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音楽ビジネスの世界に生き残れるのか?

RIZE逮捕で露呈……国際市場から遅れる日本ソニーの音楽事業

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連鎖する薬物の不祥事

今年になってから電気グルーヴのピエール瀧、田口淳之介、そしてRIZEのJESSEとKenKenと、アーティストによるドラッグ所持/使用の逮捕が続く。そのたびにリリース作品は、すべて出荷/配信停止の措置を執られるが、有志が動画サイトなどに音源やMVをアップし、レコード会社とのアップ⇔削除のいたちごっこも続いている。

RIZE逮捕で露呈……国際市場から遅れる日本ソニーの音楽事業の画像1
昨年4月から日本ソニーの社長兼最高経営責任者を務める吉田憲一郎氏。海外のサイトでは「音楽事業と出版事業の統合で、より高いレベルのコラボを果たす」とのコメントを述べているが、国内でのスタートはいつ?

 宇多田ヒカルや米津玄師、さらに乃木坂46など数多くのドル箱アーティストを抱え、名実ともに日本を代表するレコード会社であるソニー・ミュージックレーベルズ(以下、SMR)だが、今年に入って所属アーティストの不祥事が相次いでいる。まず、今年3月に起きたのが、電気グルーヴのピエール瀧がコカイン使用による麻薬取締法違反容疑で逮捕された事件。こちらは先ごろ懲役1年6カ月、執行猶予3年の有罪判決が下されたばかりだが、7月下旬には、ロックバンドRIZEのメンバーであるJESSEとKenKenが大麻取締法違反容疑で逮捕された。いずれのケースも、逮捕されたアーティストの「CD/映像商品の出荷停止、および店頭在庫回収、さらに音源や映像のデジタル配信停止」をSMRが逮捕翌日に発表し、即実施している。

「JESSEとKenKenが逮捕されたことよりも、毎度のことながらソニーの対応の早さのほうが話題になりました。RIZEはソニー傘下レーベルであるエピックレコードから00年にデビューし、活動休止を発表する04年まで在籍。その後、ユニバーサルやワーナーなどに移籍し、16年には古巣エピックに戻ってきますが、この数年はヒットに恵まれていませんでした。つまり、商品の販売/出荷を停止したところでそこまで影響はないのですが、相変わらずソニーの措置は敏速だなと」

 こう語ってくれたのは芸能事務所幹部のA氏。ちなみに今回のような薬物絡みの事件に限らず、違法案件全般に関して厳格に対処するというのもSMRの特徴で、例えばYouTubeにアップされた違法音源/動画に対する処置も非常に早いという。A氏が続ける。

「こうした仕事の早さにおいて、特にソニーは業界随一ですが、もっと違うところに注力したほうがいいのでは? という見方も多い」

RIZE逮捕で露呈……国際市場から遅れる日本ソニーの音楽事業の画像2『RIZE』
JESSE/金子ノブアキ/KenKenの3人で編成されるロックバンド。00年にメジャーデビュー。17年には活動20周年を迎えたが、今年7月にメンバー2人が大麻取締法違反で逮捕。

 仕事が早いSMRでありながら、その一方では旧態依然とした部分もあり、アーティストのオフィシャルのYouTubeチャンネル開設【1】は、他レーベルと比較してダントツに対応が遅れていたのも事実。また、いまだにショート・バージョンのミュージックビデオしか公開しないアーティストも多く、それもSMRの昔ながらの方針だ。詳しくは後述するが、そんな同社のシステムが「徐々に大きな実害を被るのではないか」と警鐘を鳴らすのは、元ソニー勤務スタッフのB氏だ。

「今年7月、海外のソニーミュージック・エンタテインメントは音楽事業と音楽出版事業を統合し、新しい企業グループとして『ソニーミュージック・グループ』を立ち上げると発表しました。近年、サブスク型の音楽ストリーミングが大きな収入源となっていることを受けての設立だと思うのですが、実はここに日本のソニー(SMR)は含まれていません」

 海外でも大きく報道されたこのニュースだが、SMR内ではほとんどの社員が知らず、日本のみ蚊帳の外状態であるという。今回、日本が除外された要因を音楽出版社勤務スタッフC氏が推測する。

「海外のソニーが新会社を立ち上げ、音楽ビジネスの再編をするということは音楽業界にとっては明るいニュースですが、日本が除外されているというのは不思議な話です。サイゾーでSMRとソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)に関する記事(19年7月号)が出ていましたが、前者に所属しているアーティストは、基本ソニー・ミュージックパブリッシング(SMP)が著作権を管理しているんですが、後者は同社内で管理している。しかし、『所属レーベルはSMRで、事務所がSMA』というアーティストもいるのですが、著作権の管理は一本化されていなく、そういったことで社内トラブルになることも多いようなんです」

 ソニーミュージック・グループとして音楽事業と出版事業を統合するためには、グループ内での著作権管理の一本化は必須条件となるだろう。しかし、現状それができていないSMRが外されるのは、致し方なかったのだろうか。ちなみに、ソニーと並んで世界3大レーベルといわれているユニバーサルとワーナーに関しては、すでに音楽事業と音楽出版事業を統合する形でグループ経営を展開しており、ソニーは遅れをとってしまっている。大手レコード会社勤務スタッフD氏が、先行しているユニバーサルのビジネス戦略について解説する。

「世界最大手であるユニバーサルミュージックグループは、どのレコード会社よりも、いち早くストリーミングへの投資を積極的に行い、低迷する音楽業界に『ストリーミングでも大きな利益を生むことができる』という指標を作りました。その結果、アップルミュージックやタイダルのような大手ストリーミングサイトは、アーティストやレコード会社と手を組んで“独占配信”という形態【2】も誕生させました」

 世界ではこのような状況であるにも関わらず、いまだにCDの売り上げに依存している日本では、各社ストリーミングビジネスにおいても大きく遅れをとっている。D氏が続ける。

「日本ではレコード会社がストリーミング解禁を提案しても、原盤権や契約内容によって所属事務所が拒否するケースが多く、レコード会社はもちろん、ファンやリスナーもやきもきする状況が続いています。そこに早く大きな風穴を開けなければ、“もっとも音楽が売れる国・日本”という神話は崩れ去ってしまうでしょう」

 レコード会社とアーティストの所属事務所、そしてアーティスト自身がうまく連携が取れていない状態で、世界と戦うのは到底無理な話。さらには前述したように、薬物で逮捕されたアーティストに対して、まるで臭いものに蓋をするかのような対応を続けているのであれば、アーティストと信頼関係を結ぶのも困難だ。前出のB氏が述べる。

「海外のソニーは“アーティストの立場”を非常に尊重していますが、日本のソニーは、いまだに利益至上主義という古臭い考えが横行している。ピエール瀧さんやRIZEの件もそうですが、出荷/配信停止という措置に対しては、坂本龍一氏をはじめとするアーティストたちから『作品に罪はない』という指摘がありました。しかし、ソニーは残されたメンバーへの配慮もなく、とにかく世間に対しての正義のパフォーマンスを行うのみ。CDが売れるという幻想を抱き続けるのも大事ですが、海外のソニーのような大英断が求められる時代だと思います」

 アーティストとの関係においても今後も世界基準から乖離し続けるようであれば、SMRはおろか、日本の音楽業界全体の未来は、ますます暗くなってしまう。世界と対等に戦うためには、「音楽でビジネスをする」という概念を見つめ直す時が来ているのだ。

(代間 尽)

【1】YouTubeチャンネル開設
ユニバーサルをはじめ、ワーナー、エイベックス、ビクターなど、大手レコード会社は、You
Tubeなどの動画サイトにおいて、アーティストのミュージックビデオを高解像度、かつフルで配信している。しかし、いまだにソニーは「フルでアップすると売り上げにつながらない」という意固地な姿勢を貫き、1分半程度のショートバージョンでの公開を貫いている。(※もちろん、中にはフルで公開しているアーティストも存在する)

【2】“独占配信”という形態
これまでにビヨンセやドレイクなど、アメリカを代表するアーティストが、告知もなく最新作を「ストリーミングサイト上で独占配信」した実績がある。サプライズでのリリース(配信)が功を奏し、1日での再生回数が数千万回を記録するなど、ストリーミングビジネスの可能性を知らしめる結果となった。日本でもアップルミュージックが、去る6月中旬に安室奈美恵の全楽曲を独占配信し、1週間で「日本人アーティスト史上最多の再生回数を記録」したのは記憶に新しい。

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