ライブのMCともテレビバラエティとも違う――純度100%片寄涼太、忖度なしに言葉をつむぎ上げた往復書簡
(写真/永峰拓也)
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小誌ではかねてより、読書を愛するEXILE TRIBEメンバーに誌面に登場いただいている。その系譜にまた1人。GENERATIONSボーカルにして、ドラマ『3年A組』(日本テレビ系)などで俳優としても活躍する片寄涼太が加わった。
「読むのが遅いんです」とはにかむ片寄が、強く影響を受けたのはアドラーの心理学を説いた『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)だという。
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「20歳を越えた頃から、そういった哲学的なものや自己啓発的なものを読むようになりました。最近だと『FACTFULNESS』(日経BP)も面白かったです。そこに書いてあることをそのまま生きるすべのヒントにするというよりは、全然別の角度で考える人もいるんだと知ることが安心感につながるなって。『普通でいなきゃいけない』『型にハマらないといけない』と思ってしまう日本人らしい感覚を、『そんなこともないんじゃない?』って少し楽にさせてくれるようなところが、そういう本や作品にはあるんだと思います」
10月末には、初の著書となる『ラウンドトリップ 往復書簡』(新潮社)を刊行。10代の頃から親交の深い作詞家・小竹正人氏と、互いに宛てた書簡集だ。連載が始まったのは2020年春、まさに緊急事態宣言下でのこと。いつものような活動ができない日々の中で、2人の筆は過去現在未来と自由に飛び回る。片寄が執筆した回に、こんなエピソードがある。
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年末に乗ったタクシーの運転手から「この時期だから役所に用事ですか」と話しかけられ、雰囲気を壊したくなくて話を合わせてしまった。いざ降りる段になって、本当の目的地は少し先なのに、結局役所のあたりで降りてそちらに歩くフリまでしてしまった――。
そのエピソードから片寄はつづけてこう綴る。
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〈ちょっとこの表現は好きじゃないけれど、言い換えるなら空気を読んでしまう。これはまさにいま自分が、良いのか悪いのか迷ってしまうところでもあります。……まあずっと悩んできたことでもあるのですが。ただ、少なからずそうしてきて後悔はないです。〉
筆者がこの一連のくだりが好きだと伝えると、「『どっちやねん』って感じですよね(笑)」と大阪人の顔をのぞかせた。
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「でも文章では比較的空気を読まなくてよかったからこそ、忖度なしにいろんなことを書けたんだろうなと思います。普段自分の言葉でしゃべる場面でも、たとえばライブのMCは流れもあるし、ファンのみなさんの雰囲気もあるし、そこで空気を読む部分があります。それは絶対必要なことなんですよね。バラエティも、短くしゃべらないとコメントとして使われなかったり、自分のテンポで話すことは難しい。今回、自分で考えて自分の言葉を組み上げるのは、すごく楽しかったです。なんだろうな、テレビに出てライブですごいド派手な衣装を着てステージに立ってパフォーマンスしている人も“人”なんだなって感じてもらえたら、すごくうれしいですね」
(文/斎藤 岬)
(写真/永峰拓也)
(ヘア・メイク/KOUTA)
片寄涼太(かたよせ・りょうた)
GENERATIONS from EXILE TRIBEのボーカル。2012年にデビュー。14年にドラマ『GTO』(関西テレビ/フジテレビ系)で俳優デビュー。ドラマ/映画『兄に愛されすぎて困ってます』『PRINCE OF LEGEND』映画『午前0時、キスしに来てよ』ドラマ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日テレ系)『病室で念仏を唱えないでください』(TBS系)などに出演し、俳優としても活躍の場を広げている。GENERATIONS、26枚目のシングル「Unchained World」が発売中。
『ラウンドトリップ 往復書簡』(新潮社)
片寄涼太・小竹正人/1650円(税込)/発売中