サイゾーpremium  > 特集  > 社会問題  > 【井田裕隆】に聞くAV男優像

――2019年1月、YouTubeで公開された「AV男優を目指す男の密着ドキュメンタリー」動画がネットで話題となった現在進行形の若手ポルノスター、井田裕隆。「AVにも出てるし、YouTubeで性にまつわる動画を定期的にアップしてるし、ゲイビにも出演してる」24歳の彼が考える“現在のAV男優のあり方”を問う。そこから見えた性文化における男らしさとは――。

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(写真/宇佐美 亮)

――YouTubeチャンネル「JAPORN BOY」の登録者数は11万3000人。まさにAV界に現れた期待の新星といえる井田さんですが、ポルノの道を志したのは、何がきっかけだったのでしょうか?

井田裕隆(以下、井田) ある女の子とセックスをしたときに、一晩で13回射精したことです。野球部でホームランばかり打つ部員がいたら、プロ野球の道を選びますよね。それと一緒で、この回数を誇れるのなら、ポルノの道を選ばない理由はないと思ったんです。

――なるほど。“ポルノの才能”を持って生まれたと。そういう片鱗は幼い頃からありましたか?

井田 性の目覚めは4歳の頃です。親父の部屋にあったエロ本をこっそり読んだり、スポーツ新聞に載っているエロいグラビアを、親が使わなくなった古い携帯で撮影しては、持ち歩いているような幼稚園児でした。

――幼稚園児で携帯にエロデータを保存!? まさにデジタルネイティブ……しかも4歳で性の目覚めというのは、かなり早熟だと思いますが、その後の井田少年はどう成長していったのでしょうか?

井田 成長してからはオナニーに没頭して、イキすぎたオナニーばかりやっていましたね。特に高校2年は、童貞ながら性欲のビッグバンが訪れた年でした。例えば、中学の卒業文集のクラススナップや個人写真で、カメラ目線で写っている女の子たちを「僕のことを見てる」って妄想して、文集にサランラップをかけて「全員に顔射してやった!」と喜んだり。ほかにも、同級生に2人、巨乳の女生徒がいたんですが、下校のタイミングで彼女たちの家の前を通っては、干してある下着を目に焼き付け、帰宅後に思い出して物思いにふけったり。でもそのうち、わざわざ現場まで見に行くのが面倒になって、グーグルのストリートビューで、干してある洗濯物を見つけて喜んでいました。

――初体験はいつ頃ですか?

井田 大学に入学した18歳の5月、出会い系で知り合った女性が相手だったんですが、身を委ねる形でイカせていただきました。

――高2の性欲ビッグバンとは、若干のタイムラグがあったんですね。

井田 それまでは男友達との友情が最優先で、ムラついてはいたけど彼女もいなかったし、そうした機会に恵まれなかった。童貞を卒業してからは一気に加速しましたね。(童貞を捨てた)その月の間に6人の女性としましたし、その経験から男として自信が持てたのか、彼女もできてナンパもできるようになりました。

――童貞を捨てたことが男性としての自信につながった?

井田 間違いないと思います。女性器のある場所を理解するだけで強くなれる。

――それからわずか5年後に“AV男優”と呼ばれる存在になるわけですが、そこに躊躇や葛藤はなかったですか?

井田 確かにポルノの道へ進むことに恐怖感はありました。今でこそ饒舌に語れますが、対外的な評価はどうしても「エロビに出た人」になってしまうので。

――それでも、ポルノの道に進むことを決意したのは、どういった経緯があったからでしょうか?

井田 もともと親しい先輩で、今は僕の所属する株式会社ハイボールの社長を務める大田卓矢さんが開設した「オオタTV」というYouTubeチャンネルがあったんです。そこで19年の1月に「記念に残しておこうぜ」くらいの遊びの気持ちで、僕のAV出演ドキュメンタリー動画を公開したのがネットでバズったんですね。その頃、僕は大学在学中で不動産会社でインターンもしていたんですが、宅建の資格も取得し、そのまま就職しようとも思っていた。けれども、(バズった感覚を)もう一度味わいたい気持ちがあって、「ポルノを極めよう、YouTubeで配信していこう」という判断で、内定を辞退しました。

――ずいぶんと思い切った人生の舵取りですが、迷いはなかったですか?

井田 そのまま不動産会社に就職していれば、10年後くらいに年収はマックスで2000万円くらいになる可能性もあったんですが、「それって、今の自分のリアルな幸せなのか?」って思ったんです。もちろん、お金も好きなんですけど……実はうちの母親が、ある精神病なんです。自殺未遂も経験しているし、普段は24時間中、1秒も笑わない。だから僕は幼少期から目の前の母親、たったひとりを笑わせることに力を尽くしてきた。僕のしたことで母が笑ってくれると、息子としてうれしい、そんな核が常に自分の中にあるんです。

――「人に楽しんでもらいたい、笑ってもらいたい」というポジティブなマインドが根底にあるんですね。

井田 (会社の)大田社長も「井田は絶対に才能がある。世の中には表に出る人と裏方の人がいて、おまえは表に出るべき。俺は裏方に回る」と言ってくれたんです。こんな何者でもない僕を信じてくれる人がいることが、男としての価値を大きく上げてくれました。

――そんな井田さんを“AV男優”というくくりに入れるのは、ちょっと違う気もしてきましたが、ご自身ではどう考えていますか?

井田 僕としては「YouTubeにも出るし、AVにも出る」っていうスタンスです。ただ世の中的には、一度でもAVに出れば「AV男優」と呼ばれる風潮があるので、そこに違和感は覚えています。AV男優という職業は、職人の仕事だし、ずっと出演していて名乗れるものだと思うんですね。僕はその道だけを極めようと思っていないので、現役のAV男優さんに失礼かなと。なので、自分からは名乗らず、「AVに出る人」「YouTubeにも出る人」でもあり、「ポルノに携わる人」でもあるんです。

――AV出演はあくまでも活動のひとつであって、主軸というわけではない。にも関わらず、さまざまなジャンルのAVに出演されていますよね。

井田 女優さんとの絡みはもちろんですが、ゲイビデオにも出演してます。AV男優は汁男優からコツコツ地道にのし上っていくパターンが多いらしいんですが、僕の場合はYouTubeのおかげで監督さんから直にオファーされることもあって、「キミは飛び級男優」って言われたりもします。

――飛び級はすごいことでもある一方で、実地経験がそこまでないのに、重要な任務に抜擢される場合もあると思うのですが、実際の現場ではどうですか?

井田 常に撮影は緊張します。女優さんとの絡みがある初めての撮影は、僕の顔にモザイクがかかる条件で、現場のスタッフも僕のことをまったく知らなかったので、調子よくイケました。逆に今は、現場で僕のことを知ってくれている人が多くて、そのような状況下でのセックスはメンタル的に厳しく感じるときもある。プレッシャーに勝てず勃たないことも多々あります。監督からは「ダメポルノ野郎」っていじってもらえましたが、もちろん、勃起に固執する監督もいるので、「知名度だけ先行して、実力がないな」とこっぴどく叱られた経験もあります。AV男優を極めるのなら、実力へのお叱りは甘んじて受けなくてはならないのですが、僕の場合は「AV男優だけに、なりたいわけじゃない」ということを再確認した、いい機会になりました。

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(写真/宇佐美 亮)

――では、井田さんが目指しているのは、どういったものなのでしょうか?

井田 日本にはたくさんのエロがあふれてますよね。風俗だけでもピンサロをはじめ、オナクラ、ファッションヘルス、ソープ、デリヘル、M性感……知られるべき性の文化があって、僕はそれを日本だけじゃなく、海外へも発信したいと思ってるんです。

――AV男優というのも、日本のエロ文化のひとつ。ゆえに、そこにももちろん携わるけれど、その先も見据えていると。

井田 そうです。一般的には名前が知られていなくても、エロに足を一歩踏み込んでいれば誰もが知っている有名なAV男優さん、顔と名前が一致しなくても作品でよく目にするベテランの男優さんなど、たくさんいますよね。でも、そのほとんどが黒子に徹している。けなすわけじゃないけど、中には20代の若手でも、そうした動きをしていて「彼らはなんで男優になったんだろう?」と感じてしまうことがあって。森林原人さんやしみけんさんは、SNSを使って性文化を発信されていて、大きな影響力を持っていると思うんですが、それを下積み世代が許されない風潮には、あまり賛同できないんです。アダルト業界って、どうしても「年功序列、出る杭は打つ」といった傾向が強い。僕のことを「中途半端なAV男優」と思って、嫌っている中堅の方々はたくさんいると思いますしね。だったら、自分も何かアクションすればいい。僕は正しく、空いていたポジションで仕事をしているだけです。

――理解できないものは、脅威に感じるっていうことがあるのかもしれませんね。

井田 生意気かもしれませんが、僕自身、狙ってやっているわけじゃないんですね。この間も某監督に「最近こんな男優を見かけたけど、めっちゃウザい」とツイッターで書かれたことがあって悔しかった。自分が考えている見せ方と、人からの見られ方は違うものなんだな、と。

――言動が物議を醸してしまうのは、変革児の宿命かもしれません。が、井田さん自身がポルノに携わるようになって、何か気持ちに変化は生まれましたか?

井田 AVの撮影で男性とのセックスを経験したんですが、衝撃的だったし、すごく楽しかったんですね。今までの自分はなんだったんだろうか、むしろ24歳で男性と経験したのは遅かったんじゃないか? って思わされました。それまでは、LGBTQって自分とはあまり関わりのない分野だと思っていたけど、僕が女性を好きなように、男性が好きでセックスを楽しんでいる男性の方もいる。だから性別を二元論で語るのは、イケてないなと思えるようになりました。

――他人のペニスも、抵抗感なく受け入れることができましたか?

井田 抵抗はなかったです。これまで僕が見てきた世界だと、女性は男性器をフェラチオし、精子を飲んでくれることもあった。だから、僕が男性器を舐めることにも、それほど違和感は覚えなかったですね。あとはニューハーフの方とセックスしたときに感じたことなんですが、そうした風俗店って「罰ゲームとして行ってこい」みたいな風潮があったりするじゃないですか。それは配信している動画でも言っているんですが、失礼な話ですよね。とは言っても、偽善だけじゃビジネスは回らない。そういう意味でも、性はいろんな方面に目を向けていかないといけないと感じています。

――性に関しての視野が変わったことで、自身の男性観/女性観にも何か変化は?

井田 正直なところ、アダルトの道に進むと決めたときは、これから先の一生、恋愛も結婚もできないだろうなって思ってました。AV男優という仕事は不特定多数とセックスするわけで、どんなに人間的魅力があっても、女性には理解してもらいにくいんじゃないかなと。でも、YouTubeを通して、いろんな人を認知することで、そういったことを受け入れてくれる女性も存在するんだなってことに気がつきました。それこそ今の僕に対して「付き合いたい」とか「結婚したい」とか言ってくる人もいてくれて、愛と性愛は別だと、割り切ってる人がいることを知りました。そういう人は、なぜか人妻とかバツイチの女性に多いんですが……それはさておき、僕もひとりの男として恋愛していいんだなって。

――では、自分から愛したいという女性ができて、もし「ポルノをやめてほしい」と言われたらどうしますか?

井田 それはやめないと思います。仕事が優先です。

――なるほど。ポルノは仕事でもあり、生き様でもある、と。

井田 ですね。僕の夢は世界に日本のエロ文化を伝えること。そして、猥褻とは何か、なぜエロビデオにモザイクが必要なのか? 表現の自由とは何か……エロに関する法律を変えたいんですね。あとは以前、(SODの)高橋がなりさんが、相当な予算をかけて『地上20メートル空中ファック』なんて作品を作ったりしていましたが、それを超える作品を作りたいという夢もあります。しっかりとメイクマネーして、世を震撼させる何かを作り上げる。小さな夢だったら、唾液フェチなので、唾液のお風呂に浸かりたいし、未来でいえば、幸せな家庭を築きたいです。周囲からは「ならAV出るなよ。矛盾してるだろ」と言われることもありますが……でも、僕ってハッピー野郎なんですよ。現状、電話番号と住所以外の個人情報を晒している状態。顔も性癖もお尻の穴まで。その状態で不幸になりたくないし、負けられるわけがない。これってベンチャーマインドですよね!

――では最後に、井田さんの思う男らしさとは何でしょうか?

井田 これは僕個人の考えではあるんですが、好奇心旺盛で初めてのことに対する敷居の低さ、なんでもやってみようと思える心構えですかね。ゲイビデオに出演したときに「6人の男性の精液がかかったピザを食べる」という企画があったんです。僕はなんの疑いも持たずにおいしく食べたんですけど、監督から「キミは性別を超越してるね」って言われたことがあって。そういった存在として認められることが、この仕事をしていく上でたまらなく気持ちいいんです。

大泉りか(おおいずみ・りか)
1977年、東京都生まれ。官能小説家。SMショーのM女やキャットファイターなど、アンダーグラウンドな世界にどっぷりと浸かった20代を過ごす。04年に『ファック・ミー・テンダー』(講談社)を上梓。以後、官能小説や性愛をテーマとしたエッセイ、ルポタージュなどで活躍。
Twitter〈@ame_rika

(文/大泉りか)
(写真/宇佐美 亮)

井田裕隆(いだ・ひろたか)
1996年、千葉県生まれ。YouTubeチャンネル「JAPORN BOY」での動画配信をはじめ、男女を問わぬポルノ作品への出演、日本発の18禁SNS『フクロトジ』の運営など、日本の性文化をわかりやすく、かつユーモアをもって伝搬する、新世代のポルノスター。
Twitter〈@idhr78
Instagram〈idhr7

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