――日本屈指のコンポーザーとして知られる真部脩一が、ボーカリストにHinanoを迎えた新たな音楽プロジェクト〈Widescreen Baroque〉を始動させた。リリースされたばかりのシングル「Door to Door」を引っ提げ本誌で語るのは、“オカルト”への偏愛である。
(写真/江森康之)
時空の扉は音楽の中にあるのかもしれない──。そう感じさせてくれるのは、元相対性理論で今や日本のポップシーンを牽引する音楽プロデューサー・真部脩一だ。6月9日に始動したばかりの新プロジェクト〈Widescreen Baroque〉の1stシングル「Door to Door」は、まさに時空を飛び回るような楽曲だ。
バロック的な構築美と、スクリーンの向こうに広がる幻想世界。その狭間に立ち現れる音像は、過去と未来、現実と非現実を行き来する。「15歳の自分に向けたメッセージ」として生まれたという本プロジェクトについて、そして彼が長年偏愛してきた〝オカルト〟へのまなざしについて、じっくりと話を聞いた。
新プロジェクトは“趣味の音楽”から誕生
──まずはじめに今回このプロジェクトを始めた経緯から教えてください。
真部脩一(以下、真部) 僕は大学在学中から音楽を仕事として始め、紆余曲折ありながらも続けられている中で、ある時、今自分がこの職業を失ったら「自分は音楽を作るのかな?」と思ったんです。もともと中高校時代から趣味で音楽を作ったりしたことはなくて、大学在学中にバンドに誘ってもらったり、いろいろきっかけが重なって音楽を作り始めたんですね。たまたま早い段階で音楽を仕事にするチャンスに恵まれたので、果たして「趣味で音楽を作れるのかな?」という思いからやってみようと思ったのが始まりです。仕事とは別に、本当に自分の趣味嗜好を完全に反映したものとして細々と作っていたというのが一番最初です。
──プロジェクト名にはどういった意味が込められているのでしょうか?
真部 これはSFのジャンルのひとつなんですが、タイムリープとテレポーテーションが同時に存在するタイプの総称で、「時空間を飛び越える」みたいな意味があります。
──確かに「Door to Door」を聴いて、いろいろな時間軸や世界観を行き来する印象を受けました。この時空を行き来するような世界観は、真部さんの素の部分が現れているのでしょうか?
真部 そうですね。そもそも僕がこのプロジェクトを始めたきっかけが「15歳の自分に対するメッセージ」だったので、僕の誇大妄想というところは大きいかもしれませんが、「10代の自分の感動は、どういうものだったかな?」という思いが強くあります。
──今月号の特集のひとつに「偏愛」というテーマがありますが、真部さんは「オカルト」への偏愛があるとうかがっています。そのきっかけはホラー映画だったそうですが、そもそもなぜ傾倒されたのでしょうか?