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インタビュー
曖昧なリアルを表現するトラックメイカー

【STUTS】「ラップはずっとやりたかった」星野源も絶賛する人気トラックメイカーの挑戦

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――新鋭のラッパーにビートを提供する一方、『紅白歌合戦』で星野源と共にプレイする。領域横断的に活躍するトラックメイカーは、だからこそ最新作で“自分”を表現した。

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(写真/橋本美花)

 STUTSの名前が知られ始めたのは2013年。音を取り込んで加工・編集する機材、サンプラーのMPCを楽器のように奏でたニューヨーク・ハーレムの路上でのビートライブ映像がYouTubeで公開され、音楽好きの間で話題になった。16年には、トラックメイカーとしてPUNPEE、KID FRESINO、JJJ、呂布カルマといったラッパーをフィーチャーして制作した1stアルバム『Pushin'』を発表。ファンキーでダイナミックなリズムと、ポップで気持ちいいメロディが相まったサンプリング・ミュージックは、ヒップホップ界だけでなく幅広いリスナーを魅了した。

 大きな転機は18年に訪れる。2ndアルバム『Eutopia』を、旧知のラッパーに加え、長岡亮介(東京事変、ペトロールズ)、仰木亮彦(在日ファンク)、nakayaan(ミツメ)などとも制作。生演奏とサンプリングを織り交ぜ、ブラジリアンからフュージョン、ヒップホップ、ハウスまでミックスしたオリジナリティの高い音楽に仕上げた。さらに、『Pushin'』を絶賛していた星野源のアルバム『POP VIRUS』に参加。MPCプレイヤーというバンド・メンバーとして同年の『NHK紅白歌合戦』、翌年の5大ドーム・ツアーにも出演した。

 さまざまな現場で経験を積んだ後、STUTSの中にはあるアイデアが芽生えていた。それは自分でラップすること。これまでひそかに制作していたが、クオリティに納得できなかった。だが、多種多様なラッパーたちのやり方を見て、再び何げなくトライしてみた。すると、遊びで作っていたトラックに乗せた鼻歌のメロディがうまくハマった。そこからリリックを書き、デモも録音した。こうして生まれたのが、20年9月発表のミニ・アルバム『Contrast』に収録された「Vapor」の原型だ。

「恥ずかしくて1カ月以上、誰にも聴かせられなかった(笑)。でも、ラップはずっとやってみたかったし、まずは踏み出さないと始まらない。勇気を出して弟に聴いてもらったら『違和感ないよ』と言ってくれて、友達にも送ったら良いレスポンスをもらえた。それで恐る恐る発表しました」

 また、『Contrast』では大きな変化として、生楽器を自身で弾いて作曲したことも挙げられる。

「一般的には当たり前かもしれないけど、僕は楽器の経験がほぼない状態でビートメイカーとして音楽制作を始めているので。もちろんビートメイカー的手法でしか出ない良さはある。でも自分の幅を広げるために、生の楽器を弾いて好きな音楽を作れるようにもなりたかった。まだまだですけど。僕は常にいろんなことに挑戦して、できないことをできるようになりたい」

 STUTSには、これまでプロデューサーとして客観的に楽曲をとらえていた側面があった。だが今作は、シンガーソングライター的にありのままの自分を表現した。それゆえ、「今でも出してよかったのか確信はない」と話す。ただ、その曖昧な感覚こそが現時点の彼のリアルなのかもしれない。

「今回は“境界”がテーマだったんですけど、それはバシッと線引きされたものではなく、もっと曖昧な感じ。僕自身、内面的にいろんな狭間にいると感じることが多くて。自分が思ってる自分と、他人が思ってる自分の違いとか。自分の中にもいろんな自分がいるし。そこを揺れ動いてる。本当だったら、もっといろんな客演を呼んだアルバムを出すタイミングだったのかなとも思ったりしたのですが、今はこう作るしかなかったんです。実際、『Contrast』を出して幾分、自由な気持ちになれた」

 STUTSは自由な表現を求め、さらに羽ばたこうとする。最後に「次は何やってもいいんだという気持ちになれました」と笑った。

(文/宮崎敬太)
(写真/橋本美花)

STUTS(スタッツ)
1989年生まれのトラックメイカー、MPCプレイヤー。13年、ニューヨーク・ハーレムの路上で行ったMPCライブのYouTube動画で注目される。16年に1stアルバム『Pushin'』、17年にAlfred Beach Sandalとの『ABS+STUTS』、18年に2ndアルバム『Eutopia』を発表。そのほか、プロデュースやコラボレーション、CM楽曲制作なども行ってきた。これまでに数多くのラッパーに加え、星野源、YUKI、堀込泰行、土岐麻子らと共作。そして20年、ジャケット写真のミニ・アルバム『Contrast』(Atik Sounds/SPACE SHOWER MUSIC)をリリース。自身でラップに挑んだほか、ノイジーなギターを取り入れたダウンテンポのヒップホップ、70年代のプログレを現代にアップデートしたようなディープハウス、グライム的なアプローチの楽曲……と、さらなる音楽的な広がりと深みを見せている。MVを公開した収録曲「Mirrors」では韓国の女性シンガーソングライターSUMIN、ラッパーのDaichi Yamamotoと鎮座DOPENESSをフィーチャー。

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