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友清哲のビールの怪人【24】

“面白い”ビールを造る! 大阪発マイクロブルワリー――いつの日か、東京進出も視野に!

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――すべてのビール党に捧ぐ、読むほどに酩酊する個性豊かな紳士録。

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去る6月下旬、池尻大橋駅前のビアバー「ビールマン」を1日ジャックした川本さん。そのユニークな“作品”の数々は、東京のファンにも大人気だった。

 新興勢力がしのぎを削る首都圏に負けず、大阪でもここ数年、新たなマイクロブルワリーが立て続けにオープンしている。2018年に地下鉄・北浜駅付近に誕生した『DEPAAS DINER & BREW』もそのひとつ。オーナーブルワーの川本祐嗣さんは、もともと広告会社の営業マンという脱サラ組だ。

「お酒が大好きで、毎日のように飲み歩いていました。ある時、行きつけの居酒屋の店主が、『とにかく仕事が楽しくて仕方がない』と言っているのを耳にして、そういえば周囲のサラリーマンが愚痴ばかりこぼしているのに対し、飲食店経営者は楽しそうに働いている人が多いなと気づいたんです」

 飲食業には以前から関心を持っており、一時は真剣に転職を考えたこともあった。ならば自分もとその気になり始めたところで、タイミングよく「理想的な物件の情報が飛び込んできた」ことが独立への決定打になったという。

「資金調達より先に物件が見つかってしまったので、とりあえず手付金だけ払って、会社勤めを続けながら半年かけて準備しました。幸い出張の多い仕事だったので、出張手当を浮かせるなどして必死に資金をためましたよ(笑)」

 こうして飲食店オーナーに転身したのが、今から5年前のこと。ただし、この時にオープンしたのはブルーパブではなく、現在も運営を続けるダイニングバー『ジャンクション』(北
新地)だ。

 人好きのする川本さんのキャラクターがものを言ってか、経営は順調。大きくもうかることはなくても、サラリーマン時代よりも楽しく働ける生活を手に入れた。

 そんな川本さんが次の一手としてクラフトビールに目をつけることになったのは、ちょっとした対抗心がきっかけだったという。

「1店舗目を立ち上げる時から自前のブルワリーを併設する構想はあったのですが、調べれば調べるほど醸造免許を取得するのはハードルが高く、断念した経緯がありました。ところが、同じ大阪に僕と同じく脱サラして設立したマイクロブルワリーが存在することを知り、猛烈に悔しくなってしまったんです。さっさと諦めてしまった自分は、なんてヘタレだったのだろうかと」

 折しも商売を続ける上で、他店にはない明確な武器を欲していた矢先。今度こそクラフトビールで勝負しようと、川本さんは2店舗目の準備に取り掛かり、晴れて『DEPAAS DINER & BREW』の立ち上げにこぎ着けたというわけだ。

 ブルワー修業はいったいどこで?

「アメリカで修業を積みました。……と、言うようにしています(笑)。本当は、ほとんどネットなどで調べて独学で覚えたのですが、それだと今ひとつ箔がつかないので。でも、ブルックリンのビール工場へ見学に行ったことはあるので、あながち嘘でもないでしょ?」

 果たして、記念すべき自社製ビール第1号は、『苦渋』と名付けられたIPAだ。

「僕がこれまでに味わってきた苦渋を、ぜひ皆さんにも味わってほしいという思いで名付けました。『お前、別に苦労してへんやろ!』とよく言われますが、お金の問題やスタッフの問題など、こう見えてもいろいろ苦労してるんですよ……」

 それはともかく、初めてのIPAに対するお客さんの反響は上々で、独学とは思えぬ好スタート。以来、変わったネーミングのビールを精力的に造り続けている。

 最後に、今後造ってみたいビールを聞いてみた。すると。

「美味しいビールを造りたいとは考えていません。そういうのは、よそがたくさんやってますから。うちは今後も、面白いビールを造ることにこだわっていきたいですね」

 実際、川本さんが先日、東京都内で初のタップテイクオーバー・イベントを試みた際には、チョコミントアイス風味の「13(サーティーン)」や、ほろ苦い初恋の味をイチゴのフレーバーで表現した「苦苺」など、独特すぎるラインナップでフリークの度肝を抜いた。しかし決して味を度外視しているわけではなく、訪れた客が口々に「何これ、美味い!」、「こんなビール初めて!」と賛辞を送っていたのが印象深い。

 面白さと美味しさを両立しながら、現在は3店舗の経営を手がけ、今やすっかり実業家している川本さん。今後は経営する店舗のブランド統合を図り、早ければ今夏から秋にかけて『DEPAAS』の名称はいったん消滅。その後は『BAKビール』の新ブランドでリニューアルする予定だ。

「いつか東京進出も考えたい」と語る川本さんだけに、これは全国制覇へののろしなのか……? 乞うご期待である。

友清哲(ともきよ・さとし)
旅・酒・洞窟をこよなく愛するフリーライター。主な著書に『日本クラフトビール紀行』(イースト新書Q)、『一度は行きたい「戦争遺跡」』(PHP文庫)ほか。

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