――自身が被写体となったドキュメンタリー映画『選挙と鬱』が劇場公開中の水道橋博士。政治、選挙、マスコミ、映画、そして病気について、包み隠さず語り尽くした。
(写真/宇佐美亮)
参院選に「れいわ新選組」から立候補して初当選。しかし、うつ病を発症し、6カ月で国会議員を辞職。2022年の水道橋博士は、天国と地獄を味わった。博士の政界出馬から、議員辞職とその後を追ったのがドキュメンタリー映画『選挙と鬱』だ。政治と精神疾患というシリアスな2つの題材を、『東京自転車節』(21年)で知られる青柳拓監督がユーモアとペーソスを交え、広く共感を呼ぶ内容に仕上げている。体調が回復し、芸能活動を再開した博士に、カメラには映らなかったブラックボックス部分を語ってもらった。
「そもそも選挙に出る気はまったくなかった。反スラップ訴訟法案を『れいわ新選組』の山本太郎に直訴したことから、僕自身が出ることになったんです。過去にも2度ほど他の党から出馬要請されたことがあったんですが断っていました。東国原(英夫)さんが選挙に出た際に、出演していたテレビ番組が終わり、末端にいるスタッフが仕事を失うのを見ていたので、それはしたくなかった。でも、そのときの僕はテレビのレギュラーはなかったんです。『出るなら、今しかない』と妻と子どもに話し、出馬を決めました」
モハメド・アリの名言「Me,We」を公約に掲げ、各地を遊説する博士。日本維新の会(当時)の松井一郎、自民党の麻生太郎らと接近遭遇し、緊迫する場面も。
「大物政治家を巻き込んでいくのは、僕が大好きなサシャ・バロン・コーエン主演のモキュメンタリー『続・ボラット』(20年)を意識したもの。選挙は大変だったけど、すごく面白かった。演説と演芸は共通するものがあって、場数を踏むとうまくなるんです。選挙中はアドレナリンが出まくっていました」
だが、8月の国会初登院から程なく11月には休職届けを出すことに。国政の重圧から発症したように思われているが、別の要因もあったようだ。