映画&テレビ映像エンタメ業界をさわがせる破天荒夫婦が語る「映画と生活」

脚本家としての名を世に知らしめた映画『百円の恋』から、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』を経て、いまやすっかり売れっ子の一人となった映画監督・足立紳。巷では〝中年の星〟とも称された四十路を過ぎての劇的ブレイクまでには、どんな〝家庭内闘争〟があったのか。当人と妻・晃子さんが赤裸々に語る、夫婦二人三脚の内実とは──!?。

(写真/宇佐美亮)

──映画『百円の恋』(14年)公開当時、足立さんは42歳。ご自身でもやはり、「これでダメならあきらめよう」と?

足立紳監督(以下、足立) いやもう、それ以前にあきらめていて、「俺は専業主夫になる」と決意して、完全に主夫してました。ただ、やっぱり欲深いところもあるから、「一本でもいいからとにかく世に出したい」って思いも捨てきれなくて。家事育児の空き時間を使って、脚本を書きためるってことだけは続けていたんです。

足立晃子さん(以下、晃子) 実際、粘ってましたね。なんの仕事もないのに。しかも足立は、こちらがびっくりするほど自分でお金が稼げない。どんなバイトもクビになっちゃうから、私としてもそこはしんどかったし、ずっと歯がゆかったですよ。

足立 悪気はないんですけどね。コンビニとか深夜でヒマだから持参したマイチェアで、売りものの新聞を堂々と読んじゃったり。客がいなくても立ってなきゃいけない、みたいな謎ルールに馴染めなかっただけなので。

晃子 なんかもう発想が、映画に出てくるアメリカの個人商店のそれなんで、そもそもが日本のシステムに向いてなくて。それでいて、両親からずっと仕送りをもらってたりとか、お金で苦労した経験もないから、ものすごくタチが悪いんです。ずっとヒモのくせに突然、グラム何千円もする肉を買ってきちゃったりも平気でするし……。

──そんな夫を、それでも支え続けられたのはなぜなんでしょう?

晃子 純粋に面白かったんですよね。学生時代に自主映画で出会って、社会人になってからは他の人とお付き合いをした時期もあったけど、「いちばん面白いのは足立紳」って思いは変わらなくて。それで「こいつをどうにかしなきゃ」となっちゃった。当時はもうそれこそ、後先も見ずにそう思い込んじゃってたところもあったので。

足立 だから僕自身は、そこにすごい罪悪感があったんですよ。「俺にそこまでの才能はない」と自分でもわかっているのに、それを「面白い」と信じ切っている彼女が、なんだか不憫でならなくて。もちろん彼女がいたからこそ、粘ることもできたわけですけど。

晃子 たぶん、私も意地だったんでしょうね。『喜劇 愛妻物語』(20年)のときに映画評論家の内海陽子さんがそこに言及してくださっているのを見て、自分でもすごく腑に落ちて。普通の感覚だったら、とっくに愛想を尽かしてますからね。

──その『愛妻〜』では、水川あさみさん演じる妻の常軌を逸したドケチっぷりも描かれていましたよね。

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足立 あんなのは序の口ですから。劇中では試飲用ワインをこっそり水筒に入れたりするシーンも描きましたけど、それと似たようなことは平気でやっちゃう。お風呂のお湯も半分ぐらいしかためさせてくれませんし……。

晃子 んなわけないでしょ。みんな信じちゃうでしょ! そもそもこの人は満杯の湯船で、ザッバーンとやりたいだけですしね。私は無駄な出費はしたくないってだけで、価値があると思えるものには惜しまず払いたいとも思ってる。だから、超貧乏なのに足立の撮る映画に出資したりもするわけで。

足立 そういう妙なこだわりのせいで大損したりもしてるんで、トータルではわりとマイナスな気もしますけどね。娘が生まれたときには、結局詐欺だった安愚楽牧場に、貯金を全額突っ込んじゃったりもしてますから。

晃子 またそれ言う? ことあるごとに毎回言うよね。あれはいただいた出産祝いをどうにか有効に使わなきゃ、と考えたすえの判断だったの。無職の夫を抱えて産休入りした私の気持ちにもなってみろっての。まぁ、有効もクソもなかったのは確かだけど……。

──とはいえ、『ブギウギ』以降はそうしたジリ貧生活からも脱却。取り巻く環境も激変したわけですよね?

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