手のニーズは"認められたい、ほめられたい"という部分が大きい。そこで、教育体制の改革も行われました。たとえば、研修初日から店長が一緒になって、マックフライポテトを揚げる。そうしたことで、アルバイトは最初から"認められている"という意識を持ち、やりがいを感じることができるんです。

──そんな中で、いわゆる「名ばかり管理職」の訴訟も起きました。

山口 私は最初から「必ず和解する」と言ってきました。なぜなら、マクドナルドは「これが店長の仕事だ」という118カ国に及ぶノウハウを、訴訟上の証拠として企業秘密のため具体的に開示することができません。それゆえ、高裁までマクドナルドが負ける判決が出ました。また、店長には本来、スタッフの採用・評価権限や、店舗の長期経営計画の立案権限もある。訴えた店長は人を雇いきれなかったから、自分がクルーの仕事を担っていたのでしょう。つまり、マネージメント能力がなかったのだと思います。彼を店長に採用し、降格させることができなかった上司にも責任があるといえます。こうした状況への反省もあり、現在のマクドナルドでは、クルーを増員する一方、店長になる人間の能力向上を目指す体制を敷いています。

──経営改革において、CEOである原田氏の果たした役割とは?

山口 アップルコンピュータ出身の原田さんは、標準化やシステム化が非常にうまい。つまり、ローコスト化を柱とする本社の世界戦略を忠実に実行し、それを維持するには最高の人材だったんです。

──一方で、日本マクドナルドが本社の世界戦略に組み込まれてしまい、藤田時代の良さが失われているのでは、との見方もありますが。

山口 藤田さんは創業経営者なので、"いろんなものを生み出した"と誤解している人が多いのですが、彼は米国マクドナルドを100%真似して、日本化を図っただけなんです。つまり、英語のマニュアルを日本語に翻訳したということ。このような日本化の段階はすでに終わっていると見ていいでしょう。その上、現在では顧客のニーズが先行して変わっていく状況になってきており、それにどう対応していくかということが一番の課題になっている。そのひとつの答えが、24時間営業だったといえます。

──しかし、「クォーターパウンダー」の発売日に、サクラで長蛇の列を作らせる演出など、原田体制には批判も少なくありません。

山口 そういった問題点の表面化は原田体制の終焉の表れのひとつなのかもしれません。創業経営者である藤田さんはそうした作りごとは絶対許さなかったし、これは原田さんの勘違いといえるかもしれない。原田さんに限らず、サラリーマン経営者の落とし穴ですね。原田さんが自分の横に、豊臣秀吉に対する竹中半兵衛のように、苦言を呈する人材を置けるかどうか。大きな経営方針は間違っていないわけですから、しっかり足元を見てほしいですね。

山口廣太(やまぐち・こうた) 
1936年生まれ。パート・アルバイトの「戦力化システム」と「生産性向上システム」の第一人者として、講演・執筆・システム開発指導を行う。著作は『管理職必携! パート・アルバイト戦力化プログラム』(労働調査会)など多数。

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『100円マックのホスピタリティ』 全従業員の95%がパート・アルバイトである外食産業の雄・マクドナルド。03年には破産寸前とまで言われた同社の経営を立て直した、従業員たちの"ホスピタリティ" "グローバル戦略"などを、イラストを交え解説。 (山口廣太 著、夏木れい 画/H&I(08年)/2000円)

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