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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第102回

『ズートピア』――ディズニー・アニメに隠されたアメリカの多民族社会

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『ズートピア』

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あらゆる動物たちが共存する理想郷「ズートピア」。ここでは動物ごとに仕事が割り当てられているが、ウサギの主人公ジュディは警察官になることが夢だった。その夢を叶えた矢先、ある行方不明事件を追うことに。その背後にはズートピアの存続がかかる陰謀が隠されていた。

監督/バイロン・ハワード、リッチ・ムーア、製作総指揮/ジョン・ラセター。公開中。


 ディズニーの新作アニメ『ズートピア』は、人間以外のあらゆる動物が集まってくる大都市ズートピアが舞台。でも、これはおとぎ話じゃない。移民国家アメリカの現状をリアルに反映した映画なのだ。

 ディズニーは昔からそうだった。1955年の『わんわん物語』はレディという血統書つきのコッカースパニエルとトランプという野良犬のラブ・ストーリーだが、レディはWASP(ホワイト・アングロ・サクソン・プロテスタント)の象徴で、トランプは20世紀初頭に移民してきた南欧や東欧移民だ。トランプの仲間の野良犬も、ボリス(ロシア系)やペドロ(ラテン系)。移民の町、ブルックリンで、レディとトランプはイタリア料理を食べるが、レディはスパゲティの食べ方を知らない。当時、イタリア料理はまだ一般化していなかった。

 さて、ズートピアには、ジャングルなら弱肉強食の関係にある肉食動物と草食動物が仲良く平和に暮らしている。それはアメリカのようだ。中国とチベット、ロシアとウクライナ、イスラエルとアラブ諸国など、母国では対立し、殺し合っているような人々でも、アメリカでは隣人として、同胞として暮らしている。だが、多民族社会にはそれなりの礼儀が必要だ。

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