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連載
「ファンキー・ホモ・サピエンス」【50】

【モブ・ディープ】難病のラッパーを悼んで。黄金期を支えた巨星墜つ

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『The Infamous Mobb Deep』

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モブ・ディープ(販売元:Infamous Records)

14年に出たモブ・ディープ最後のアルバム。『Mobb Deep』と題された新作がディスク1、95年の大傑作『The Infamous』のアウトテイクがディスク2という構成の2枚組。01年の『Infamy』以降、時折時流に合わせ気味であった作風が、かつてのトレードマークだったダーク&ハードなサウンドに戻った感あり。


 鎌形赤血球症を「病気」と呼ぶべきか「状態」と呼ぶべきか悩む。だが、牛乳で腹を壊す「乳糖不耐症」を病気と称するなら、鎌形赤血球症だって病気なのだろう。前者と後者を比較すると、後者のほうがかなり一般的(潜在的には世界人口の過半数)で、前者のほうが発症系統が限られているという違いはあるが。その限られた発症系統とは、インド系、アラビア半島系、東地中海沿岸系、そしてなんといってもアフリカ系である。

 鎌形赤血球症を持つのは、アメリカではおよそ5000人にひとり。だが、黒人に限れば500人にひとりであり、「アフリカ系特有の病気」と認知されている。

 いつだったか、TLCが来日公演をキャンセルしたのも、鎌形赤血球症ゆえと説明されていたような気がする。「(メンバーの)T・ボズの鎌形赤血球症が発病した場合、日本では満足な治療を受けられない可能性がある」とか。それは、鎌形赤血球症が主にアフリカ系の皆さんの疾患であり、そのアフリカ系人口が圧倒的に少ないこの列島では、それに対応できる医師もいない、ということなのだろう。

 そしてもちろん、鎌形赤血球症と共に生きるということは、乳糖不耐症よりも、ずっと過酷な試練に違いない。他人には想像もつかないような。「You Can Never Feel My Pain」という曲名に表現されているように。

 その曲の主は、去る6月20日、鎌形赤血球貧血に起因する合併症で亡くなったアルバート・ジョンソン。ヒップホップ・グループ〈モブ・ディープ〉のプロディジーとして知られるラッパーだ。その享年は42歳だった。

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