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丸屋九兵衛の「バンギン・ホモ・サピエンス」【9】

【バンギン・ホモ・サピエンス】ショーン・コネリー――北方の巨星、世を去る

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――人類とは旅する動物である――あの著名人を生み出したファミリーツリーの紆余曲折、ホモ・サピエンスのクレイジージャーニーを追う!

ショーン・コネリー(Sean Connery)

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(絵/濱口健)

没地はバハマのナッソー、それもまたカリブ海と縁が深いボンドらしい! カルトな『未来惑星ザルドス』の赤パン、中世謎解き名作『薔薇の名前』での修道士役、『ハイランダー』のエジプト剣士など、007以外の出演作も素晴らしいぞ。

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(絵/濱口健)

 オダギリジョーといえば、「倖田來未サイン事件」と『仮面ライダークウガ』に対するラヴ&ヘイトだ。

 オダギリはクウガについて語りたがらない。作品名すらプロフィールに掲載していない。そもそも彼は、最初から特撮ヒーロー作品に強い抵抗感を抱いていたし、出演オファーも断るつもりでいたらしい。一方、同番組のキャストやスタッフとは交流が続いているという。

 出世作への愛憎相半ばする想い。それは本稿の主役も同じだ。

 のちにサー・ショーン・コネリーとして知られるようになるトーマス・ショーン・コネリーは1930年生まれ。故郷はスコットランドの首都エジンバラ、ファウンテンブリッジという地区だ。オフィシャルサイトによれば「エジンバラの労働者階級のネイバーフッド出身というハンブルなビギニングには、やがて達成する偉業をうかがわせるものはなかった」。家計を助けるため(おそらく中学で)学業からドロップアウト、エジンバラ生協で牛乳配達の職に就いたという。

 16歳で海軍に志願入隊するも、一族に伝わる持病の十二指腸潰瘍のために19歳で除隊。その後はトラック運転手や棺桶磨き(?)などさまざまな仕事に就く。重要なのは、除隊少し前の18歳から始めたボディビルだ。そこで鍛えた肉体を活用し、ライフガードや美術モデルも兼業。彼をモデルに何枚もの絵を描いた同い年の画学生──のちにスコットランド美術界を盛り上げ、やはり「サー」の称号を持つことになる──リチャード・デマルコは、当時のショーンを振り返って「言葉で語るにはあまりに美しく、まるでギリシア神話の美少年だった」と評している。ただしサー・ショーンはほどなくボディビルに幻滅してしまう。「筋肉量減少を恐れてスポーツになぞ参加しないアメリカ勢のほうがコンテストで常に有利」という現実に気づいたからだ。

 そう、サー・ショーンは相当なアスリートでもあった。セミプロのサッカー選手として活躍し、マンチェスターUにスカウトされたこともある。しかし、「とても惹かれたが、その時点で私は23歳。サッカー選手は30歳になる前から下り坂になることもある。だから俳優を目指すことにした」とはサー自身の弁である。

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映画『007』シリーズ、不動のジェームズ・ボンドといえば、やはりショーン・コネリー。数多くの名作を残した彼は、去る20年10月31日にこの世を去る。享年90。

 50年代初頭に舞台(ミュージカル)の端役からスタートした彼がブレイクの機会をつかんだのは62年。『007』シリーズの第1弾、『ドクター・ノオ』の主人公ジェームズ・ボンドの役を射止めたのだ。

 しかし原作者イアン・フレミング(イングランド人)はサー・ショーンを見て「こんなゴツすぎるスコットランド人は、私が考えるボンドではない」と難色を示した。そんなフレミングに考えを改めさせたのが彼の愛人。ユダヤ系ジャマイカ財閥の女傑、ブランシュ・ブラックウェルである(アイランド・レコーズ創業者、クリス・ブラックウェルの母)。男を見る目を持つブランシュは「ボンド役には彼のセクシーさが不可欠」と説得。最終的に銀幕でサー・ショーンが見せた存在感に感銘を受けたフレミングは、直後に執筆した『007は二度死ぬ』で「ボンドはスコットランド人」という設定を盛り込む。そう、それまでの原作シリーズではボンドのエスニシティが決まっていなかったのだ。そこにスコットランド設定が付与されたのは、ひとえにサー・ショーンのカリスマゆえ、ということである。

 以降、『ロシアより愛をこめて』『ゴールドフィンガー』『サンダーボール作戦』『007は二度死ぬ』『ダイヤモンドは永遠に』と71年までボンドを演じ、83年の他社製作番外編『ネバーセイ・ネバーアゲイン』でもボンド役に復帰したサー・ショーンは、しかし、この当たり役に対して複雑な想いを抱き続けてきた。

 降板直後はボンドのイメージが強すぎて、ほかの役を得られなかった……という事情もあるが、そもそも当初から本当はシリーズ作品に出たくなかったらしい(かつて「本格派俳優はシリーズ映画に出ないもの」だったという事情もある)。また、シリーズのプロデューサーとの仲も険悪になったため、DVD時代から盛んになる「映像特典用の新規インタビュー」にも、ほぼ登場しない。

 一方で、ジェームズ・ボンドの残り香を感じさせるキャラクターを演じることに対しては、むしろ積極的に見えた。例えばニコラス・ケイジとの共演作『ザ・ロック』では、悪名高き初代FBI長官フーヴァーの秘密ファイルを盗んだために30年も幽閉されたUK情報部員の役。いわば、違った人生を歩んだボンドの物語だ。また、ゴルフ・クラブの会員番号は007番。FCバルセロナの名誉メンバーとしての背番号も007。後輩ピアース・ブロスナンが語った通り、やはり「サー・ショーンこそがジェームズ・ボンド」なのだ、と思う。

 サー・ショーンが資金提供し、イベント出演等を通じてイメージ面でもサポートしていた「スコットランド国民党」をご存じだろうか? スコットランド議会で最大勢力を誇る中道左派政党、目標は「UKからの独立」だ。同党を支持するサーは「独立達成まで祖国スコットランドには戻らない」と言い続け、去る10月末にバハマで亡くなった。

 そんなサーの故郷、スコットランドの現状について。数年前の住民投票ではUKからの独立が僅差で否決されたが、それはBREXIT(UKによるEU離脱)前の話である。EU残留希望派のスコットランドだけに、いま再び住民投票すれば、数百年ぶりの独立が決まるのではないか。サー・ショーンの望み通りに。

(絵/濱口健)

丸屋九兵衛
ストレイト・アウタ・伏見稲荷な元・音楽誌編集者にして「万物評論家」。まだまだ続くコロナウイルス禍の中、オンライン・イベントが揺るぎなき主要業務に。2月は春節シーズンなので、【旧正月記念! アジア文化祭2021】と称してイベントを連発する予定。EXO-M考察もやる! 詳細はツイッター〈@QB_MARUYA〉にて。

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