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「マル激 TALK ON DEMAND」【170】

ブラインドサッカーの楽しみ方と障がい者への潜在態度

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――ビデオジャーナリストと社会学者が紡ぐ、ネットの新境地

[今月のゲスト]

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松崎 英吾(まつざき・えいご)
[日本ブラインドサッカー協会専務理事兼事務局長]

1979年、千葉県生まれ。2003年国際基督教大学教養学部卒業。同年、ダイヤモンド社入社。2007年、日本ブラインドサッカー協会事務局長に就任、18年より専務理事を兼務。


8月24日から、東京オリンピックに続いて東京パラリンピックが開催される。数あるパラスポーツの競技の中でも日本ブラインドサッカー協会は40人もの専従職員を抱え、最も成功を収めている団体となった。今回はブラインドサッカーを入り口に、パラスポーツの魅力から、パラリンピック開催の意義や障がい者に対する意識などについて考えてみたい。

神保 今回は「ブラインドサッカーに学ぶ、パラリンピックを100倍楽しむ方法」というテーマを企画しました。ブラインドサッカーを入り口に、パラリンピックの意義や、これは少々意外に思われるかもしれませんが、人間の能力の限界についても議論していきたいと考えています。

ゲストは僕にとってはICU(国際基督教大学)の後輩であり、学生時代にはビデオニュースでアルバイトをしてくれていました、日本ブラインドサッカー協会の専務理事で事務局長の松崎英吾さんです。

松崎 よろしくお願いします。ここに座れて光栄です。

神保 僕は自分自身がラグビー経験者ですし、その後も長年いろいろなスポーツを見てきて、それなりにスポーツを見る目は肥えているつもりだったのですが、松崎さんからブラインドサッカーの面白さを教わるまで、障がい者スポーツの醍醐味というものをまったく理解できていませんでした。今回それを実感できたので、ぜひ皆さんにお伝えしたくて番組を企画しました。

宮台さんは、トップクラスのブラインドサッカー選手が、どこに味方選手がいるかを含め、どうやって空間を認識しているかを考えたことはありますか。

宮台 今『海馬を求めて潜水を──作家と神経心理学者姉妹の記憶をめぐる冒険』(みすず書房)という非常に面白い本が出ており、脳の可塑性について事例が書かれています。例えば、ロンドンでタクシーの運転手資格を取得するのは非常に大変で、日本の比ではないのですが、そこで資格を取得できる人は、実は後頭葉、脳の後部が非常に発達しているのだそうです。古典的には空間認識の自動化という問題で、脳で処理しないと、視覚が自動化された行動に結びつかない。つまり、言葉で考えて迷うことになります。

神保 論理とイメージの違いですね。そんなことも意識しながらブラインドサッカーの選手のプレイを見ると、目が見えているとしか思えないようなプレーが随所に出てきます。まずは入門編として基本的なルールから見ていきましょう。

宮台 誰が参加できるのか、「目が見えない」というのはどういう意味なのか、ということが知りたいです。

松崎 国際的には医療上「視覚障がい者」と定義される必要があります。医療上、完全に見えない、ないし光だけ感じられるぐらいの人がプレイヤーとなり、4人、ピッチの中に入ります。フットサルと同じく5人制で、1人がゴールキーパーなのですが、これは目が見える人なんです。つまり、見えない人が、見える人からゴールを奪う、というのが少し逆説的で、このスポーツの面白いところかなと思います。

神保 ただし、目が見えるキーパーは、ゴール前の小さな枠内でしかプレイできません。フィールドプレイヤーはなぜアイマスクをしているのでしょうか。

松崎 実はアイマスクの下に絆創膏のようなアイパッチまでしています。まったく目が見えない人に対して、「光覚」といって光が感じられる人の優位性はかなり大きいので、まったく同じ条件にするために、光も入らない状態にしています。

神保 フィールドプレイヤー以外に、ゴールの後ろから選手に声をかける「コーラー」がいますね。

松崎 今は「ガイド」と言っています。攻撃するゾーンに対して声を出すことができ、距離や角度、また相手のディフェンスの動きなど、音声的に情報を入れたほうがいいものを伝えます。うまくなるほど、より戦術的になり、初心者ほど、自分がどこにいるのか、というような基本的な情報が多くなりますね。

神保 ほかにサイドライン付近にいる監督と味方のゴールキーパーの合わせて3人が、フィールドプレーヤーに声で指示を出すことが許されています。あと、フィールドが守備エリア、中盤エリア、攻撃エリアの3つに分かれていますね。

松崎 特徴的なのは、フィールドの横に高さ1メートルから1・2メートルくらいのフェンスがあることです。フィールドからボールが出るたびにプレーが途切れてしまってはスムーズに試合ができないので、フェンスにぶつかって返ってくるようになっています。

神保 そこはアイスホッケーと似てますね。フィールドが3つに分かれているのは、エリアごとに異なるルールが適用されるのですか。

松崎 まさに声の部分で、監督、キーパー、ガイドと、各チーム3人、計6人の目が見える人がいる中で、反対側のエリアにまで声を届けようとしたり、言いたい放題になってしまうと、ピッチの中が混乱してしまう。興奮するとどんどん声を出してしまってカオスになるので、声をかけられる範囲を限定しているんです。

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