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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第91回

『トゥモローランド』――希望か絶望か? ディズニーが描く夢の世界の真実

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『トゥモローランド』

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宇宙飛行士を夢見る17歳のケイシーは、不思議なピンバッジを見つけた。そのピンバッジを握ると、未知の世界・トゥモローランドに足を踏み入れるが、ほどなく元の世界に戻ってしまう。そんな彼女の前に、アテナという少女が現れた。「再びここに来たければ、フランクを訪ねろ」こうしてケイシーの冒険が始まった……。

監督:ブラッド・バード/主演:ジョージ・クルーニーほか/日本公開中。


 1962年生まれの筆者が幼い頃、未来はバラ色だった。『鉄腕アトム』や『宇宙家族ジェットソン』や真鍋博のイラスト、映画『2001年宇宙の旅』に描かれた21世紀は、月に旅客ロケットが飛び、都市ではつるつるピカピカの高層ビルの間をエアカーが飛び交い、夢のエネルギー、原子力がすべてを支えている。貧困も飢えも科学技術が解決したユートピアだった。

 それを実際に形にしたのが64年のニューヨーク万国博覧会。それは科学技術による未来世界の品評会だった。ディズニーランドの「イッツ・ア・スモールワールド」も元々はこの万博の展示だったのだ。

 ディズニーは科学の未来を信じていた。ディズニーランドにはトゥモローランドがあった。未来をテーマにしたセクションで、60年代にはスペース・エイジを象徴する流線形のロケットがそびえ立っていた。

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